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各国情報提供

わたしの活動エリア「オーストリア」へようこそ!

海外社会貢献者からのメッセージ

まさに新旧混在するウィーンの街並み
世界一古い現役観覧車よりはるか遠くにウィーン国際センターを望む

Q. 世界を活動の場とする社会貢献者にとって、この国はどのような場所ですか?

現在のオーストリアはヨーロッパの中心というイメージはありませんが、中世から20世紀初頭まではハプスブルク家が治める大きな帝国の中心であり、まさに全ヨーロッパの中心でした。

首都はウィーンで、その中心の1区は現在「区全体」が世界遺産に指定されており、王宮や老舗のカフェが昔と変わらず存在し、街中を馬車が普通に走っているという、まさに中世の面影を残した貴重な街並みです。

しかし少し郊外に出ると現代的でデザイン性に優れる集合住宅やビルも立つ新旧融合した都市だと感じます。

公共交通機関も非常に発達しており、時間も日本ほどではないにしろほぼ正確に運行されており、街中も綺麗で、治安も近隣諸国に比べて良いため、これまで世界的に住みやすい都市上位にランキングされてきました。

モーツァルトやベートーベンなど音楽の巨匠が活動した音楽の都でもあり、現在でも街中にたくさんの音楽家の像が立ち、そこは人気の観光スポットとなっています。日本からも毎年多くの留学生が音楽を学びに訪れています。

国際的な位置づけとしては永世中立国であり、ウィーンはニューヨーク、ジュネーヴに続く第3の国連都市でもあり、IAEA(国際原子力機関)の本部もあります。そのため諸外国から旅行客のみならず、政治、経済、医学、その他様々な業界の方々が年中来られる国際的な都市でもあります。

さらに、30に及ぶ日墺間の姉妹都市、18の各種日墺協会、大学をはじめとする教育機関同士および美術館同士のパートナーシップがあり、両国間の文化・学術交流への意識は昔から高く保たれています。

オンライン化が進み若者でも自分の意見を発信しやすくなっている今、両国がこれまで培ってきた文化、伝統、経済面や技術面の知識を積極的にシェアし,さらに交流を深めていくことが期待されています。

上記の分野で日本人がボランティアとして活躍できる場があります。なお、日本とオーストリアの間には二国間条約があり、半年までは査証免除つまりパスポートのみで合法的に滞在できるので、日本人は現地で社会貢献活動がしやすいと言えます。 

文化

王宮の片隅にひっそりとたたずむモーツァルト像
いつも観光客が絶えない人気の写真スポットです

Q. 現地の人々の気質や考え方にはどんな傾向がありますか?

音楽とカフェとワイン、日本人がウィーンと聞くと抱く良いイメージはそのまま合っていると思います。

しかし、歴史を通じて世界大戦またナチスの影響をもろに受けてきた一面もあり、街中に少し影を落としています。ウィーンの軍事史博物館で当時の鮮明な記録を見ることもできます。

人々の気質は日本人とは真逆だと感じます。せっかちな人が少なく、マイペースです。自分の趣味に使う時間、自分の家族と過ごす時間、休暇などに多くの時間が充てられており、人生を楽しんでおられる点は、日本人も見習った方がよいかもしれません。 

Q. 現地の食文化はどのようなものですか?

ウィーンといったらカフェ文化!

歴史的にはトルコから入ってきたとされるコーヒー豆ですが、現在のようにカフェとして楽しむ文化を作り出したのはウィーンが初めてという話です。

そのため、日本でいうコンビニの感覚で(いやそれ以上に?)カフェがそこら中にたくさんあります。そしてどのお店もけっこう毎日満席なのです。コーヒーの味を追求というよりは、友とコーヒーを飲んで語り合うことそのものが楽しい、そういった感じです。

食事に関しては、朝夕は火を使わず簡単な食事で済ませ、昼がメインでしっかりとるといった感じです。代表的な料理はシュニッツェル(子牛のカツレツ)です。たいていどこのレストランでも頼むことができます。

またワインの生産もとても精力的で、ウィーン中心地からそう遠くないところにワイン畑が広がっています。オーストリアの各州でそれぞれの個性を持つワインが大量に生産されています。

それでも日本でオーストリアワインを手に入れるのは至難。あまり世界に輸出していないのです。つまり生産したほとんどが毎年国内で消費されているということになります・・・。

レストランとはまた違ったワイン居酒屋(ホイリゲ)が多数存在し、ワイングラスではなく小さなジョッキ型のグラスで飲むのがユニークです。

また秋限定ですが、ブドウ果汁からワインに変わっていく製造過程の途中の飲み物「シュトゥルム」が出てくるのも毎年皆のお楽しみ。 

ウィーンといったらザッハートルテ!
ただ「オリジナル」が名乗れるのはこちらホテルザッハーのカフェのみ

Q. 現地の人々はどのような生活習慣や宗教観を持っていますか? 現地特有のマナーなどはありますか?

上にも書いた通り、ゆったりと人生を楽しむ国民性なので、日本人から見ると、時として不真面目、急ぎの仕事ができない、時間にルーズ、協調性が・・・、などイライラすることがあるかもしれません。しかし、それはただ日本と比べて気質や文化が違うだけであって、人間性としての問題ではないと思います。

宗教面では、住民登録をする際に自分の宗教を記入する欄があり、すぐに日本との違いを感じます。統計では昔は8割がカトリックとのことでしたが、現在は減少傾向にあるようです。

しかしながら、街中を見ると本当に至る所に教会があります。ヨーロッパの街並みはどこにでも教会があるとは思いますが、ウィーンは特に多いように感じます。

実際にどれほどの人が真剣に宗教活動をしているかは定かではありませんが、子供のころから親に神について教えられているのか、良いことをすれば神が見ているという感覚が皆にあるように思います。

外見はタトゥーの入った奇抜なイメージの若者であってもすぐに他人に席を譲ったり、公共交通機関でハンデを抱えた人の乗り降りをすぐに手伝ったり、物乞いの人にお金をあげたりしている光景を毎日のように目にします。 

気候

ウィーンは他のヨーロッパの都市と比べて晴天率が高い
こちらは美しいバロック様式のベルヴェデーレ宮殿

Q. 現地はどのような気候ですか? 健康維持のために気を付けるべきことはありますか?

緯度は日本の北海道と同じような位置にあり、20年以上前は冬にドナウ川がすべて凍りつくようなマイナス20度もざらだったようですが、最近では地球温暖化の影響か、冬でも極端に寒い気温、例えばマイナス10度を下回るような日は数えるほどになりました。

そして夏はというと、日本と同じくどんどん暑くなってきました。それで各家庭にはまずクーラーなどの冷房はないのですが、今後は常識が変わってくるかもしれません。

冬は日照時間が日本より少なめなので、春から夏にかけてみなさん肌を出して、真っ黒になるまで日焼けをします。なんでも太陽を浴びてビタミンDを取ることが健康に欠かせない!とのことで、ある意味合っているのですが(笑)、皮膚がんの危険も同時に考慮しなくてよいのか心配になります。現地の人に言わせれば日本人観光客のように夏でも長袖、手袋、日傘でとことん日焼け対策をするのが理解できないとか。 

Q. 現地特有の風土病はありますか? 健康維持のために役立つ対処方法はありますか?

特にありません。短期滞在においては受けるべき予防接種などもありません。

しかし長期滞在あるいは永住するのであれば、Zecke(ツェッケ)というマダニに刺されたときの予防のために予防接種を受けた方がよいでしょう。ハイキングなどで森林に入ったり、芝生でごろごろと寝転がったりするとこのマダニに刺される危険があり、ともすると日本脳炎のようなウイルス性脳炎の危険があるそうです。 

ウィーンの方言とドイツ語の違いの「ほんの一例」
一つでも覚えるとすぐ仲良くなれるので早く友達ができるかも?

言語

Q. 現地の人々はどのような言語を用いていますか? 外国人にとって、現地の言語を学ぶ際に、どんなハードルがありますか?

公用語はドイツ語ですが、日本人が考えるドイツ語はハンブルクやキールなどドイツの北部で話されているようなドイツ語であり、南ドイツ→オーストリアとなってくると方言がキツくなってきます。

しかし、オーストリア人に言わせれば、こちらのドイツ語の方が元祖。ハプスブルク家が話していた“本物の”ドイツ語なので特に劣等感など抱いていません。

ただ、この世界で一般的に認知されているドイツ語とウィーンのドイツ語 “Wienerisch”(ヴィーナリッシュ)の違いはあまりにも多いので、いつも方言の話になると盛り上がり、爆笑のネタになります。

例を挙げると「こんにちは!」はドイツ語でGuten Tag!(グーテンターク)と習うと思いますが、ウィーンでは誰一人そう言っていません。Servus!(セアヴス)ないしGrüß Gott(グリュースゴット)を使います。

これはオーストリアに来て“正しい”ドイツ語を学ぼうとする人にとって確かに高いハードルとなります。ですがウィーンで生活する以上 Wienerisch だけ話せればよいのかもしれませんが。 

生活

市庁舎前の広場で突然ラデツキー行進曲を演奏するブラスバンドの方々

Q. 現地の人々の生活水準はどうですか?

ゆったりのんびり自分らしく生活できればそれで良く、がむしゃらに働いてもっと安定した生活をとか、もっと高級な生活水準へとガツガツしている人は少ないと思います。

各家庭で収入差はあるでしょうが、その範囲で楽しく家を飾り付けたり、趣味に熱中したり、しっかりとバカンスに行ったりと、人間らしく生活しています。

若者のデートも公園で日向ぼっこをしたり、フリスビーをしたり、読書をしたり、健全で健康的な時間の使い方をしているように思います。 

Q. 現地の人々の教育水準はどうですか?

日本と同じく義務教育は9年間ですが、幼稚園1年、小学校4年、中学校4年といった比率です。

なお、中学校が2タイプあり、進学を目指すレベルの高い学校か一般の学校かを決めるため、10歳前後で将来に関係する大きな決定をしなければなりません。

その後は、高等部さらには大学を目指すか、専門技術や情報処理を中心に学んで就職につなげていくか、音楽やスポーツなどの分野に磨きをかけていくかに分かれていきます。

男子の場合18歳で徴兵制があるため、軍隊に行くか医療など他の社会福祉活動につくかを選ぶことになります。

筆者の主観ですが、幼稚園(KinderGarten)時から皆様伸び伸びと育てられている印象で、日本のようにまず先生の言うことを聞いて基本をマスターし、それから応用へ、といった教育スタイルではなく、個人の感性や性格を大事に、基本的に自由に学んだり何かを選択したりしていけるように教育しているように見受けられます。それで日本人より連帯性が少し劣るものの各個人の個性が光るような人間の教育ができているのでは、と感じます。 

ウィーンの中心グラーベンの大通りにて
優雅に路上演奏しているのがいかにもウィーンっぽい

Q. 現地の治安水準はどうですか? 外国人が特に気を付けるべきことはありますか?

ヨーロッパの他の国と比べても良い方だと思います。

もちろんスリの多さは日本以上ですから、鞄のチャックを閉めるなどは必要ですが、街中で一本路地を入ると怖いとか、夕方以降女性の一人歩きはダメということはありません。

たまに街中でデモ行進が計画されていることがあり、その時は事前に大使館から情報が送られてきます。そのような人々の感情が高まっている時にあえてその中心に繰り出していくようなことをしなければ、危険を回避できると思います。 

Q. 現地の住居や住環境の様子どうですか?

400年前から変わらない街並みは、世界遺産のウィーン1区に見られます。

オーストリア人の比較的高齢の方々は昔から変わらないものや古いものを好み、築100年の住居を直し直し使っていきます。

しかし、最近の若い夫婦の好みが変化していることや他国からの移民が増えたこともあり、日本でも見ないようなデザイン性の高い集合住宅が建ってきています。まさに両極端のスタイルが共存しているイメージです。

古い建物も、さらにより古い AlteBau(アルテバウ)とその中でも新しい NeuBau(ノイバウ)に分けられます。AlteBau は戦前から変わらない姿で、部屋の天井はジャンプしても届かないほど高いです。

引っ越しで部屋を借りる場合、「家具付き物件」を選ばないと本当にただの空間と仕切りしかない物件もあります。

つまり、家具を購入するとかという次元ではなく、トイレを据え付け、キッチンを据え付け、浴室を一から作り、壁から剥き出しだった配管に水道管をつなぎ、壁をペンキで塗らなければなりません。なぜ IKEA にあのような形で部屋そのものが販売されているのか初めて理解できます(笑)。

ただ、日本人が新しく借りようと思う場合、たいていは知り合いを通じての契約になると思うので、そこまでハズれ物件には「出会えない」と思います。 

一見新しく見えるカラフルな方が実は天井の高い旧式の建物
右側の比較的新しい住居とは天井の高さが違う

Q. 現地の生活インフラ(水道・電気・ガス・インターネット)はどの程度整っていますか?

「ウィーンの水は世界一!」。みな口々に自慢するほどウィーンの水は美味しいです。アルプスから山の湧き水が町まで流れてきており、自宅の蛇口から手軽に飲むことができるのがウィーンの素晴らしいところです。

夏になると町のいたるところに無料の移動式給水場が設置され、旅行者でもだれでもこの美味しい水を飲んだりペットボトルに汲んだりできます。

暖房については、セントラルヒーティングが多くの住居に備わっており、ウィーン9区のごみ処理施設から発する熱エネルギーが地下を通って街中に供給されるため、効率よく冬の暖房を提供してくれます。

それで、トータルの水道光熱費は、もちろん個人差はあると思いますが、私の場合2人暮らしで1か月50ユーロ前後でしたので、提供されるサービスから考えても日本より割安なイメージがあります。

インターネットも日本より使い勝手が良いと感じます。通話可能なプリペイドSIMがスーパーで簡単に手に入り、1000分の通話、10GBのパケットで9.9ユーロとかで使用できます。

年々使用できるデータ量は拡大していっていますので、より割安になってきていると感じます。また特筆すべきなのが、毎月のSIMの契約が簡単にON/OFFできる点です。

例えば、日本に2カ月帰る間はOFFにしておき、ウィーンに戻ってきたら空港でONにしてまたすぐ使い始めるといった感じで、その間は料金が1ユーロも発生していないということです。

それで、わたしのようにオーストリアをある程度の期間抜けたりする人間にとっては、とてもありがたいシステムといえます。またこのSIMのデータおよび通話はEU圏内共通なので、例えばイタリアに旅行に行っても現地で同じく使えるという点も素晴らしいです。 

Q. 現地のレストランやファーストフード店、露店など食品を扱う店の衛生状態はどうですか?

衛生状態に関してもおおむね問題ないと思います。

筆者もオーストリアの100以上のレストランを訪れましたが、どれも日本と比べて衛生面でほとんど遜色ありませんでした。

街中にあるケバブやホットドックのスタンドも、また駅中にあるピザ屋さんもよく利用しますが、オーストリア人経営ではない(トルコ人とか)ところも多くあるものの、普通に安心して食べられますし、味も量もGoodです! 

日向ぼっこをしたり読書をしたり健康的に余暇を過ごすウィーンの人たち

Q. 生活に必要な安全な飲用水はどのように調達しますか?

前述のようにウィーンに関しては、蛇口をひねればアルプスの天然水! 浄水器いらずで好きなだけ飲めます。

ただ日本と違って硬水なので、飲み口はもちろん違いますし、日本で買ってきたシャンプーの泡立ちが悪かったり、人によっては体質的に合わなかったりという方もおられるかもしれません。ただこれはヨーロッパ全体で共通していることかと思います。 

Q. 現地の交通事情や交通機関の様子はどうですか?

電車、バス、路面電車、地下鉄すべて Wiener Linien という会社が経営しており、一日券を買えば全4種乗り放題です。3回乗れば元が取れるので、その都度買うより滞在期間一括買いをお勧めします。

ちなみに1年定期だと365ユーロなので、一日1ユーロで4種乗り放題という計算になります。安すぎです!

また、市内はかなり細かく路線が張り巡らされており、100M先のスーパーに行くのにも路面電車一駅乗っていくかというレベルです。

そして、時刻表だけでなく、あと何分で次の電車あるいはバスが到着するかが各停留所に表示されるので、非常に使いやすいです。

最近ではスマホのアプリで最寄りの停留所、路線、到着時間が一目でわかるようになり、使い勝手は上がる一方です。 

Q. 現地の医療水準はどうですか? 医療費は高額ですか?

どの医療機関も安心して利用できると思います。

もちろん、保険なしで受診すると非常に高額なので、国民および長期滞在者は国民健康保険に加入する必要があります。旅行者は旅行保険(クレジットカード保険も可)に入っておくべきだと思います。

参考までにですが、筆者はオーストリア滞在中に前歯の3分の1が欠けてしまい、クレジットカード保険の緊急歯科治療を使って市内の歯医者さんでくっつけてもらいました。若い女性のお医者さんでしたが、腕前は確かでバッチリきれいにくっつけてくれました! 医療費はいったん保険なしの料金を自分で立て替えましたが、200ユーロほどでした。 

路面電車の車窓から♪
街中を自在に抜けていき渋滞の心配もないため大変便利

執筆者:H.N
執筆年月:2021年7月

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