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RHF奨学金制度(2017∼2022年度実施)

当財団は、2017年の設立以来「RHF奨学金制度」を通して、世界各地で社会・文化貢献活動に携わる方々への支援に取り組んでまいりました。この奨学金制度による支援は、当財団で新たに開始した「中長期渡航滞在支援制度」内に組み込まれることにより、2023年8月をもって終了いたしました。

当財団の取り組みの記録として、以下に「RHF奨学生の声」をご紹介いたします。

奨学金受給期間:2018年7月3日~2019年8月22日
就学学校名:台灣國立師範大学国語教学センター

■RHF奨学金制度に申し込んだ経緯
私は、日本で聴覚障がい者に手話を用いてボランティアをしていました。日本ではある程度聴覚障がい者への理解も進んでいてさまざまなサポートや仕事の機会がありますが、ふと海外に目を向けた時に聴覚障がい者への理解もサポートも十分とは言えず、確立された手話すらない場所もあることを知りました。それで、微力でも何か力になれたらと思い、台湾で手話を用いて聴覚障がい者へのボランティアをしてみたいと思うようになりました。そして、2016年春に台湾に来ることに決めました。一言で手話と言っても、日本手話と台湾手話は違います(日本占領時代に手話を持ち込んで教育したという経緯があり、台湾手話は日本手話と半分くらい同じです)。最初の数年は台湾手話を学ぶことに必死で、あっという間に時間が過ぎました。ある程度手話に困らないようになってきたとき、台湾手話は中国語が多く使われていること、聴覚障がい者の健聴の家族への聞き取りや通訳の必要性を考えるようになりました。中国語ができたらもっとやれることが増えると感じて、中国語をしっかりと学びたいと思うようになりました。

それまでは独学でNHKラジオを聞くなどして中国語の勉強はしてはいました。日々手話を使う機会の方が圧倒的に多くて思うほど中国語力が伸びないこともあり、何か方法がないか探していました。そんなとき、同じ台湾でボランティアをしている仲間から奨学金制度のことを聞き、申し込んでみることにしました。

■奨学生だった当時を振り返って
毎日勉強に追われとても忙しく、学生時代でもここまで勉強したことはなかったと思うほど、毎日勉強をする1年間だったと感じています。授業に必死についていき、授業が終われば図書室で2時間近く宿題をし、それでも終わらない日もあって家でも机に向かうといった日々でした。ただ、自分でラジオを聞いて学んでいたときと比べると、分からないときはすぐに先生に質問できたり共に学ぶ仲間がいたりする環境は素晴らしく、自分でも語学力がぐんぐん伸びていることを感じることができました。

奨学金を頂いている身としては、奨学金受給の条件である毎月90点以上の成績を取ることは正直なところプレッシャーに感じました。なぜなら、90点以上の成績を取れるのはクラスでも2〜3人で、毎日の聞き取りテストや毎週あるテスト、学期末試験に加えて授業態度や宿題提出、出席日数などすべてが関係しているからです。それでも、その負荷があったからこそ身についた部分もあるので、今は感謝しています。

■現在の状況と活動
あっという間に時間は過ぎ、1年間の勉強を終えることができました。おかげさまで、教科書の3冊目まで学ぶ機会を頂くことができました。もちろんまだまだ分からないことはありますが、簡単な日常会話には困らない程度になりました。手話による活動にも良い影響があります。中国語が分かるようになって中国語に特化した手話も理解できるようになりました。難聴者と言われる手話があまりできないけれど手話を学ぶ必要のあるグループの人と、中国語と手話で話しながらコミュニケーション取ることもできるようになってきました。できることの幅が増えたことを一番嬉しく思います。

■これからの抱負
1年間学校に行けば中国語はペラペラになるのかなと淡い期待を抱いていましたが、私の場合ペラペラにはなりませんでした。まだまだおぼつかない中国語です。それでもこれまでとは違い、学校で基礎を学んだので分からない時は教科書を見て復習すれば大丈夫だという安心感があります。そして一歩ずつ前進しているのを感じています。言語の勉強に終わりはありません。引き続き毎日勉強して、最初に来たときに思っていた台湾の聴覚障がい者の助けになりたいという目標に向かって日々努力を続けていきたいと思います。

■RHF奨学金制度の申請を考えている方へ
語学の勉強には時間が必要です。その時間を学校に通って奨学金制度を利用できる成績が取れるよう勉強に励むことによって活用するなら、とても有意義な時間が過ごせると思います。とても忙しいでしょうし疲れることもあるとは思いますが、かけがえのない時間を楽しんでください!また、様々な国から来たいろいろな年齢層の人と知り合えるのも、学校に行くメリットだと思います。応援しております!

奨学金受給期間:2018年12月1日~2019年5月31日
就学学校名:レッジョ・リングア語学学校

■RHF奨学金制度に申し込んだ経緯
私がイタリアで社会貢献活動を行うために必要なメイン言語は中国語です。しかし、イタリアでは英語が通じる場面が少ないため、現地滞在のためのビザ・健康保険・身分証等の申請手続きの際、また日常生活や社会貢献活動従事の際にもイタリア語の使用がある程度求められます。さらに、仕事をするためにもイタリア語が不可欠です。そこで現地の語学学校での就学を考えました。ただ、学費は決して安いものではなく、社会貢献活動に従事しつつ慣れない海外で生活を維持し、学費も捻出するというのはかなりの負担感がありました。そんな中RHF奨学金制度について知り、応募いたしました。

■奨学生だった当時を振り返って
イタリア語はとても複雑な言語で、独学には限界があります。現地の語学学校でネイティブスピーカーのイタリア語講師による授業を受けることができ、より実用的な角度から文法についての理解を深めることができました。また、聞き取りや会話の基礎習得の面でも独学では限界があり、語学学校でのグループレッスンは大きく役立ちました。通学と宿題などの自宅学習、社会貢献活動を両立するのは、時間と体力の面で厳しく感じることもありました。しかし、独学であっても結局は時間と体力を取られることを考えると、学校で受講することのメリットのほうが大きかったです。

■現在の状況と活動
現在、社会貢献活動に毎月70時間以上従事しています。すでに百人以上のイタリア在住の中国系の方々と接触し、現状把握と信頼関係の構築を目指して活動しています。そうした方々の中には、もともと居住用に作られているわけではない縫製工場に一家で住んで生活している方もおられます。そういったご家庭では両親は一日中作業に追われ、子供たちは通学以外には家(工場)に引きこもっているといった状況が多く見られます。そのため、社会生活を送る上での言語面・文化面での壁が大きく、交友範囲も非常に限られており、制限の多い生活を送っています。RHF奨学金でイタリア語の基礎を学んだことにより、現地イタリアの方々とも協力しつつ、そうした子どもたちが交友関係を広げ、海外移住者特有の生活上のストレスに対処するのを手助けすることができています。

■これからの抱負
イタリア在住の中国系の方々の生活状況、そして抱えておられる問題はさまざまです。例えば、子供たちがイタリアで生まれ育ってイタリア語の学校に通っている場合、両親と中国語で深いコミュニケーションが取れないという問題があります。また、両親だけ先にイタリアに出稼ぎに来て、何年かして生活が安定した後に子供たちを呼び寄せるというケースもあります。その場合、子供たちは学校では言語面の問題に直面し、地域になじむのも難しくなります。また、離れて暮らしていた時間が長かったので、家庭内で親とのコミュニケーションがうまくいかないという問題もあります。さらに、学校と保護者とのコミュニケーションにも支障がある場合が多く見られます。そうした方たちのバックアップのためにも、イタリア語のブラッシュアップに励んでいきたいと考えています。

■奨学金制度の申請を考えている方へ
社会貢献活動に従事している方には同感していただけるかもしれませんが、ほかの人のために何かをするというのはある程度気持ちや体力に余裕がないと難しいことです。海外での生活を新たに始め、かつ社会貢献活動に従事するというのは、費用面だけでなく、精神面・体力面でも予想している以上に大変な面があるかもしれません。そうした中で奨学金制度を利用させていただけるなら、少なくとも費用の面での心配を低減することができます。ただ、この奨学金をこれから申請、受給される皆さんには、学業にいそしみつつ感情面も含め健康にも気を付け、社会貢献活動という本来の目的を見失わないように生活の中でバランスを取ることに気をつけていただきたいと感じます。

奨学金受給期間:2018年3月15日~2019年8月30日
就学学校名:台南成功大学華語センター

■RHF奨学金制度に申し込んだ経緯
海外でのボランティア活動をする上で大切なことは、やはり現地の人を良く知り、文化を理解することだと感じておりました。その中でも特に言語の習得がその初めの一歩であると思い、自身で言語を学んでみましたが、個人での習得には限界がありました。その結果、系統立てて学習するうえで言語習得のための学校に通うことが不可欠であるという結論に至りました。しかし、費用面の壁があり、なかなか行動に移すことができませんでした。そのような時にRHFの活動を知り、RHFの活動目的と自身が取り組んでいる手話を通してろう者の皆さんの生活の向上を図るボランティア活動との間に多くの共通点を見出すことができました。それで、RHF奨学金制度に申し込みをさせていただきました。その助けを通して、一人でも多くの困窮する人たちの助けになれればと思いました。

■奨学生だった当時を振り返って
メインのボランティア活動を行いながら言語を習得するという「二足の草鞋を履く」生活は、想像していた以上に大変でした。時間の予定のみならず、体調面での問題もありました。また、言語スクールのルーティンが3か月ごとの区切りで、生活費の工面という問題にも直面しました。しかし、それらの大変さを上回る喜びや楽しさを経験できました。言語の深い理解を通して、ボランティア活動の面で幅が広がり、その結果より多くの満足感を得ることができました。奨学生だった時は必死でしたが、今思うとその生活は充実そのものでした。
ただ、経済面でのストレスをもう少し軽減できれば、より深く言語と文化の習得に打ち込めたのではないかと思います。

■現在の状況と活動
現在、奨学金による学習を終え、ボランティア活動中心の生活になっております。しかし、言語を習得する機会を通してさらにろう者の方々の細かなニュアンスを知ることができ、手助けとなる点での幅が増えたように思います。さらに、言語の習得に加え、自身が携わるボランティア活動内でも活動の幅が広がりました。手話の習得に留まらず、さらに手話を初心者の方々に教えるためのカリキュラムに参加することができ、現在実際にその活動にも携わっております。自身がボランティア対象となる方々のために学習することに加え、ボランティア人口そのものの向上にも貢献できるようになったのは、この奨学金制度の存在が大きな部分を占めていると感じております。

■これからの抱負
RHFを通して与えていただいた1年間に及ぶ言語学習の機会を通して、多くの方との出会い、自分の活動の幅を広げる機会を得られたことに本当に感謝しております。この貴重な機会を決して無駄にすることがないよう、自身でもボランティア対象となる方々の言語と文化の理解を一層深めていきたいと感じています。また、まだ多くのボランティア従事者を必要とする地域があるので、それらの地域に赴くことができればとも考えております。さらに、奨学金制度におけるRHFとの関係についても、これが最後と考えるのではなく、RHFのお役に立てることがあればと考えております。自身のボランティア活動の充実とRHFへの協力が、私に与えていただいた機会へのせめてものお返しだと考えております。

貴重な機会を与えてくださったRHFと財団に大いに寄与してくださった創設者の方々に、この場をお借りして感謝の言葉をお伝えしたいと思います。本当にありがとうございました。

■奨学金制度の申請を考えている方へ
この度RHFから奨学金制度による援助を初めていただいたので、試行錯誤の面が多くありました。また、本当に物事がスムーズに進むのかあまり実感がありませんでした。皆さんにお勧めできるとすれば、ぜひ積極的に申し込みのための一歩踏み出していただきたいということです。もちろん、すぐに物事が進みだすとは限りません。しかし、奨学金の申請は、自身にとっても将来のことをより具体的に考える良い機会となりました。今後のビジョンを明確にする上でも、ぜひお勧めいたします。そして、その機会を得られた際は、学生生活の間に得られるメリットを最大限に生かして、自身と活動の幅を広げていかれることをお勧めいたします。

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