海外社会貢献者からのメッセージ
Q. 世界を活動の場とする社会貢献者にとって、この国はどのような場所ですか?
カンボジアでは、海外で出稼ぎをして家族に仕送りをすることを夢見ている若者が多く、これまではそうした門戸が主に韓国で開かれておりました。しかし、2019年に日本の入管法が改正され、外国人労働者の雇用が促進された背景もあり、現在では日本に就労目的で渡航するカンボジア人の数も増加傾向にあるようです。
それに伴い、日本語を学習したいという若者の数が以前よりも増えており、技能実習生を訓練して日本に送り出す機関が、近年とりわけ首都プノンペンでは目立つようになってきました。現地の大学や日本語教室または実習生の訓練機関において、日本語教師や教官としてボランティアないし社会貢献が出来る機会は多くなっていると思われます。
また、日本は1992年のODA(政府開発援助)以来、カンボジアへの無償資金協力の面において最も多くの支援を提供してきた実績があるため、カンボジア国内における人々の日本人に対する印象や評判は基本的に非常によいというのも利点の一つに挙げられます。「日本メーカーの製品は高品質」というイメージが大変強く、街でもっとも見かける車はトヨタのカムリ、バイクであればホンダのドリーム、と日本への信頼は厚いです。
文化
Q. 現地の人々の気質や考え方にはどんな傾向がありますか?
明るく、人懐っこい人が多いです。バイクで信号待ちをしている時に、横に止まったバイクの人から気さくに話しかけられることもあったりします。一方で権威主義的な雰囲気も強く、富裕者や政治的に立場の高い人たちは、大きな車に乗って自分の立場をアピールする人が多いように見受けます。一般的な市民は、その日暮らしの考え方で生きている人が多いようで、計画性をもって金銭を管理するのは苦手という印象を覚えます。
Q. 現地の食文化はどのようなものですか?
純粋なカンボジア料理には、“プロホック”という日本でいう塩辛のようなものを調味料で使いますが、匂いが強力で、そのまま食べるのは外国人にとってはハードルが高いかと思います。ですが、エッセンスとしてひとたび炒め料理やスープに投入すると、独特な深みが出て大変美味しく召し上がれます。
また、ベトナムやタイの影響を受けた料理も一般的で、ナンプラー(魚醤)に唐辛子を入れた定番のソースをかけたりつけたりして食べます。
スターバックスのようなカフェや、タピオカミルクティー屋さんが若者には大人気です。
Q. 現地の人々はどのような生活習慣や宗教観を持っていますか? 現地特有のマナーなどはありますか?
イスラム教徒やキリスト教を信じている方も一部いますが、基本的には仏教が国民全体に最も浸透しており、お坊さんが托鉢のため毎日家の前に来るのは日常的なカンボジアの光景の一つです。とはいえ、他の宗教に対しては基本的に寛容な見方を持っている方がほとんどで、「どの宗教も一様に良いことを教えている」というのが一般的な見方です。
気候
Q. 現地はどのような気候ですか? 健康維持のために気を付けるべきことはありますか?
東南アジアの熱帯気候で、季節は大きく分けて乾季と雨季の二つになります。基本的には通年とても暑いですが、12月は若干ひんやりした気候になります。
暑さには強いと思っていた人でも、油断するとすぐに熱中症のような症状に見舞われてしまうこともあるため、適度な水分補給と休息を気にかけることは非常に大切です。
Q. 現地特有の風土病はありますか? 健康維持のために役立つ対処方法はありますか?
デング熱が近年非常に流行しており、海外から来た方が発症してしまうケースも多々あります。屋内外を問わず、蚊帳や虫よけスプレーといった蚊に刺されないような対策を十分にとる必要があります。
言語
Q. 現地の人々はどのような言語を用いていますか? 外国人にとって、現地の言語を学ぶ際に、どんなハードルがありますか?
カンボジアでは、クメール語が一般的に使われています。華僑の人も多く、家族とは中国語の方言で話される方も大勢いらっしゃいます。イスラム教徒の方は、同胞とはイスラム圏の方々の話す言語で会話されます。その他、一部の山岳部では少数民族の言語が会話に使用されています。
生活
Q. 現地の人々の生活水準はどうですか?
基本的に大半を占めるのは貧しい人です。プノンペンの都会で生活していると、それほど感じないこともありますが、労働者の月給は通常約200-300ドルで、厳しい環境下での労働を強いられています。レストランの駐車場などでの警備員の仕事ですと、月給150ドルというケースもあり、ダブルワークしないと生活できない方も大勢います。日用品は大抵タイやベトナムからの輸入品なので、国としてはそれらの隣国よりも貧しいにもかかわらず値段は逆に割高となってしまうため、市民の生活が厳しくなるのは必然的とも言えます。
Q. 現地の人々の教育水準はどうですか?
近年カンボジアではインターナショナルスクールが増えており、とりわけプノンペンなどの都市部では、小さい頃から子供に英語で教育を受けさせるのが一つのトレンドあるいはステータスとなっています。とはいえ、田舎ではそうはいかないため、地方の高校を卒業した若者は卒業後にプノンペンに上京し、幾人かの友達と共同でアパートを借りて大学に通いその後就職する、というのも一般的になりつつあります。
Q. 現地の治安水準はどうですか? 外国人が特に気を付けるべきことはありますか?
南米やアメリカのスラムの話をきくと、カンボジアはまだ比較的治安がいい方ではないかと思います。とはいえ、ひったくりやひき逃げ、詐欺、強盗事件などは度々ニュースとなっていますので、注意は常に必要です。トゥクトゥク(三輪タクシー)に乗っているときに携帯をいじっていたら、ひったくられてしまったケースが多々ありますので、日本の観光地にいる感覚で携帯を使うのは危険だと言えます。
人懐っこい国民性という印象を逆手にとって、初めて会った人に誘われてその人の家について行ったら、いかさま賭博の被害に遭った方もいらっしゃいますので、十分気を付ける必要があります。
Q. 現地の住居や住環境の様子どうですか?
カンボジアの方々が暮らしている一般的な貸家の家賃は、月々約20~60ドルほどですが、慣れていない外国人にとっては、かなり厳しい環境だと言わざるを得ません。外国人が住めるタイプのワンルームのアパートになると家賃は大幅に上がり、安くても最低月々100ドルはかかり、これがプノンペンの中心部のサービスアパートメントともなると、1,000ドル以上する部屋もざらにあります。ただ、値段が高いほどサービス内容も上がり、小さなマートが併設されていたり、ジム・サウナ・プールが備え付きだったりするコンドミニアムも都市部では増えてきています。警備体制もしっかりしていることが多く、外国人にとっては便利で少しでも安心に暮らせるという意味で選ばれています。
Q. 現地の生活インフラ(水道・電気・ガス・インターネット)はどの程度整っていますか?
プノンペンでは基本的に水に困ることはありませんが、電力供給の不足による停電は、とりわけ猛暑の時期に発生する厄介な問題の一つです。2019年は一時期、計画停電による半日停電が何週間も続いたことがあり、さすがに参りました。2020年はいまのところ大丈夫なので安堵しています。
プノンペン以外ですと、水不足の問題にも直面します。モーターで水を汲み上げている場所などでは、電気がないと水も供給されないため、まさに死活問題です。ガスはプロパンガスで、全国各地で購入できるため問題ないです。
インターネットは、携帯電話各社からデータ通信の格安プランが提供されているため、週に1-2ドルほどプリペイド式のクレジットを購入すれば、ほぼ使い放題といってもいいだけのデータ通信量に変換できるため、国内のほぼ全域で利用されています。
Q. 現地のレストランやファーストフード店、露店など食品を扱う店の衛生状態はどうですか?
衛生状態は、どうひいき目に見てもよくないです。一般的なローカルのレストランで食事をした後にお腹をこわしたというケースをよく耳にします。屋外のレストランであれば、例外なくどこもかしこもハエが飛び交っています。お皿の洗い方も大変雑です。ただ、コロナ禍で初めて一般的な家庭における手洗いの習慣が身に付いたため、若干改善された部分もありますが、規模としてはまだまだです。
日本のデパート(イオン)内のレストランであれば、衛生状態のチェックが入っている分、まだ少しは安心かもしれませんが、それでも未だに店内で巨大ネズミをみかけることがあるので、油断は禁物です。
Q. 生活に必要な安全な飲用水はどのように調達しますか?
20リットルのタンクの飲用水を家の近くで購入することができます。都市部の水道が整備されている家庭であれば、日本から持参した浄水器を設置して、それをさらにブリタでろ過して飲んでいる方もいらっしゃいます。
Q. 現地の交通事情や交通機関の様子はどうですか?
プノンペンはラッシュ時の渋滞がひどいですが、バンコクやジャカルタほどではないかもしれません。交通機関は、プノンペンでは市バスが市内を色々な方面に走っておりますが、それ以外の場所では長距離バスか長距離電車があるのみで、移動はバイクか自家用車あるいはバイクタクシー、トゥクトゥク、3輪タクシーを利用するのが一般的です。
Q. 現地の医療水準はどうですか? 医療費は高額ですか?
医療水準は、高くないと言えます。現地の方でも、重い病気や複雑な病気にかかった場合は、わざわざ隣国まで行って治療してもらうケースもよく耳にします。インターナショナルホスピタルも片手で数えるほどしかなく、新型コロナウイルスへの対応に限っては全く機能しませんでした。インターナショナルホスピタルの医療費は大変高額で、海外旅行保険に入っていない場合は少し値引きされるとはいえ、それでも手軽に利用できるレベルではありません。
執筆者:TM
執筆年月:2020年7月