海外社会貢献者からのメッセージ
Q. 世界を活動の場とする社会貢献者にとって、この国はどのような場所ですか?
ボランティア活動がとても盛んなオーストラリアでは、教育・医療・環境保護・地域コミュニティの補助など、様々な分野での取り組みがなされています。また、積極的に移民や難民を受け入れてきた背景もあるため、それに関連したボランティア活動も広く見られます。わたしが普段生活する中でも、ボランティア団体が活動する様子をよく目にしますし、チャリティーショップなども至る所にあります。ボランティアに携わっている人たちの様子を見ていると、日本よりももっと気軽に、積極的に、自然に、誰もが参加できるものであるという雰囲気を感じ取ることができます。
約200カ国の人々が共存するオーストラリアは、海外社会貢献者に必要とされる異文化理解力を身に付けることのできる場所です。単一民族国家で生活する日本人にとって、まさに貴重な環境といえるのではないでしょうか。
文化
Q. 現地の人々の気質や考え方にはどんな傾向がありますか?
思いやりがあって優しい人たちが多いです。困っている人を見かけたら、大抵はすぐ誰かが声をかけますし、フレンドリーでおしゃべり好きな人が多いです。わたしがこちらに来てびっくりしたことは、日本人の「すみません」のような感じで、意外と皆さん「Sorry!」を連発しています。車の運転の仕方について言えば、せっかちですぐクラクションを鳴らしたり、怒鳴ったりする場面もよく見かけますが、一回発散したらすぐ忘れて元に戻ります。ネチネチしていません。
日本には世間体というものが存在しますし、人の目を気にすることが多いと思いますが、ここではそういうことはみんなあまり気にしていないように思います。例えば、平日の昼間でも天気が良ければ芝生で日光浴を楽しみながら本を読んだりしている人たちもたくさんいますし、冬にサンダルを履いている人も見かけたりします。1ヶ月や2ヶ月休暇を取ってバケーションを楽しむことも当たり前ですし、仕事と日常をしっかり分けてプライベートや家族との時間を大切にしています。そして、楽観的で、あまり先のことを心配していません。問題が起こったら、その時解決しようというスタンスです。
愛国心が特別強いというわけではありませんし、他国に対する対抗心というものもあまりないように思います。自国で人気のスポーツを楽しんだり、国内で旅行を満喫したりして、オーストラリア人としての生活を楽しんでいる感じがします。とても可愛らしい国民性を持っています。
Q. 現地の食文化はどのようなものですか?
ミートパイ、フィッシュ&チップス、ベジマイト、ティムタムと言った有名な食べ物はありますが、「日本と言えば寿司!」というような料理は特にありません。他文化・多民族国家ということが食文化にも反映されているのでしょう。その代わり、日本ではなかなか食べられないような世界各国の料理をフードコートなどで気軽に食べることができます。
唯一挙げられるとしたら、みんなバービー(Barbie)が大好きです。これはバーベキューのことで、いつでもどこでもバーベキューができるよう、ビーチや街中にあるような小さな公園にもPublic Barbeques(公共バーベキュー設備)があり、ほとんど無料で利用できます。自宅にバーベキューグリルを持っている人もたくさんいます。
食の好み・健康志向・アレルギー・文化・宗教も関係してきますが、レストランやカフェでは必ずと言っていいほどベジタリアン・ラクトベジタリアン・ビーガン用などのメニューがあり、グルテンフリー・ラクトスリーなどの食べ物や飲み物も簡単に手に入れることができます。選択肢がとても多いです。また、オーガーニックやメイド・イン・オーストラリアなどを好む人の割合も多いです。
オーストラリアはコーヒー先進国とも呼ばれ、中でもメルボルンはカフェの文化が有名です。街中おしゃれなカフェで溢れています。Flat white(フラットホワイト)はミルクが多く、泡がほぼなしの、オーストラリア独自のメニューです。
Q. 現地の人々はどのような生活習慣や宗教観を持っていますか? 現地特有のマナーなどはありますか?
イギリス人が開拓を行ったオーストラリアでは、最も信者の多い宗教はキリスト教徒ですが、近年無宗教が増えてきています。多様な文化や人種と同様に、イスラム教・仏教・ヒンズー教・ユダヤ教なども信仰されており、信仰の自由が保障されています。街でも様々な教会や寺院などの礼拝堂を目にします。
オーストラリアはキャッシュレス社会で、スーパーやコンビニ、個人の商店でもキャッシュレスサービス用の端末で支払うことができます。EFTPOS(エフトポス)というデビットシステムで、コーヒーなど小額でもキャッシュレスで支払うことが多いです。例えば友達とレストランに行って割り勘をする時なども、キャッシュでやりとりするのではなく、銀行のアプリを使ってお互いの口座にそれぞれの払う金額を振り込む場合がほとんどです。
これは現金で払う場合ですが、オーストラリアの支払いは二捨三入です。一番少額のお金は5セントなのですが、価格の単位は1セントまであります。例えば、価格表示は$1.99でも、支払う額は$2.00となります。仮に$1.99の商品を3つ買った場合、$5.97となるのですが、その場合支払う額は$5.95です。
オーストラリアでは、公共の場での飲酒は禁止されています。警察に見つかると罰金が科せられますので、注意しましょう。
お店などで店員さんから「How are you?」などと尋ねられたら何かしら返事をするのがマナーです。日本では「いらっしゃいませ」に対して何か返事をすることはないかもしれませんが、こちらで何も返事をしないと良くない印象を与えてしまうと思います。
気候
Q. 現地はどのような気候ですか? 健康維持のために気を付けるべきことはありますか?
国土が広大なため、オーストラリアには土地によって気候は様々です。四季は存在しますが、南半球に位置するため季節は日本と真逆になります。
メルボルン(ビクトリア州)の気候は1日に四季があるとも言われており、短時間で大きく天気が変わることがあります。急に雨が降ったり、パッと晴れたり、強風が吹いたり…。別の州から旅行でメルボルンに来た友達と一緒に観光している時に急に天候が変わると、ジョークで「Welcome to Melbourne!」と言うことがあるくらいです。
実際わたしは今年の夏、お昼頃に45度くらいまで気温が上がったのに、わずか1時間程の間に強風が吹き、30度くらいまで気温が下がったという日も体験しました。朝は晴れて暑くても、夕方には雨や風で寒くなることもあるので、外出前に天気を時間ごとにチェックして、折り畳み傘やジャケットを持ち歩くと良いでしょう。とはいえ夏は湿気が少なく40度を超えることも年に数日ですし、冬は最低気温が一桁になることはとても少ないので、わたしは年間通してとても過ごしやすく感じます。
注意する点は紫外線です。皮膚がんの原因にもなるので、日焼け止めクリーム、サングラスなどでの紫外線対策が必要になります。
年にもよると思いますが、高温で乾燥した夏には、地域によっては山火事が多発します。すぐ近くで山火事が起きなかったとしても、風向きによっては煙が流れてくることもあるので、空気が悪くなります。また水不足のため、シャワーの時間が制限されたりする地域もあります。
Q. 現地特有の風土病はありますか? 健康維持のために役立つ対処方法はありますか?
特にありません。
言語
Q. 現地の人々はどのような言語を用いていますか? 外国人にとって、現地の言語を学ぶ際に、どんなハードルがありますか?
公用語は英語です。オーストラリア英語(通称 Aussie English)はアメリカ英語とは異なり、イギリス英語の綴りや単語が元にはなっていますが、独特の発音や単語、表現方法があります。日本の学校で学習するようなアメリカ英語とは異なる特徴があるので、慣れるまで少し苦労するかもしれませんが、Aussie Englishを話せば現地のオーストラリア人たちはとても喜んでくれます。
英語の他にも中国語、イタリア語、アラビア語、ギリシャ語などを話す人たちも多くいますが、一説によるとオーストラリアで話されている言語は約300種類になるとも言われています。
生活
Q. 現地の人々の生活水準はどうですか?
オーストラリアの生活水準は高いです。物価が高いというイメージを持っている人も多いと思います。日本よりも外食にかかる費用は高額ですし、事務手続きや何かの修理など、サービスを受けるのにかかる人件費がとても高いと感じます。2020年7月1日時点での最低賃金はフルタイム、パートタイムで$19.49、カジュアルで$24.36となっています(ここから税金などが差し引かれるので、手取りはこれより安くなります)。
失業者、社会的弱者、高齢者、病人などに対する福祉がとても高いレベルで行き届いています。COVID-19などで失業したり、仕事量が減ったりすることも多いですが、そのあたりの保証はしっかりとされているので、皆さんあまりその点は心配していないように感じました。もちろんそれはオーストラリア国民及び永住者などに限ることで、ワーキングホリデービザや学生ビザ所有者がそのような保障を受けられるわけではありません。しかし、そのような人たちも援助や補助を受けられるよう、様々なボランティア団体が活発に活動しています。
Q. 現地の人々の教育水準はどうですか?
教育水準も高いです。データの定義上留学生も含まれていますが、大学進学率は世界でもかなり上位です。
州によって多少異なりますが、5歳〜16歳(Prep〜Year9または10)までが義務教育、その後は後期中等教育(Year11、12)となります。オーストラリアは留学生がとても多いので、世界中から訪れる留学生のための教育期間も充実しています。
わたしがメルボルンに来て初めて知った意外な事実は、オーストラリアには日本語学習者が非常にたくさんいるということです。最近の資料によると、世界の国別日本語学習者数ランキングは、中国、インドネシア、韓国のアジア圏に続きなんと第4位です!人口の少ないオーストラリアでこの数字はみんなさん驚かれるのではないでしょうか。そして日本語学習者のほとんどは小学生から高校の生徒なのですが、それは選択科目の中に日本語があるからです。仕事で出会う人や街で会う人の中には、わたしが日本人だということに気づくと「日本語勉強しました」「日本語しゃべれます」と声をかけてくれる方も多いです。
Q. 現地の治安水準はどうですか? 外国人が特に気を付けるべきことはありますか?
全体的に見て比較的治安の良い国で、生活しやすいです。
とはいえ、日本のような感覚で生活するととても危険です。街中ではすりや置き引きの被害が多いです。詐欺の電話やメッセージもよくあります。わたしは危ない思いをすることは滅多にありませんが、十分注意が必要です。オーストラリアはでお店が閉まる時間が日本に比べて早いですし、シティーの中心部でなければあまり人通りがありません。実際、ここ数年のうちに近所の公園で殺人事件が数件ありましたし、シティーではテロも発生し、マフィア関連の事件もありました。車上荒らしの被害にあった知人も何人かいます。地域によっては特に治安の悪いエリアもありますので、現地の情報を前もって調査する必要があります。
薬物使用者が非常に多いので、それに伴う犯罪や交通事故が非常に多いです。日本とは違い、オーストラリアは基準を超えなければ飲酒後の運転もOKですが、それでも薬物で検挙されたドライバーの率が、飲酒運転検挙率を上回っており、ある年の調査によると交通死亡事故の過失運転者の約30%が薬物使用者だったことが分かっています。そのため、よく警察が道路の脇でドライバーの薬物検査をしており、わたしも何度か止められて検査を受けたことがあります。
Q. 現地の住居や住環境の様子どうですか?
地域によりますが、家賃相場は高めです。
オーストラリアでは基本的に給料が週払いなので、大抵は家賃も週ごとに支払います。特にシドニーやメルボルンの家賃相場は、他の都市と比べて高めです。例えば、シェアハウスの1人部屋に住む場合(キッチン、バスなどは共用)シドニー市内で週$350〜$450、メルボルン市内で$250〜$350くらいかと思われます。
もう少し郊外に住めば家賃は安くはなりますが、効率的かつ安全にボランティア活動を行うためには、車が必要になってくる場合が多いです。
物価や家賃が高いため、ワーキングホリデーや学生ビザで滞在している人たちは、シェアハウスやルームシェアをするのが一般的です
Q. 現地の生活インフラ(水道・電気・ガス・インターネット)はどの程度整っていますか?
インフラの普及率は良く、不便はありません。ガス、電気、水道は問題なく利用できます。特に工事などの計画的なものでなければ、停電や断水などが起こることは滅多にありません。Free Wi-Fiが使える場所もシティーにはたくさんあります。光熱費に関しては季節によってばらつきはありますが、ガス、電気、水道合わせておよそ一月$200〜250くらいと考えておいて良いかと思います。
携帯電話の電波の状態も問題ありません。携帯電話SIMですが、わたしはプリペイドSIMを使っています。ワーキングホリデービザ、学生ビザなどで滞在している人は大抵プリペイドSIMだと思います。大手キャリアであれば2.5GB〜5GBで$30ほど、格安プリペイドSIMであれば5GB〜16GBで$30ほどかと思われますが、様々なプランがあります。
Q. 現地のレストランやファーストフード店、露店など食品を扱う店の衛生状態はどうですか?
衛生状態は良いです。カフェ、レストラン、ファーストフード店など特に衛生面での問題はありませんし、トイレも清潔に保たれています。アジア圏に比べて露店は少ないですが、マーケットの衛生状態も良いです。
Q. 生活に必要な安全な飲用水はどのように調達しますか?
水道水を飲むことができます。日本と同じように浄水器を使ったり、飲料水は買ったりしていると言う人もいますが、そのまま飲んでいる人もたくさんいます。学校・公園・ショッピングセンターなどに給水器がありますが、それも普通に飲めます。
地域によって軟水か硬水かに分かれます。シドニー・メルボルン・パースは軟水なので、日本とあまり変わりません。オーストラリアは水不足になりやすく、水は貴重なので、水の使用量に制限がかかる地域もあります。すごく田舎の農場などでは、飲用水以外は雨水やため池からの水を使用しているところもあるようです。
カフェやレストランなどでは大抵無料でお水を提供してくれています。コンビニなどでペットボトルの水(600ml程)は$2〜$3くらいしますが、スーパーなどでまとめ買いすると1本$1以下で買えるものもあります。
Q. 現地の交通事情や交通機関の様子はどうですか?
滞在都市によって利用する交通手段が異なります。
私の住んでいるメルボルンでは、路面電車のトラムが発達していて、多く利用されています。料金は利用するカードの種類や乗る範囲によって異なってきますが、片道$4.5ほどです。シティーの中心部にはフリードラムゾーンもあり、無料で利用できるエリアもあります。他に電車やバスもあります。シドニーやブリスベンなどフェリーを利用する都市もあります。
都市部では自転車を利用している人も多いです。ヘルメットの着用が義務付けられており、車道を走らなければなりません。
とはいえ、日本の都市部のように公共交通機関が便利ではありませんし、夜遅い時間帯に公共交通機関を利用すると、安全面の問題もあります。ですから、私の周りでは車を持っている人がほとんどです。大抵は皆さん中古で車を購入し、帰国時にまた売って帰るというパターンです。車の購入代に加えてガソリン代、保険料、登録料、メンテナンス料などもかかるので、初期費用が少し大変かもしれません。加えて、オーストラリアは罰金大国ですので、駐車違反や信号無視、スピードをオーバーした場合などすぐに高額の罰金の請求が来ます。それでも、積極的にボランティア活動をしている人は、安全面、効率、時間の節約などを考えて、ワーキングホリデービザや学生ビザで滞在している人も車を所有している人が多いです。
Q. 現地の医療水準はどうですか? 医療費は高額ですか?
医療水準は高く、医療設備は充実しています。日本では内科、耳鼻科など症状によって病院を選びますが、オーストラリアではまずGP(General Practitioner)という総合診察医の受診が必要となり、予約をしてからGPにかかります。必要な場合は処方箋を出されるので、最寄りの薬局へ行き、薬剤師に処方箋を提出して薬を購入します。
Medicareと呼ばれる公的国民保険がありますが、これはオーストラリア国籍もしくは永住権保有者でなければ加入することはできません。治療費は高額となるため、民間の保険に加入するのが良いでしょう。学生ビザを申請する場合はOSHC(海外留学生向け医療保険)に加入する必要があります。
執筆者:Asami
執筆年月:2020年7月