海外社会貢献者からのメッセージ
Q. 世界を活動の場とする社会貢献者にとって、この国はどのような場所ですか?
パラグアイは親日国で、日本人移住地が数ヶ所あり、イタプア県では多くの日系人が農家を営んでいます。入植当初から、与えられた原生林を開拓し、大豆の輸出に成功するなど、パラグアイの経済発展に大きく貢献しています。また、国際協力機構のボランティア団体がパラグアイに派遣されており、教育、医療、農業、産業、人材育成、スポーツ等、幅広い分野で活躍しています。
定められた手続きを行うなら、永住権を手に入れる事ができる国ですので、近年、日本の大震災に伴う原発の不安から逃れるため、また新天地を求めて日本から移住してくる人もいます。
私が活動するエンカルナシオンは、アルゼンチンとの国境の街で、閑静な住宅地が多く、都会と田舎が程よく混在する比較的穏やかで住みやすい地域です。アルゼンチンのポサーダスとの間を流れるパラナ川沿いには、コスタネーラと言われる整備された遊歩道があり、人々の憩いの場となっています。エンカルナシオンは、市の取り組みにより、定期的に市の職員が街の草刈りやゴミ拾いを行っており、街を綺麗に保つ努力が続けられています。
日本領事館、日系人が経営する商店、日本語学校があり、毎年、バザーやお祭りなど日本人会主催のイベント行事があります。常に日本語教師が不足しているのが実情で、日本から移住している日本人に対してオファーが来ることもしばしばあります。日系人が多く住む地域ですので、日本語教師のボランティアは常に必要とされています。
文化
Q. 現地の人々の気質や考え方にはどんな傾向がありますか?
首都アスンシオンや、ブラジルとの国境の街など、地域によってはいわゆるラテン気質の人も多くいますが、パラグアイ人は基本的にシャイで素朴で純粋な人達です。
知らない人同士でも、気軽にHola!(こんにちは!)と、声をかけ合います。人助けが上手で、親切で温厚です。バスに乗り降りする時など、高齢者や妊婦さん、小さい子供たちが居ると、必ずと言って良いほど手を貸してくれますし、席を譲ってくれます。
また、人とお喋りするのが大好きで、人懐っこく、ゆったりした時間を過ごします。折り畳みの椅子を家の前に並べて、家族や友人とテレレ(パラグアイの文化で、一つのコップと金物のストローで回し飲みするお茶のこと。お湯を入れて飲むお茶はマテと呼ぶ)を回しながら、のんびり過ごしている人達をよく見かけます。
いろいろと親切ですが、約束や時間を守るのは苦手です。貸した物は、返してほしいと言うまで返さない事が多く、できない事をNoと言えません。何か頼み事をすると、Sí(はい)と言います。
「できるよ!もちろんさ」と自信満々に応じてくれますが、予定通りにできない事は多々あります。
銀行や市役所、医療機関など重要な場所でも同じ事がよく起きますので、内容を細かく確認する事、期限が決まっている手続きを行う時などは、注意する必要があります。
Q. 現地の食文化はどのようなものですか?
肉食文化で、野菜はほとんど食べません。その為、血圧を下げること、ビタミン摂取、発汗作用の為にマテやテレレを飲んで補っています。国民食はアサードと言われる焼肉です。週末は、串焼きで大きな肉を豪快に焼いて、家族や友人と一緒に食べます。
マンディオカという芋(キャッサバ)が主食で、ふかしたり、フライにしてお肉と一緒に食べます。
トウモロコシをすり潰し、玉ねぎとパラグアイチーズを混ぜて作るオーブン料理のチパグアス(とうもろこしケーキ)は定番メニュー。
マンディオカの粉とパラグアイチーズでできたチーパ(チーズパン)、餃子の皮をもっと太くしたような小麦粉の皮に、味付けされた牛ミンチやハムとチーズなどを包んで揚げたり、オーブンで焼いて作るエンパナーダは軽食としてよく食べられています。
夏はフルーツが豊富で、日本では高値で売られているアップルマンゴーの木が鈴生りになり、採り放題食べ放題です。
パラグアイは日本人の他に、台湾人や韓国人、アラブ系やドイツ系の人も多く移住しており、それぞれの国の食文化を楽しむ事ができ、野菜の種類や乳製品も豊富です。特に、日系のスーパーでは、日本米や、大豆製品、日本で食べられる種類の野菜も手に入れる事ができます。
Q. 現地の人々はどのような生活習慣や宗教観を持っていますか? 現地特有のマナーなどはありますか?
パラグアイの生活は、朝早くから始まります。午前7時~仕事や学校が始まり、市場も賑わいを見せます。11時頃には、各家庭で昼食の準備が始まり、基本的には外に出ている家族も一旦家に戻り、家族揃ってみんなで食べます。日本は夕食がメインですが、パラグアイは昼食がメインになります。夕食は軽食で済ませるのが一般的です。
挨拶の文化も日本とは違い、初対面は人それぞれですが、顔見知りになると、男性とは握手、女性同士はベソ(右と左の頬に、頬で一回ずつキス)とハグをします。
宗教は主にローマカトリックが90%で、街の至る所に教会があります。週末の礼拝は盛んに行われていて、大切にされています。
学校や病院もキリスト教系の団体によって運営されている所が多く存在します。
他の人の信仰を尊重する雰囲気は強く、信仰心がある事を褒める人たちが多くいるので、他の宗教に対しても敬意があります。
気候
Q. 現地はどのような気候ですか? 健康維持のために気を付けるべきことはありますか?
南半球にあるパラグアイは亜熱帯性気候で、年間の平均は17~24.5度です。
季節は日本と逆で、11~3月が夏となり、特に12~2月は40度を超える猛暑日になることもあります。その為、外出時はUVクリームを塗り、帽子や日傘、サングラスなどの日よけ対策は必須です。パラグアイ人は日傘をさす習慣が無く、日傘を売っている場所は見かけません。
夏の間の長距離バスは、冷房が異常に強く、体がとても冷えるので、小さく畳める軽めのダウンジャケットやストールを持参しておくと良いでしょう。
日差しが強い為、体力を消耗します。小まめに水分を摂ること、シエスタ(お昼寝)の文化を取り入れるように心がけましょう。
また、夏の時期は特にデング熱が流行するので、蚊よけ対策も忘れずにしておく必要があります。スーパーで蚊取り線香も売っていますが、ニオイが強いので、日本で売っている「ワンプッシュ」タイプを持参している日本人は多くいます。
春(9~10月)、秋(4~5月)と短く、朝晩と日中の温度差は20度を超える事もあり、1日で四季を感じることができる気候になります。その為、脱ぎ着しやすい服装や、外出時には羽織れる服を持っておくと良いでしょう。6~8月は冬の気候です。地域にもよりますが、冬の始まりは雨が多く、どんよりとした天気でジメジメしています。衣類にカビが生えやすくなるので注意が必要です。
Q. 現地特有の風土病はありますか? 健康維持のために役立つ対処方法はありますか?
毎年、感染が多くみられるのは、デング熱です。熱帯、亜熱帯地域で広がるこのウイルスは、ネッタイシマカによって媒介します。発症すると、高熱、吐き気、激しい頭痛、関節痛、発疹などの症状が出ます。近年、チクングーニャ熱、ジカウイルス感染症の感染も数多くみられます。予防接種は無いので、防蚊対策を徹底し、発症を避けるため免疫力が下がらないように注意する必要があります。
その他、狂犬病、A型肝炎、B型肝炎、破傷風、黄熱病なども感染も報告されていますので、不安な方は渡航前に予防接種を済ませておくと良いでしょう。これらの予防接種は、パラグアイでも実施されていますので、到着後に病院で受けることも可能です。(パラグアイでは、黄熱に感染する危険のある国から入国する際に、黄熱の国際予防接種証明書が必要となります。)
パラグアイ、アルゼンチン、ボリビアの3ヶ国にまたがるグランチャコ地域では、寄生虫病であるシャーガス病が風土病として蔓延しています。チャコ地方に行かれる場合は注意してください。
言語
Q. 現地の人々はどのような言語を用いていますか? 外国人にとって、現地の言語を学ぶ際に、どんなハードルがありますか?
公用語はスペイン語、グアラニー語です。グアラニー語は先住民族の言語で、日常的に広く使われ、学校教育でも必修科目となっています。
都市部では主に、スペイン語が話されており、地方ではグアラニー語が話されている割合が高いのが特徴です。外国人がグアラニー語で挨拶しただけでも、とても喜ばれるので、滞在先が地方の場合は是非、グアラニー語を少し覚えておく事をおすすめします。
英語は、空港や高級ホテルなど、外国人との接点がみられる場所以外では、ほとんど通じません。
グアラニー語の習得ツールは少ない為、地元のネイティブに教えてもらうか、パラグアイ在住の日本人がまとめたグアラニー語の紹介サイトなどを参考にできます。
生活
Q. 現地の人々の生活水準はどうですか?
貧富の差が激しく、地域によって、また家庭によって異なります。貧しい家庭は、木造の家に暮らし、畑で野菜やキャッサバを作り、豚や鶏を飼って増やし、それを売って家計を支えています。
富裕層の暮らしは、共働きの家庭が多く、立派な家に住み、お手伝いさんを雇い、裕福な暮らしをしています。
日本と比べると、家賃が安いのでその分生活費が抑えられますが、冷暖房を使用する時期は電気代が高くなります。生鮮食品は日本の1/3くらいの値段ですが、日用雑貨は日本とほぼ同じくらいの値段です。ここ数年、物価が高騰しており、全体的に値が上がっています。車のガソリンはリッター110円程。日本とあまり変わりません。
日本料理レストランや、マクドナルドなどの世界的チェーン店のファーストフードの価格は高めの設定です。
Q. 現地の人々の教育水準はどうですか?
パラグアイの義務教育は、就学前の1年と小・中学校9年を含めて10年制です。国の教育予算が低く、特に公立校の教育水準はかなり低い状況です。校舎や教員が不足しており、十分な教育を行なえず、給料問題による教員のストライキなども起きやすいのが現実です。
授業は午前・午後の2部制で、1日4~5時間の半日授業です。少ない授業時間にもかかわらず、雨の日、学校行事、サッカーの国際試合の日の授業は行われません。そのような状況の為、経済的に余裕のある家庭では、施設が整っていて、教育内容が充実している私立の学校に通わせるケースが多くみられます。
日系人の家庭では、平日は地元の学校(スペイン語)に通わせ、週末に日本語学校で日本語を学ぶ生徒もいます。
大学や高等専門学校などの高等教育は、公立校が大半を占め、質も高いことから入学希望者が多く、かなりの難関です。しかし、卒業後の就職先が少ないことが問題となっています。
Q. 現地の治安水準はどうですか? 外国人が特に気を付けるべきことはありますか?
南米の中では比較的安全と言われているパラグアイですが、首都アスンシオンや国境沿いの街では、オートバイや銃を使用した、ひったくりや強盗事件が頻発しています。
バスに乗る時は、荷物を体の前に持ち、スリに合わないように気を付けましょう。高価な物を身に着けず、夜間や人気の少ない場所に出歩かないようにし、携帯電話やカメラ、iPadなどを手に持ちながら観光することの無いように注意しましょう。
パラグアイのバーやカラオケ店は麻薬の密売をしている所もあるので、できるだけレストランでの飲食をおすすめします。
Q. 現地の住居や住環境の様子どうですか?
賃貸物件は、アパート、コンドミニアム、マンション、一軒家と様々です。
特にアスンシオンは、賃貸物件の数が多いので、比較的安くセキュリティや設備の整った綺麗な住宅に住むことができます。アパートや一軒家は、家と家が壁一枚で仕切られていて続きで建てられている物件が多く、住人の声や物音が響きやすいのが難点です。入居前に、建物の構造を確認する必要があります。
日本と違う所は、基本的にキッチンに換気扇がありません。バスルームにシャワーとトイレが設置されており、シャワーは電気で温めるタイプです。温かいお湯と安定した水量でシャワーを使用できるように、テルモタンケ(電気で熱湯を作り、溜めるタンク)を設置する家庭もあります。
借りた物件のメンテナンスは、基本的には借主が行います。防犯対策や、設備のグレードアップを望むのであれば、大家さんの許可を得て、自分で行うのが一般的です。家屋は、立て付けが悪かったり、隙間が多かったりと、問題点は多く存在しますが、金物店の数が多いことや備品が比較的安いので、修繕はし易いです。修繕がお好きな方はインパクトドライバーを持参されると便利でしょう。
Q. 現地の生活インフラ(水道・電気・ガス・インターネット)はどの程度整っていますか?
首都アスンシオンでも、インフラの設備はいまだ不十分で、大雨が降ると道路が泥水や汚水で溢れ、停電も頻繁に起こります。
都市部では、上水道が完備されていますが、田舎は井戸が多く、各家庭に井戸からくみ上げた水を確保するブルーのタンクが設置されています。
ガスはプロパンガスで、最初にガスのタンク代(1,000円程)が必要ですが、ガスが無くなったらガソリンスタンドで毎回補充します。
インターネット環境は、都市部では光ファイバー(月々3,000円程)やケーブルテレビ(月々2,000円程)によるインターネットが普及していますが、地方では固定回線はほとんどなく、3Gや4Gによるインターネットの使用になります。
Q. 現地のレストランやファーストフード店、露店など食品を扱う店の衛生状態はどうですか?
通常のレストランやファーストフード店で調理された物は心配ありませんが、路上や屋台の食品は不衛生な物が多く、品質管理が行き届いていない場合も多い為、食中毒の危険があります。
Q. 生活に必要な安全な飲用水はどのように調達しますか?
スーパーなどでペットボトルを購入するか、水道水を煮沸して飲むことができます。
最近では浄水器も普及しており、設置している家庭も多くみられます。
街中で20ℓタンクの飲料水をトラックで販売している業者もありますが、水の品質管理が徹底しているメーカーの水を買うように注意する必要があります。中には、タンクに水道水を補充して販売している業者もあり、品質管理を怠っているために飲料水の基準値に達していない水も存在しています。
Q. 現地の交通事情や交通機関の様子はどうですか?
首都アスンシオンは、近年、車の台数が増え、日中でも渋滞が起きています。
交通ルールを守る意識が低く、運転も荒いので、よく接触事故を起こしている場面を見かけます。ヘルメットを被らずにバイクに乗り、交通事故で命を失っているケースは後を絶ちません。
公共の交通機関は、コレクティーボと呼ばれる市内バス、タクシー、Uberを利用し、長距離の移動はバスターミナルから長距離バスが各都市へ運航しています。
Q. 現地の医療水準はどうですか? 医療費は高額ですか?
公立の医療機関は無料ですが、設備や衛生状態に問題があり、医薬品や医師も不足しているのが実情です。その為、患者自身が医薬品を調達する必要が生じ、具合が悪い中、長時間待たされることもあります。その点、私立病院は設備や医師の心配は比較的少ないですが、受診の際に診察や検査の度に現金で支払うか、支払い能力がある事を示す保険証やクレジットカードを見せてからでないと、診療が始まらないことがあります。
私立病院の医療費は全額負担でも、日本の3割負担程度です。都市部や、日本人移住地の病院には、日系人の医師の診察を受けられる病院もいくつか存在します。
特殊な病気や重症化した場合は、設備が整った近隣諸国への移送が必要になるケースもありますので、万が一に備えて、海外旅行傷害保険に加入される方や、海外医療保険付帯のクレジットカードを準備しておくのも良いでしょう。
医療施設のほとんどは首都に集中しており、医療施設や専門医へのアクセスが容易ではないので、地方にお住いの方は車で5~6時間走らなければならないこともあります。
健康管理を日ごろから徹底し、体調不良が長引く場合には早めに医師の診察を受けることをお勧めします。
執筆者:Aromagirl
執筆年月:2020年6月