海外社会貢献者からのメッセージ
Q. 世界を活動の場とする社会貢献者にとって、この国はどのような場所ですか?
NGOなどの団体がボランティア活動を斡旋しています。 主に老人ホームでお年寄りのお世話、孤児院で子供達のお世話、また企業や様々な団体での日本語教育などです。ご関心ある方は定期的に海外ボランティアサイトをチェックされることをお勧めします。
言語、生活費、安全面、生活レベル、どれをとっても東南アジアの中では日本人に一番取っ付き易い国です。海外ボランティアを初めて経験される方の最初のステップにこの国を選ばれてみればいかがでしょうか!
文化
Q. 現地の人々の気質や考え方にはどんな傾向がありますか?
マレーシアはタイから南に延びる「マレー半島」の部分でなる西マレーシアと、ボルネオ島の北側部分の東マレーシアから成り立っています。国土は日本とほぼ同じ面積ですが人口は4分の1なので、日本と比べると広々ゆったりした感じを味わえます。
マレーシアの最大の特徴は多民族国家ということです。大きく分けると、マレー系、中華系、インド系の3民族から成り立っていて、それぞれの民族により文化や言語、宗教が異なります。
ロングステイ財団調べ『ロングステイ希望国・地域2018』によるとオーストラリアやハワイを抑えて13年連続(2006-2018)で日本人が住みたい国「世界No.1」に選ばれているぐらい、マレーシアの人々の気質や文化は日本人にとって居心地のいいものです。親日家の方がとても多いです。
Q. 現地の食文化はどのようなものですか?
多民族国家だけに、食文化もとてもバラエティに富んでいます。日本でも特に有名なのは「ナシゴレン」です。マレー語で「ナシ」はご飯、「ゴレン」は炒める、焼く、つまり日本でいう「焼き飯」です。本場のマレー料理、中華料理、インド料理はもちろん、ベトナム料理、中東料理、日本料理、韓国料理などのレストランも首都には至る所にあります。南国らしく、「甘い」と「辛い」がはっきりした味付けが多いです。日本から来てすぐの時はその甘さと辛さにびっくりされるかもしれません。
Q. 現地の人々はどのような生活習慣や宗教観を持っていますか? 現地特有のマナーなどはありますか?
多民族国家のマレーシアでは、それぞれの民族によって習慣、宗教が異なります。
●マレー系
マレー半島に元々いた民族で、西マレーシアにいるマレー系の方はすべてモスリム、つまりイスラム教徒です。おっとりしている方が多いです。日本人の計画性や時間厳粛の感覚と、この「おっとり」しているマレー人の感覚の違いを感じる時がありますが、それは彼らの民族性なのだとポジティブに捉えると、こっちもイライラせずに済みます。
日本人にとって気をつけないといけないのは、イスラム教のマレー系の方は、「お酒を飲まない」「豚肉を食べない」「結婚前の男女が二人きりになってはいけない」ということです。
1日5回は祈りの時間があり、近くにあるモスクから祈りの放送が流れるので、近くに住んでおられるとびっくりされる時があるかもしれません。毎年4-6月頃にラマダンという断食する期間が約1ヶ月あります。その間イスラム教徒は日中食事をしません(日没後はOK)。ですからその間はイライラしていたり元気がなかったり仕事も遅くなったります。ただでさえ「おっとり」の方々が、さらにその「おっとり」にパワーが増します。この時期はそのことを念頭に置いておかれることをお勧めします。
●中華系
所謂、華僑の方の子孫です。といっても立派なマレーシア人です。「中国人ですか?」と尋ねると「いいえ、マレーシア人です」と返事が返ってきます。中国大陸の中国人とは自分たちは違うというアイデンティティーを強く持っておられます。
ビジネスと食べることのネタが大好きです。中華系の方と友達となりたい時は、そのネタが必須!
基本、仏教の方が多いです。家族の繋がりをとても大切にされます。ビジネスセンスに富んでいるので、比較的時間の感覚も日本人に近く接しやすい方が多いです。 そして中華系の方の大イベントは旧正月(チャイニーズニューイヤー)です。アパートの共同スペースであれ、大通りであれ爆竹音が夜中まで続きかなりうるさいです。
●インド系
マレーシアがイギリス統治下にあった時に、やはりその統治下にあった南インド地方から移動してきた方々の子孫です。もちろん彼らもマレーシア人です。ほとんどの方がタミル語を家庭では話します。
宗教は、ほとんどの方がヒンズー教徒です。生活の中に宗教行事、祭りが染み込んでいます。どちらかというと、良いものは何でも取り入れようとする考えを持っておられる方が多く、他の宗教や文化に対して寛容です。 陽気な方が多く、よく話し、音楽が聞こえてきたら思わず踊り始めるオープンな方が多いです。 ヒンズー教徒は牛肉を食べません。ですから牛肉の入ったカレーはレストランでは出てきません。
3民族で共通しているマナーとして、① 子供の頭を撫でる(特にマレー系とインド系)ことはタブー、② 人や物を指さす時、人差し指で指すのが無礼(代わりに親指で指します)、そして ③ 左手は不浄なので握手や食事の際に使わない(特にマレー系とインド系)などを挙げることができます。
気候
Q. 現地はどのような気候ですか? 健康維持のために気を付けるべきことはありますか?
赤道近くの熱帯気候で、年間の日中の平均気温が30度前後です。こまめに水分補給、外出する際はサングラスや日傘などで暑さ対策は欠かせません。現地の方は日焼け防止の帽子や手袋をする習慣がないので、それらを身につけている方をみれば「あ、日本人か韓国人かな」と思われることが多いです。出来るだけ地元の方に同化したければ、それらは使用されない方がいいかもしれませんね。
5-9月にかけてはモンスーンの影響を受けて比較的雨が多い時期になります。といっても日本の梅雨のようにしとしと1日中降るのではなく、短時間で雷の伴った大雨(スコール)が降ります。各地で洪水になることも多く、スコールになると都心部は大渋滞になることが多いです。
Q. 現地特有の風土病はありますか? 健康維持のために役立つ対処方法はありますか?
熱中症、デング熱、狂犬病などには気をつけたいです。マラリア、日本脳炎、肝炎などもありますが稀です。どうしても心配なら予防接種を日本でされておかれてもいいですね。ただ熱中症とデング熱は予防接種がありません。熱中症対策に水分をよく取りましょう。デング熱はいかに蚊に刺されないかです。蚊対策は欠かせません。野良犬には気をつけましょう。飼い犬であっても噛まれたら念のために病院に行かれた方がいいと思います。
言語
Q. 現地の人々はどのような言語を用いていますか? 外国人にとって、現地の言語を学ぶ際に、どんなハードルがありますか?
3民族の共通の共通言語はマレー語です。マレー系、中華系、インド系の方々が互いにコミュニケーションを図る時は主にマレー語です。国民のための様々な書類系もマレー語記載です。ただ首都クアラルンプールでは英語でもコミュニケーションが図れることが多いです。
家では民族それぞれの言語が使われています。マレー系はマレー語(東マレーシアではイバン語などの現地語もあり)、中華系は北京語、福建語、広東語など、そしてインド系はタミル語(稀にテルグ語なども)が話されています。
マレー語が話せるとコミュニケーションに問題ありません。英語も通じるところが多いです。 ただ、より深く中華系やインド系の方と知り合いたい場合はそれぞれの言語を話せるとベストです。
マレー語や中国語の習得ツールは多いですが、タミル語はまだまだ少ないです。ただ文法は日本語と同じ並び、そして何となく日本語と似ている単語や言い回しもあるので学ぶと楽しいです。例えば、「〜できない」(英語のcan’t)をタミル語では「ムリヤデ」(書くとムディヤデですが発音はムリヤデ)で、関西弁の「無理やで」で通じます(笑)。
生活
Q. 現地の人々の生活水準はどうですか?
東南アジアの中ではシンガポールに次ぐ高い生活水準で、日本と比べても大きな違いはありません。
物価は、よく言われるのは日本の3分の1です。参考までにガソリンは1Lが約40円、現地の方のランチ代が約200-400円です。
Q. 現地の人々の教育水準はどうですか?
まず、日本とマレーシアでは教育制度の年数が違います。
一般的に7−12歳の6年間がスタンダード1-6、13―17歳の5年間がフォーム1-5、そして大学の準備期間に当たるフォーム6があります。 公立の学校に行くと主にマレー語で、私立に行くとそれに加え、英語やそれぞれの民族語の教育を受けます。ですから、どの学校に行くかにより受ける教育にかなり差が出ます。さらに都市部の教育は、地方に比べ高いです。
Q. 現地の治安水準はどうですか? 外国人が特に気を付けるべきことはありますか?
東南アジアの中では比較的治安はいいです。ただ都市部では貧富差があり、場所によって夜間は近づかない方がいい場所もあります。特に夜間の外出は地元の方に情報を聞きつつ決定されることをお勧めします。ひったくりなどは場所により多発する場所もあります。特に手荷物、肩掛けバッグ、スマホの持ち運びには注意をしてください。置き引きも多いですから、空港や店、レストランでも荷物から目を離さないようにしてください。
マレー系の方と接する機会が多い場合は、特に女性は肌の露出が少ない服装にしてください。宗教的にもマナー的にもそうすべきです。
Q. 現地の住居や住環境の様子どうですか?
戸建て、アパートメント、コンドミニアムなどのチョイスがあります。
日本人などの外国人は、ガードがしっかりしているコンドミニアムに住む方が多いです。 お風呂(湯船)があるところはほとんどありません。トイレは2つあるところが多いです。寝室(マスターベッドルーム)にシャワーとトイレがあるバスルーム、そして共用スペース(玄関付近やリビング近く)にもう一つバスルームがあるという造りが多いです。コンドミニアムは24時間セキュリティーガードが見回りしてくれ、敷地内にジムやプール、場合によってはサウナ、コンビニ、レストラン、クリーニング、理容室が併設されているところもあります。日本人などが集まるハイレベルな場所を少し外せば、月4、5万で3LDKのプール・ジム付のコンドミニアムをレンタルできます。
Q. 現地の生活インフラ(水道・電気・ガス・インターネット)はどの程度整っていますか?
インフラの普及率は高いです。ただ、ガスは都市ガスではなくプロパンガスです。水道代とガス代は非常に安いです。電気代はエアコンをどれだけ使うかによって大きく変わります。よく使えば日本円で1万円を超えることもあります。
インターネットは、家に設置するのでも使い放題で月約4,000円。スマホのシムもデータ使い放題でも1,000円ぐらいで手に入るので、家にネットをあえてひかず、シムだけでも問題なく過ごしておられる方も多いです。
Q. 現地のレストランやファーストフード店、露店など食品を扱う店の衛生状態はどうですか?
どのレストランでも(都市部の高級レストランでも)、バックヤード(洗い場やキッチン)見ると、日本との差を感じます。ゴキ○リやネ○ミを見かけることも。それでお腹を壊すことは不思議なぐらいありません。 これも東南アジアあるあるだと楽しめるようになれれば最高ですね。
その自信がなければあえてバックヤードを見ず、綺麗なレストラン内部で、提供されるとても美味しい食事を満喫なさってください。
Q. 生活に必要な安全な飲用水はどのように調達しますか?
水道水は比較的綺麗ですが、やはり直接飲むのは避けた方がいいです。簡易式の濾過装置を水道蛇口に設置する、煮沸消毒する、または飲料水を購入しましょう。
Q. 現地の交通事情や交通機関の様子はどうですか?
首都は電車やモノレール、バスなどの公共の交通機関が充実しています。GRABタクシーが簡単で値段の交渉もせずに済むので、GRABアプリをダウンロードされておかれたらいいと思います。自分で運転したい場合はレンタカーも格安で借りられます。長期であれば中古車を購入することも可能です。
Q. 現地の医療水準はどうですか? 医療費は高額ですか?
マレーシアの医療レベルは高く、手頃な価格で高度な治療が受けられることで有名です。近隣の国からわざわざ治療に訪れる患者が年間80万人もいると言われているほどです。特にクアラルンプールやペナンの医療はかなり進んでおり、多くの医師はアメリカやオーストラリアなどで経験を積んできた医師たちです。特に首都のクアラルンプールには日本人の駐在員や現地採用者が多いので、日本語が通じる病院も多いです。風邪など、さほど大きな治療を必要としない場合は近くのクリニックで安価で見てもらえます。
でも念のために、海外旅行保険の加入、または海外医療の保険が付帯されているクレジットカードの持参をお勧めいたします。
執筆者:Kozy
執筆年月:2020年5月