海外社会貢献者からのメッセージ
Q. 世界を活動の場とする社会貢献者にとって、この国はどのような場所ですか?
ガーナと聞くと、日本人はすぐにカカオ豆の原産国だと連想するのではないでしょうか。でも、場所はなかなかすぐに思い浮かべられないかもしれません。
ガーナは、西アフリカに位置する国で、お隣の国はトーゴ(東側)、コートジボワール(西側)、ブルキナファソ(北側)です。大西洋に面していて、西アフリカの玄関口として貿易などで栄えています。主な輸出品は、金とカカオ豆です。
多くの中国人もビジネスで来ています。
都会の方には、高いビル、おしゃれなショッピングモール、レストランがあり、先進国と変わらないように感じる時もありますが、医療関係や教育関係、農業など多くの方面で、ボランティアがまだまだ必要とされています。
田舎の方では、綺麗な水や衛生的なトイレの無い地域があり、その面でも多くのボランティア活動を求められています。
フランス、カナダ、イギリス、アメリカ、中国、日本から多くの人がボランティア活動に来ています。最近は精神病院でのボランティアのためにイギリスから来ている方と会いました。
私はガーナのテマという都市に住んでいます。首都のアクラからは車で1時間ほど離れた所で、とても便利なところです。そこで教育ボランティアをしています。
文化
Q. 現地の人々の気質や考え方にはどんな傾向がありますか?
ガーナ人はとてもフレンドリーで、どこの国の人でもアクワバ!(ようこそ)と言って親切に迎えてくれます。道を歩いていると、素敵な笑顔で挨拶してくれます。
ガーナ人はとても礼儀他正しくて、何よりも挨拶をとても大切にしています。そして、特に目上の人や年配の人をとても大切にしていて、敬意を示します。なので、年配の人の意見はいつでも正しい、大切と思っています。
そして、会話していて感じるのは、基本的な考え方がいつもポジティブということです。
とても人間関係が心地よく感じます。いつでも誰かを助ける気持ちがあるので何か重たい物を持っている人が入れば、お疲れ様〜と声をかけたり手伝ってあげたりします。
ガーナ人は若い人から年配の人まで音楽やダンスが好きで、結婚式や何かパーティがあればすぐに踊っています。それでも少しシャイなところもありますが、基本的に社交的で大らかな人々です。
ガーナ人が好きなのは、サッカーです。サッカーについては、見るのもプレーするのも大好きで、とても盛り上がります。サッカーについて語り始めると、声がどんどん大きくなってきます。時には盛り上がり過ぎて喧嘩になることもあるほどです。
Q. 現地の食文化はどのようなものですか?
ガーナにはたくさんの主食があります。
特に現地の人が好んで食べるのは、フフです。フフとは、キャッサバ芋とプランテーン(調理用バナナ)を蒸して餅つきのように作ったモチモチしたもので、これを温かいスープと一緒に食べます。
キャッサバ芋やトウモロコシの粉を練って発酵させたバンクーというものもあります。それよりも少し酸味のあるトウモロコシの粉で作ったケンケもあります。
お米も食べますが、それよりもフフやバンクーは腹持ちがいいので、暑いガーナではお米よりも好んで食べられているように思います。
屋外マーケットでは、マンゴーやパイナップル、オレンジを安く買うことができて、毎日美味しいフルーツを贅沢に食べることができます。野菜も安く新鮮なものを買えます。
外国人は高い値段を言われるので、顔なじみになるまでは地元の人と一緒に行くか、お願いして買ってきてもらいます。
野菜や果物は、買ってきたらすぐ丁寧に洗って、冷蔵庫に入れることをお勧めします。暑いので、すぐ傷んでしまいます。
テマには中国のお店と韓国のお店があるので、醤油やお酢、海苔が手に入ります。豆腐も少し高いですが売っています。ショッピングモールに行けば、チーズやヨーグルト、牛乳もすぐ買えます。
鶏肉と豚肉、牛肉は、屋外マーケットでもショッピングモールでも買うことができます。屋外マーケットで鶏肉を買う時に、“ハードそれともソフト?” と聞かれます。私はソフトを買う事をお勧めします。ハードのチキンは、何時間も煮て作るガーナのスープに使うもので、普通の料理に使うと噛み切ることができないほど硬いです。
フィッシュマーケットでは、サバや鯛が安く買えます。現地のテラピアもとても新鮮で美味しいです!
Q. 現地の人々はどのような生活習慣や宗教観を持っていますか? 現地特有のマナーなどはありますか?
ガーナには多くのキリスト教の教会があり、ほとんどの人が日曜日にはお洒落をして教会に行きます。私の家の近くにも教会があり、日曜日は朝7時から大音量で賛美歌を熱唱し始めます。
イスラム教徒も多くいますが、私のいるガーナの南部はキリスト教が多く、北の方に行くとイスラム教徒が多いです。
現地特有のマナーは、何かを渡す時、受け取る時、触る時、左手を使わないということです。手を振る時も右手でします。どうしても右手が空いてなくて、左手で何かをする時は “左手ですみません”と言ってすると大丈夫です。都市部では、“外国人”ということでそこまで注意されたりしませんが、田舎の方では、より一層厳しいので、特にお店のものを触る時は必ず右手で触りましょう。
先程も書きましたが、ガーナ人はどんな時でも挨拶をとても重視しています。特に近所の人にはちゃんと挨拶して良い関係を保つのが大切です。そして、お店に入った時、公共の乗り物で隣に座った人にも、誰かと道ですれちがう時にも、きちんと挨拶すると受け入れてくれて、いろいろな事がとても順調に進みます。
挨拶も時間帯ではっきり分けています。朝はグッドモーニング、12時以降はグッドアフターヌーン、日が暮れた17時ごろにはグッドイーブニングという感じです。
ガーナ人は会話をとても楽しむので、ガーナで楽しく快適に生活するコツは、買い物や乗り物で出会うガーナ人に積極的に挨拶して会話を楽しむことです。
気候
Q. 現地はどのような気候ですか? 健康維持のために気を付けるべきことはありますか?
ガーナは赤道に近い国の一つなので、年間を通して気温差がほとんどありません。私のいるテマでは平均気温27〜31度で、昼間の太陽は眩しくて熱いです。でも、湿気がないので、体が重くなったり、だるくなったりする事はありません。
熱帯雨林気候に属していて、乾季(10月〜3月)と雨季(4月〜9月)に分かれています。12月から2月にかけては、サハラ砂漠からくる風のせいで、埃っぽくなり、視界が悪くなります。
乾季の時はとても肌が乾燥して痒くなります。現地でココバターやシアバター、ボディークリームが安く売っているので、自分の肌に合うクリームでたくさん保湿することをお勧めします。
乾燥はしていますが、太陽はギラギラして暑いので、たくさん汗をかきます。喉が乾く前に、こまめに水やココナッツウォーターを飲んでください。家を出る時は必ず飲み物を持参することをお勧めします。個人的には日本から持ってきた粉のスポーツドリンクがとても役に立っています。
外に出る時は、日焼け止め、帽子、サングラスを必ず持っていくようにしています。
特に雨季はマラリアに感染するリスクが高くなります。虫除けスプレーは必須です。ディート濃度の高い虫除けスプレーを出かける時にして、小さめのスプレーも持ち歩いています。暑いですが、なるべく長袖、長ズボンを着用して、日焼けと虫除け対策をしています。
質の良い睡眠をとって免疫力をいつも高く保つことが、ガーナライフを安全で楽しむために役に立っています。ボランティア活動をしている時も、疲れすぎないように気をつけながらやっています。
Q. 現地特有の風土病はありますか? 健康維持のために役立つ対処方法はありますか?
● マラリア
ガーナのマラリアは熱帯熱マラリアなので、熱が出たり、体の節々が痛くなったりします。水を飲んだ時、苦いと感じたら、すぐに近くの薬局に行って血液検査をしてください。
薬局はたくさんあって、自分で検査キットを買って検査することもできます。いろいろな値段のものがありますが、大体10セディ(180円)から15セディ(270円)で買えます。
近くの病院やクリニックで検査してもらうこともできます。10分から15分で検査結果が出ます。検査にかかる値段は大体25セディ(500円)前後でしてもらえます。
早い段階でマラリアの薬を飲むと大体2、3日で熱が引いてきて楽になります。
現地の人は、モリンガの葉を刻んで、オムレツに入れて食べたり、ティーにして飲んだり、レモングラスティーを飲んだりして予防している人もいます。
早朝(まだ明るくなる前)や夕方(太陽が沈んだ後)は蚊がたくさん行動しています。その時間帯はできるだけ外に長くいないようにしています。
● 黄熱病
ガーナ入国の際には、黄熱病予防接種が必ず必要です。事前に予防接種を受けて、イエローカードを必ず持ってきてください。
予防接種関連でもう一つ、髄膜炎菌髄膜炎の予防接種もしておくと安心です。
蚊を媒体とした病気が多いので、寝る時は蚊帳の中で寝る事や、汚い水たまりの近くに長くいない、家の周りに水たまりを作らない事が大切です。
現地の人はよくソボロという、ハイビスカスティーにたくさん生姜を入れた美味しいエナジードリンクを飲んでいます。私も体調が悪くなった時に、現地の友人が手作りのソボロを持ってきてくれて、それを飲むととても元気になりました。
現地のものをたくさん食べる、たくさん寝る、無理をしすぎない、が一番です。
言語
Q. 現地の人々はどのような言語を用いていますか? 外国人にとって、現地の言語を学ぶ際に、どんなハードルがありますか?
公用語は英語です。
その他にも、民族ごとに言語が違うので、とてもたくさんの言語が存在し、飛び交っています。私のいるテマ、アクラでは多くの人がトゥイ語を話しています。会話をしていると、英語にトゥイ語が混ざったりして来ます。
ガーナ人は自分の部族の言語をとても積極的に教えてくるので、すぐに簡単な挨拶を覚えることができると思います。現地の言語が喋れるかどうかを試してくるときも多いです。
ガ語、アウェ語、ダングベ語、トゥイ語で挨拶のフレーズを覚えておくと、現地の人はすごく喜んでくれて、すぐに友達になれます。
特にトゥイ語は、日本人にとって読みやすい言語だと感じることがあります。何個か変わったアルファベットはありますが、大体はローマ字読みに近い読み方です。発音は、そこまで難しくありません。ですが、文法は少し複雑に感じます。
ガーナでは70を超える各地の言語、方言があるので、全てマスターする事は難しいですが、私は個人的に最初にトゥイ語を学ぶと、ガーナでの新生活にすぐに役立つと感じています。
生活
Q. 現地の人々の生活水準はどうですか?
貧富の差は激しいです。
私はテマの住宅街に住んでいるので、毎日の生活で貧富の差を感じる事は少ないですが、少し田舎に行くと、薪を使って料理をし、子供たちが共同の水道から水を汲んで家まで運ぶという生活をしているところもあります。
車で移動中に信号で停まっていると、物乞いをする人たちが話しかけて来ます。赤ちゃんを連れた若いお母さんもいれば、おじいちゃんや若い人もいます。それとは反対に、高級車に乗り、大きな家に住み、何人もお手伝いさんを雇って生活している人も多くいます。
Q. 現地の人々の教育水準はどうですか?
学校は、日本と同じく6歳から学校に通い、6年間、3年間、3年間と無償で教育を受けることができます。
学校は、公立と私立、そしてイスラム系の学校があります。テストが終わった日には、校庭で音楽を流します。小さな子供たちがダンスをしたりしています。
私の行ったアコソンボという村の子供達は、とても勉強好きな子が多かったです。子供達が朝早くから楽しく学校に通う様子を見る毎日でしたが、ボランティアをしていると字が読めない若い10代の子たちに会うこともありました。学校までの距離が遠くて行けないということや、家族の手伝いをいないといけないという理由がありました。
いろいろな子供達と接して個人的に感じたのは、子供たちが学ぶことや学校に行くことを楽しんでいるということです。いろいろな言語が飛び交っているからか、リスニング能力が高く感じました。記憶力もとても良くて、1回、2回教えたことをずっと覚えていました。
その村では、家庭によっては、学校以外で家庭教師を雇い、理数系の科目を学んでいる子供達もいました。
Q. 現地の治安水準はどうですか? 外国人が特に気を付けるべきことはありますか?
アフリカの中では、比較的治安がいい方だと思います。テマではアジア系の人が夕方一人で歩いているのをよく見ます。 でも、場所によっては、地元の人でも危ないからあまり一人で行かないという所もあるので、外に行く時は必ず誰か現地の人と一緒に行くようにしています。
特にホリデーシーズン、大統領の選挙前後などの大きなイベントがある時には、なるべく家にいるようにしています。
車を運転する時は、必ず鍵を閉め、暑くて窓を開ける時も全開にはせず、三分の一程度開けるようにしています。
そして、携帯も必要な時だけ出すようにしており、大きな鞄を持たないということも心がけています。
現地の多くの人は財布からお金を出すというのではなく、ポケットから出しています。綺麗な財布を持っているとたくさんお金があると思われるので、なるべく細かいお金を持つようにしています。
Q. 現地の住居や住環境の様子どうですか?
私の家の近所では、各家は大きなゲートでそれぞれ仕切られていて、家自体は通りから見えない作りになっています。どの家も塀には有刺鉄線が張り巡らされています。
場所によっても変わりますが、私の住むテマでは一ヶ月1万円ほどで安全な家に住むことができます。
家を探す時は、必ず現地の友達と一緒に行く事をお勧めします。窓はしっかり閉まるか、網戸はあるか、鉄格子はしっかりしているかなどを確認してください。
私の家は、敷地の中に家が二軒あり、その一つにガーナ人の夫婦が住んでいます。一番お勧めで安全なのは、現地の人とルームシェアすること、または同じ敷地内に住むことです。
大体のお家は、メインの大きな家と別にもう一軒家が同じ敷地内にあり(1LDK、2LDK)、そこを誰かに貸している人が多いです。
Q. 現地の生活インフラ(水道・電気・ガス・インターネット)はどの程度整っていますか?
私の住むテマでは、ほとんどの家に電気、水道が整っています。蛇口をひねれば、すぐ水が使えます。日によって水圧は変わりますが、特に不便なことはありません。断水も一ヶ月に一回ほどです。
田舎の方にいた時は、蛇口はありましたが、ほぼ滞在中は断水だったので、地元の人に頼んで毎回大きなタンクに水をいれて持って来てもらっていました。
ガスはプロパンガスで、大きさは持ち運べるサイズの小さいのもあれば、大きくて女性では持てないサイズのものまで色々あります。賃貸の家に住む場合、自分で準備しなければなりません。なくなったら、ガスを入れる場所まで持って行って、満タンにしてもらい、自分で家に設置し直します。
インターネットは、なかなか通っている家は少ないです。ポータブルWi-fiを買って、その中のSIMカードに料金をチャージして使っています。
Q. 現地のレストランやファーストフード店、露店など食品を扱う店の衛生状態はどうですか?
ファーストフード店は、基本的に綺麗で衛生的です。ローカルのレストランに行く場合は、よく選んで、外国人がよく行くお店にしています。
現地の人に聞くと、美味しくて、いつも新しいものを作って出してくれるお店を教えてくれるので、なるべく自分で選ぶよりも地元の友人に聞いてから食べに行っています。
ガーナの料理は基本的にたくさん煮込んで作られているので、お腹を壊すことは今まであまりないのですが、フフを食べる時は気をつけています。フフは木臼で突いて作るものです。木臼や練る時に使う水が衛生的でない場合があるので、お腹の下しやすい方は気をつけてください。
Q. 生活に必要な安全な飲用水はどのように調達しますか?
基本的に買って飲んでいます。ボトルの水とビニールパックに入った水があります。
体がガーナの水に慣れるまでは、ボトルの水を買って飲むことをお勧めします。
現地の人がビニールパックに入った水を飲んでいるのをよく目にしますが、たくさんブランドがあるので、行くそれぞれの場所で現地の人に聞いて、安心なブランドのものを飲んでください。
私は、Awonuというブランドのものを大量に買って、料理の時やコーヒーなどを飲む時に使っています。お米を炊く時は、水道水でも大丈夫です。ですが、スープやコーヒーの時は、沸かしたものでもお腹が緩くなりました。
Q. 現地の交通事情や交通機関の様子はどうですか?
トロトロという乗り物をよく移動手段で使います。
トロトロとは、大きめのバンのことで、運転手とメイツと呼ばれる料金を集める人が乗っています。常にメイツがどこに行くかを手のサインで道に立っている人に伝えます。基本的にどこからでも、見つけた時に手をあげて乗ることができて、自分の降りたいところで降りることができます。
降りたい時は、その場所をメイツに伝えて、料金も降りる少し前にメイツに渡します。大体1セディ(18円)ほどです。少し離れたところでも2セディ(36円)ほどです。トロトロに乗る時は必ず細かいお金を前もってポケットに入れておくと便利です。
他にもタクシーやウーバーを使う人も多くいます。一人で乗る場合は、ウーバーが一番安全で、確実に目的地に着くことができます。距離や時間帯によって値段は変わりますが、昼間で大体15分くらいの距離ならば、大体5セディ(89円)から10セディ(177円)で乗ることができます。
Q. 現地の医療水準はどうですか? 医療費は高額ですか?
都会には大きい病院はありますが、まだまだ技術は高くないように思います。機器や衛生状況もあまりよくありません。
風邪をひいた時や、マラリアになった時は、薬局か薬局の隣にあるクリニックに行く人が多いです。
富裕層は、欧米などに行って、大きな手術などの治療を受けているそうです。
現地の人が入っている保険もあり、簡単な病気や薬には保険がききますが、全ての医療をカバーしているわけではないので、日本で海外保険に入ることをお勧めします。
執筆者:Y.K
執筆年月:2020年12月