海外社会貢献者からのメッセージ
Q. 世界を活動の場とする社会貢献者にとって、この国はどのような場所ですか?
私は、韓国の首都ソウルでボランティア活動をおこなっています。
ソウルとソウル近郊を含めた首都圏に全国民の半数が住んでおり、近代的な高層ビルや建築物がある反面、古宮や露店市もある魅力的な都市です。海外からの観光客で賑わい、観光地は様々な言語が飛び交っています。
私がこれまで行った活動は、観光地や駅で旅行者への道案内、結婚移民者の方と一緒に子供の健康診査の同行・通訳などがあります。
ボランティアに関する行政の制度化と民間の取り組みはどちらも高い水準にあります。様々な市民団体があり、多様な活動分野から、または身近な地域から選んでボランティア活動を行え、学生から年配の方まで活動しています。ボランティア活動は日常の一部となっています。
文化
Q. 現地の人々の気質や考え方にはどんな傾向がありますか?
熱意と行動力があり、諦めない精神があります。
何かを変えなければ・おかしいと思ったら、署名運動やデモを行い、それに伴い比較的早く法律が変わったりします。
また、私たちという意味の「ウリ」が会話でよく聞かれるように、国民全体が1つの家族のようです。初対面でも、 あたかも家族のように話しかけてきたりします。町全体で子供を育てている感じです。ありがたいと言う反面、おせっかいと感じるほど押しが強いこともしばしばあります。
そして、物事はゆっくり丁寧にというよりは、早く早く(パリパリ)というスピード重視文化です。信号が青に変わりすぐ発車しないとクラッションの嵐、バスも自分が下りるバス停の1つ前から準備しておかないと、ドアが開いたと思ったらすぐ閉まってしまいます。良い面としては、配達やデリバリーがすぐきます。
でも、面白いことに待ち合わせでは話が変わります。待ち合わせ時間に相手がこないので連絡すると、「あと少しでつくよ~」「近くまできたよ~」と言いますが、実は家を出たばかりだったり、ひどい場合は準備中だったりもします。これは、時間を短めに言うことで相手に待ち時間を短く感じてもらおうという気持ちがあるからだそうです。待ち合わせに遅れている人が上記の言葉を言ったら、どこにいるのか、あとどれぐらいかかるかを具体的に聞くほうがいいかもしれません。
自分の気持ちをストレートに表現します。聞き流せる耳と強い心が必要かもしれません。
Q. 現地の食文化はどのようなものですか?
挨拶のかわりに「ご飯食べた?」と聞くほど、食を大事にします。
主食は米で、汁物と数種類のおかずが基本で、おかずが多ければ多いほど良いとされます。ほとんどの食堂では、おかずは無料でお代わりできます。年々、海外の料理も入ってきています。
料理には、 基本的に赤唐辛子粉かにんにくが入ります。にんにくが嫌いな知り合いは、飛行機を降りた瞬間からにんにくの臭いがして無理だったと言っていました。辛くない料理は沢山あるので、にんにくの好き嫌いが韓国料理を食べられるかのカギになりそうです。
他の国で知られている韓国の代表的な食べ物に、キムチと韓国焼肉があります。一言にキムチと言っても、主材料の種類や形態、副材料の種類や使い方によって色々です。また、作る時期や作る人により味が違うので、味比べしてみるのも楽しいかもしれません。
また、韓国焼肉はサンチュなどの野菜で包んで食べますが、これは焼肉だけにかかわらず、焼き魚や他の肉料理、時にはご飯だけでも包んで食べます。野菜不足にはならないと思います。
Q. 現地の人々はどのような生活習慣や宗教観を持っていますか? 現地特有のマナーなどはありますか?
宗教の自由が認められているので、国教はありません。
キリスト教(プロテスタントとカトリック)と仏教が多く、仏教・キリスト教の放送局や新聞があり、布教活動やボランティア活動に熱心です。
儒教は、宗教というよりは生活習慣・社会常識として日常に入り込んでいます。例えば、食事の際、年長者が箸をつけたのを確認した後に食べ始めます。飲酒をする場合は、両手(片手で持ち、もう片方を添える)で注いだり受けたりし、年長者に対して体や顔を少し横向き、口元が見えないように手で隠して飲みます。お会計をするときも、渡す手にもう片手を添えて渡します。
食事のマナーなどで分かるように、上下関係がはっきりしています。1歳の差でも、「お兄さん」「お姉さん」と呼び、相手が許可したり、よほど親しくなったりしない限り敬語で話します。年齢が上下関係を決定づける要素となるので、初対面の時に「何歳なのか?」とストレートに聞かれます。韓国は数え年で歳を言うので、突然で計算ができない場合、西暦で何年生まれだと答えるといいでしょう。
最近では、敬う気持ちが薄れてきていますが、基本的には、年長者・社会的地位の高い人・お年寄り・親を敬い、意見に直接的に反論したりはしません。
気候
Q. 現地はどのような気候ですか? 健康維持のために気を付けるべきことはありますか?
韓国も四季があります。1年を通して温度差があり、私が経験したのは最低-15度、最高39度でした。
春は 桜も咲き長い冬の幕開けですが、暖かい日は偏西風に乗って来る黄砂やPM2.5の影響で空気が悪く、のどが痛くなったり目がかゆくなったりします。マスクが必要です。
梅雨も1か月ほどあり、2020年は豪雨が続き床上浸水、土砂崩れが多く生じました。
夏は、日差しが強く湿度もありますが、日本(熊本と比較)よりは湿度が少ないため少し過ごしやすいかもしれません。帽子、傘が必要です。
秋はあっという間に終わります。紅葉シーズンは紅葉狩りや山登りをする人が多くなります。
四季の中で冬が一番長く、ソウルの12月から2月は平均気温が氷点下です。室内はオンドルや暖房が効いているため温かいですが、乾燥するので加湿が必要です。外出する際は防寒をしっかりしていないと、寒いというより痛いです。雪が降った後は滑りやすいので、ポケットに手をいれて歩くと滑って倒れる時支えられないので注意が必要です。
Q. 現地特有の風土病はありますか? 健康維持のために役立つ対処方法はありますか?
基本みんなで、同じ皿や鍋を直箸で突っついて食べるので、A型肝炎とB型肝炎の予防接種をされることをお勧めします。
比較的安く登録できるスポーツセンターや「ヘルス」と呼ばれるジムで運動したり、漢方を飲んだり、カッピングやチムジルバンなど、韓国には体に良いとされるものがたくさんあります。また、首都圏内でも山登りができますし、日常でもよく歩きます。自分の生活スタイルにあわせて、いろいろ試してみる価値があります。
言語
Q. 現地の人々はどのような言語を用いていますか? 外国人にとって、現地の言語を学ぶ際に、どんなハードルがありますか?
公用語は韓国語です。
文字は、ハングルを用います。ハングルは、母音10・子音19・複合母音11の、計40を組み合わせた表音文字です。元々、漢字で存在している単語をハングル文字に置き換えているものが、単語の7~8割を占めています。
日本人にとって文の構成の仕方が同じこと、漢字に親しみがあることで、比較的習得しやすい言語ではないかと思います。ただ、発音が似ているものが多いので、韓国語を話しているつもりでも日本語の発音を入れてしまうこともあります。
生活
Q. 現地の人々の生活水準はどうですか?
貧富の差が激しいです。家を何件も持ち、高級車に乗り、海外旅行にしょっちゅう行く人がいる反面、駅のホームなどで寝起きするホームレスが物乞いをしている場面に遭遇します。ソウル市がホームレスに短期家賃を支援したりして自立支援活動を行ったり、教会や市民団体などが炊きだしや移動入浴のボランティア活動を行っています。
2011年頃に恋愛・結婚・出産を放棄する【三放世代】、2014年頃は三放棄に加え就職・マイホームを放棄する【五放世代】、2015年はさらに、人間関係・夢をあきらめる【七放世代】、そして最近はすべてをあきらめる【N放世代】と言われるほど、生活が難しくなっていっているようです。
最近は、政府が最低賃金を底上げし低所得者の生活水準を上げようとしていますが、物価が上がったり、中小企業が人件費を削ろうとするため失業者が増えています。
Q. 現地の人々の教育水準はどうですか?
韓国は、学歴社会です。学問を究めるためではなく、良い大学を出て、良い企業に就職し、良い暮らしをする為なので、幼稚園~高校までの教育熱が高く、習い事や塾に投資を惜しみません。
同じ年の1月生まれから12月生まれが同学年として進級する6・3・3・4の教育課程で、2学期制です。
小・中学校は原則として住んでいる地域の学校に通うのですが、教育の質が良いとされる学区に人が集まることにより、教育水準の格差が広がって 「富む人はどんどん富み、貧しい人はますます貧しくなる」と言われています。1997年から小学校3年生からの英語が必須化され、語学習得のため早期留学させる親もいます。
高校進学率はほぼ100%で、そのうち70%を占めている一般高校は学区内の学校から推薦で決定されます。
11月中旬に行われるスヌン(修学能力試験)では、遅刻しそうな学生を白バイやパトカー、ボランティアの運転手たちが試験会場に送り届けたり、英語のリスニングテスト中は飛行機やクラクションなど騒音禁止したりという、国全体での協力体制を敷いています。しかし、激しい受験戦争を生き残り、国内最高峰と言われるソウル大学を卒業しても、就職率は7割ほどです。
Q. 現地の治安水準はどうですか? 外国人が特に気を付けるべきことはありますか?
比較的安全ですが、女性一人の夜道は危険です。夜遅く帰宅する女性のために、女性安心帰宅サービスがあります。申請した場所(地下鉄駅)に、黄色い制服を着た人が約束の10分前から待機していて、身分証明書を確認したのちその人と一緒に帰宅するサービスです。
また、マウル(駅から町内を巡回する)バスも夜10時以降は、バス停でなくても女性・お年寄り・学生が望む場所で降りることができます。比較的安全だとは言え、人気のないところに行かないことや、 特に夜は注意して行動する必要があるでしょう。
Q. 現地の住居や住環境の様子どうですか?
1人で暮らすには、ワンルーム、オフィステル、そしてコシウォンと呼ばれるものがあります。
ワンルームは名前の通り1つの部屋です。場所により、家具がついている場合もあります。
オフィステルはオフィス+ホテルの造語で、セキュリティーがしっかりしており、電化製品、家具付きです。管理費がワンルームより高くなります。
コシウォンは、元々は勉強に集中するための小さな部屋で、机・ベッドがあり、あとは共同で使用するのが基本です。光熱費、ネット代、ご飯・キムチ・ラーメン・海苔などが家賃に含まれています。最近は、部屋が広く、トイレ・シャワー・ミニ冷蔵庫付きのものもあります。
また、学生街だと下宿もあります。
家族で住むなら、アパート(日本でいうマンション)、ヴィラ(4階以下の建物)、一軒家があります。
アパートが1番人気です。警備員が常駐し、敷地内に公園、散策路などがあります。大きなアパート団地になると図書館、ゴルフ練習場、プール、ジム、ゲストハウス、キッズカフェ、さらには映画館まで併設されているところもあります。
ヴィラは、アパートよりは格安で借りることができます。最近は「アパートなんか羨ましくない」というコンセプトで、おしゃれで設備の整っているところが増えてきています。
一軒家はソウルでは金額が高く件数も少ないですが、地方に行くとおしゃれで広い一軒家が多くなります。
上記の住居は、分譲、または賃貸で借りることができます。賃貸と言っても、方法が大きく分けて2つあります。
1つは、ウォルセと言われるもので、少しの保証金を預け毎月家賃を払う方法です。保証金の金額を大幅に上げて預ける代わりに月々の家賃を下げてもらえるよう大家さんに交渉することも可能です。
もう1つは、チョンセと言われるもので、月々の家賃が無い代わりに、契約時に家を買うのに近い沢山の保証金を大家さんに預ける方法で、退出時に保証金がまるまる返ってきます。大家さんは契約期間内に預かった保証金を運用することで、利益を得ることができるからです。例えば、銀行に預けるなら5~10%の利子がついていました。しかし、最近は利子が低くなったことや多住宅者(複数の住宅を所有する人)に対しての税率が上がったりしたことで、チョンセは減少の傾向にあります。
どちらで契約するにしても金銭トラブルを避けるため、契約時には現地の方に同席してもらうのが良いでしょう。
また、屋根部屋・半地下・地下は家賃が安いですが、夏は暑く、冬は寒く、セキュリティーが甘かったり、日差しがほとんど入らなかったりするためカビが生えやすいなど、安いのは安いだけの理由があります。健康のことを考えるとあまりお勧めしません。
Q. 現地の生活インフラ(水道・電気・ガス・インターネット)はどの程度整っていますか?
インフラは整っています。
自然災害以外で断水・停電はありませんが、たまに夏場にクーラーをみんなが使用するため、年数がたったマンションで停電が起こりニュースになることがあります。
インターネットの通信速度は世界一で、ソウル市は公共無料Wi-Fiもあちらこちらで飛んでいます。カフェやレストラン、病院、バスなどにもWi-Fiが飛んでいて、パスワードが必要な場合でも、お会計するところやレシートなどにパスワードが書いてあるので、入力し使えます。
Q. 現地のレストランやファーストフード店、露店など食品を扱う店の衛生状態はどうですか?
年々良くなっています。
最近は、法律が厳しくなったり、SNSの普及ですぐ拡散されてしまったりするので、どのお店でも衛生面には気を付けています。特にコロナが流行ってからは、 客が飲食時以外にマスクを着用していない場合、マスクをしなかった本人は1万円の罰金、そして店も30万円の罰金が科せられます。
露店は業態の関係上、他の飲食店よりは衛生状態が落ちます。春はPM2.5(黄砂含め)の影響で空気が悪く、夏は食中毒の危険もあるので、回転の速いお店を選び、生ものを避け、体調が悪い時は食べないようにしたほうがいいかもしれません。
Q. 生活に必要な安全な飲用水はどのように調達しますか?
ソウルの水は国際基準で認定された安全な水です。
しかし、家に届くまでの水道管の劣化などから、一般家庭では水道水を直接飲みません。浄水器や浄水フィルターを設置するか、マートで水を買います。マートは3万ウォン~5万ウォンほど購入すると、配達してくれるサービスがあります。水や米など重いものはまとめて購入すると楽です。
Q. 現地の交通事情や交通機関の様子はどうですか?
首都圏は車が無くても、電車、バスなどの公共交通機関、自転車や電動キックボードのレンタルがあちらこちらにあり、どれも安く利用できます。例えば、T-moneyというチャージ式の交通カードを使い地下鉄に乗ると、10kmまで1250ウォン(118円ほど)、10~50kmまでは5kmごとに100ウォン(9円)、50kmを超過すると8kmごとに100ウォン追加です。また、地下鉄とバス間の乗り換えを30分以内(21時以降から翌朝7時は1時間内)にすると、基本料は無料になります。
地方で生活するなら、車かバイクが必要になるでしょう。
Q. 現地の医療水準はどうですか? 医療費は高額ですか?
医療水準は技術、施設共に高水準です。
ロボットなどの先端医療技術導入により。治療の成果が向上し、主ながんの死亡率は低下し、生存率は上昇しています。生体肝移植、肝臓移植などで世界トップレベルの成功率です。自国で治療が困難なため韓国を訪れる患者が年々増え、今までに190カ国の人たちが訪れています。
2019年から、半年以上韓国に滞在する外国人留学生に対し国民健康保険への加入が義務付けられています。国民健康保険に加入している場合、医療内容により負担額が変わりますが3割~5割負担です。もし未加入で全額負担の場合でも、風邪などの診察では日本で3割負担した時とほとんど金額が変わりません。しかし、緊急病院など大きな病院にかかると金額が跳ね上がるので、もしもに備え、海外保険に加入して来たほうが安心です。また、歯科は高いです。虫歯は全部治療して来ることをお勧めします。
薬局もいたるところにあり、コンビニでも頭痛生理痛薬、風邪薬、二日酔いの薬、消化剤などを安く購入できます。しかし効き目が強く、合う合わないもあると思うので、常備薬を持っていかれることをお勧めします。
執筆者:HARUI
執筆年月:2020年12月