海外社会貢献者からのメッセージ
Q. 世界を活動の場とする社会貢献者にとって、この国はどのような場所ですか?
マダガスカルはアフリカ大陸の地図でみると南東に位置するインド洋に浮かぶ島国です。国土は日本の1.6倍あり、世界で4番目に大きな島国です。
この島国はアフリカでありながら、アジア・アラブ・ヨーロッパなど様々な国の文化を取り込んでいるユニークな国です。日本と同じく海に囲まれた島ですので、水産資源が豊かで、同時に天然資源も豊富な国です。独特の野生動物(ワオキツネ猿、カメレオンなど)やマダガスカルを象徴するバオバブの木などが有名で、観光面でも経済発展の可能性が高い国です。
その一方で労働人口の約70%が農業に従事しているにもかかわらず、その全ては手作業、つまり機械を一切使用していないので、農業生産性が低いことやインフラ未整備が課題です。ですから、マダガスカルはいまだに世界の最貧国の一つで、特に農作業・医療・衛生・栄養状態の改善などを直接サポートするボランティアと知識や情報を配信していくボランティアが求められています。
マダガスカルの子供達の半数が現在でも慢性的な栄養不良で、子供達の心身の健全な成長が難しい課題のひとつです。
私が活動している首都のアンタナナリボではフランス植民地時代の名残がある建物が多く立ち並び、高台からざっと眺めると一見ヨーロッパを思わせる美しい景色が広がります。そして、アンタナナリボの中心街から車で20分も行くと田園風景が広がり、遠くに立ち並ぶ洋風の家々を眺めることができます。
街の中心には色とりどりのテントが並び、たくさんのマーケットで郷土物・衣類・雑貨・食べ物などを道や階段で売っていて、毎日多くの人々で賑わっています。とても楽しい場所です。そうしたマーケットを観光で訪れる外国人はたくさんいます。そして、街の中を歩いていくと建物の間になんとか人がすれ違うことができる細い路地や階段が至る所にあって、その小道の奥にひしめき合うようにレンガ調の家やトタン屋根の小さな家、また一本別の路地に入ると突然バラック小屋のような簡素な家が立ち並びます。そうした路地には日中でも外国人だけでは通らない方が安全です。
文化
Q. 現地の人々の気質や考え方にはどんな傾向がありますか?
マダガスカル人は大人しい性格の人が多いですが、とてもフレンドリーで、子供から大人までみんな音楽が大好きです。どのバスに乗ってもリズミカルな音楽がかかっています。そして、音楽に合わせてダンスをするのも大好きで、そのリズムの取り方やテンポの速い曲は言語を超えて人を陽気で楽しい気持ちにさせてくれます。
私が知っているマダガスカル人はほとんど皆さん歌がとにかく上手。音楽がかかると、とても素敵な高い声で歌ってくれます。ところが、(日本人にとっては)話し声は皆さん小さくて聞こえにくいです。マダガスカル人は耳が凄く良いので、彼ら同士はコソコソと話した声もしっかり聞こえています。
私が最初にびっくりしたことは、一番前の席の人がバスを降りる時に物凄く小さな声で「次に降ります」と言ったのですが、車掌さんは他の人と一番後ろの席で話しに夢中で、これはさすがに聞こえてないだろうなと思っていたら、実は聞こえていたということがありました。とにかく耳が良くて視力も良い。近視で眼鏡をかけている人はいることはいますが、基本電気がない家が多いので真っ暗な場所でも夜行性のように色々と見えているようです。(笑)
マダガスカル人の貧困率が高い理由の一つは貯蓄の概念がない事です。お金が無くなると働く。なので、雇い主がもし日払いにしてしまうと、次の日待っていても働き手は誰も来ないことになります。そして彼らは数日後お金が無くなると働きに来る、という感じです。月給で働く人達も、月末の給料日に給料を全て銀行から出してすぐに使ってしまい、次の月の中頃にはお金が尽きて困る、という生活スタイルのようです。毎月の給料を計画的に使うということが苦手なようです。
Q. 現地の食文化はどのようなものですか?
ほとんどの家庭に水道はありません。各コミュニティーに数ヶ所水を汲む場所があり、列に並んで水を買います。外国人が住むような家には基本的に水と電気は通っていますが、地区によっては毎日のように停電や断水が数分あります。
マダガスカル人の一般的な生活レベルの家庭では七輪・暖炉などを使用して「炭」で煮炊きしますので、火を起こすのに時間がかかります。ですから、サッと作る炒め物料理はほとんど作りません。マダガスカル料理はじっくりと油で揚げたものや鍋で長時間肉や豆を煮込んだものが多いです。
主食はお米です。とにかくお米を食べる量は凄いです。日本人の数倍の量のお米を食べます。少しの副菜に大量のお米を食べるスタイルなので、マダガスカル料理の副菜は比較的塩辛い味付けになっています。お米はパサパサしているので煮物の塩辛いスープをご飯にかけながらスプーンとフォークで食べます。
野菜は日本と似たものが大抵揃いますが、調理法が限られているのと野菜ではお腹が膨れない理由で好まれず、慢性的に栄養不足な人達が多いように感じます。炭水化物のみでお腹をいっぱいにすることが優先されています。
ですが、甘いものが好きな人が多くて、「ムフガシ」を売っている店がとても多いです。「ムフ」はパン、「ガシ」はマダガスカルという意味です。米粉と砂糖をこねて油で焼いたり、揚げたりした丸い食べ物です。それを食事代わりに食べる人も多いです。値段は一つ200アリアリ(6円位)で、モチモチしていて美味しいです。
コーヒーは道のあちこちで樽のようなものに入れて売られていますが、小さめのコップ一杯100~500アリアリ。小さなスプーンで練乳を3~6杯入れて飲むのが普通です。
生野菜や果物は必ず消毒してから食べますが、それでもなかなか死なない見えないサイズの小さな寄生虫がいるそうです。虫下しの薬がフランス系の薬局(あちこちにあります)で売ってあります。1日一粒を3日連続服用で6ヶ月の効果があり、1粒8,000アリアリです。
Q. 現地の人々はどのような生活習慣や宗教観を持っていますか? 現地特有のマナーなどはありますか?
半分以上がキリスト教で、その他は伝統宗教やイスラム教などです。
首都のアンタナナリボでは少し歩くと大小様々な教会の建物を目にします。国の祝祭日は主にキリスト教に関連したもので、日本人にはあまり馴染みのない様々な祝祭イベントが開催されます(復活祭、マリアの昇天祭など)。最近ではイスラム教のインド系の人も増えてきたので、イスラム教の祝祭日も国の祝日として増えてきたそうです。そうした祝祭日は人々の大移動があり、早朝から車の渋滞があります。
毎週末も早朝からあちこちにあるキリスト教の教会でミサなど集まりが行われていますので、正装姿の人達が流れのように往来しています。
貧困故に物を盗むことが頻繁に発生しますが、物を盗んでも10分の1を牧師に渡して懺悔するなら神は許してくださると多くの人は信じているので、毎週懺悔をする為に通う人も少なくありません。また、南アフリカなどから多くの教会がビジネスとしてマダガスカルへ来ています。
気候
Q. 現地はどのような気候ですか? 健康維持のために気を付けるべきことはありますか?
アンタナナリボは内陸部の高地の為、年間を通して温暖で夏でも涼しく過ごしやすいです。
11月〜4月は雨季で、夏の最高気温は27度位。毎日のように夕方には一時間程雨が降ります。5月〜10月は気温も20度前後で、ほとんど雨も降りません。年間を通してほぼ毎日真っ青な青空に恵まれています。
海岸沿いは高温多湿な所もありますが、それでも最高気温は30度止まりです。
Q. 現地特有の風土病はありますか? 健康維持のために役立つ対処方法はありますか?
アンタナナリボではあまり見られなくなったのですが、田舎の街ではまだまだ伝統宗教の影響で毎年10月〜11月に亡くなった人の墓を掘り起こす習慣があり、その時期にペストが流行しています。マダガスカルのペストの流行は世界的に有名です。しかし、ネズミの多い貧困街で生活しない限り、通常の日本人滞在者が感染する可能性は少ないです。
海岸沿いでは蚊が多いので、マラリアも毎年多くの人を悩ませています。涼しい高地のアンタナナリボではマラリアの発生は非常に稀だといわれています。
しかしながら、アンタナナリボに住むほとんどの外国人が必ず悩まされるのがイエダニやノミです。対処法は、現地のペットショップやスーパーで手軽に手に入る駆除薬粉を使い、まずは衣服をつけ置きしてから洗い、次にベッドなど木を使っている家具や床に撒いて掃除機で掃除する、という方法です。
日本から持ってきたダニシートや殺虫剤は多少の効果はありますが、痒み止め(軽いもので良いのでステロイド系)は必須です。とにかくめちゃくちゃ痒いので。1〜2年間、数十ヶ所噛まれ続けていくと免疫がついて噛まれても腫れなくなって痒くなくなります。そこまで我慢すれば耐性ができてびっくりするほど噛まれても平気になります。なお、マダガスカル人は赤ちゃんの頃から噛まれている為、大人になると既に耐性があるので平気なようです。
言語
Q. 現地の人々はどのような言語を用いていますか? 外国人にとって、現地の言語を学ぶ際に、どんなハードルがありますか?
公用語はマダガスカル語、フランス語です。英語は挨拶程度以外ほとんど通じません。
数年前よりJICAなどのボランティアや日本の企業がマダガスカルの国土開発に資する援助をしています。そうした関係でマダガスカル全土には現在140人程の日本人が暮らしていますが、圧倒的に中国人が多いので、わたしたちはよく『ニーハオ!』と声をかけられます。
基本的にマダガスカル人は日本人と似てシャイな性格ですが、アジア人を見かけると珍しがってニコニコと『マナウォーナ』『サラーマ』と声をかけます。現地語で「こんにちは」という意味です。時には日本語で『こんにちは』と気軽に話しかけてくれることもあります。
アンタナナリボには多くの中国人・インド系の人が来て商売を盛んに行っています。彼らは日本の100円ショップで購入するような商品から衣類・家具・寝具などを中国やインドから輸入して商売していますので、そうした店舗で働くために中国語を学習したり、あるいは日系企業(現在は13社)に就職する為に日本語を学んだりしているマダガスカル人も結構います。日本語ボランティアは求められています。
中国語は『孔子学院』があり、マダガスカルで生まれ育った中国人の子供達と共に中国語を学んでいるマダガスカル人もいます。
マダガスカル語を学ぶ点でのハードルとしては、まず文法の大きな違いが挙げられます。例えば英語のSVOがVOSとなります。主語が最後なので、日本人にとって慣れるまではとても難しく、最後まで話を良く聞く必要があります。次に、フランス語版のものはあるとは言え、マダガスカル語学習の教材が少ないことです。最後に、ローマ字表記なのですが、独自の発音があります。書き言葉と話し言葉の違いや発音の違いもたくさんあります。例えば、「どう思いますか」は「lnona no hevitrao?」ですが、書き言葉では「イヌナ ヌ エビィチァウ?」と読みます。しかし、会話では「インナ ヌ エビィチァウォ?」と言わなければなりません。
生活
Q. 現地の人々の生活水準はどうですか?
アンタナナリボの80%が露天業で生活しています。会社に雇われている人はとても恵まれたフルタイムの仕事になりますが、そうした仕事でも1か月30万アリアリ(9,000円)で、一般的には平均10万アリアリ(3,000円)です。
外国人が使用する生活用品はとても高価な物になります。トイレットペーパーや食用油などは日本より高めです。地元の露天で生鮮食品を購入して完全に自炊すると、食費は1か月夫婦で50万アリアリくらいです。もし全てフランス系のスーパーで生鮮食品を買うと、その2倍はかかります。
Q. 現地の人々の教育水準はどうですか?
マダガスカルでは、子供をたくさん産んで働いてもらう、という考えがあります。貧困層の子供達は5歳くらいで弟や妹を背中に負ぶって子守をしています。商売をしている親と一緒に店で働くのはまだ恵まれている方で、親は家でくつろいで、子供達が7―8歳になると一人で又は兄弟姉妹で早朝から道に立ちお金を物乞いする「仕事」をさせられている子たちもいます。これは、親が働くより稼ぎが良いからだそうです。
ここでは、学校に行ける=そこそこ裕福な家、と言えます。貧困層の子供達はほとんど年中裸足。子どもたちの足を見て、もしその子がサンダルではなく靴下や運動靴を履いていると、学校に行ける裕福な子供、と直ぐに見分けがつく程です。もちろん富裕層向けのフランス系の学校、中国系の学校もいくつかあります。
マダガスカルの教育は主に暗記教育だそうです。マダガスカル人が想像したり思考を働かせて何かを作ったりすることが苦手というところは、その影響を多少受けているのかもしれません。ですが、マダガスカル人はとても手先が器用です。彫刻品や洋裁などの分野でとても素晴らしい能力を持っていると思います。
Q. 現地の治安水準はどうですか? 外国人が特に気を付けるべきことはありますか?
国民の80%近くの人達が1日1.9ドル以下で生活しています。極度の貧困状態なので、人混みの中、特にバスの中で、携帯電話やカメラなどは絶対に出してはいけません。荷物は必ず身体の前に置きます。
街の中心にある大通りに面したマーケット街ではスリや盗難が多発しています。そこを訪れる時には、貴重品はなるべく持たずに、小さめの鞄を胸の前に持って歩くのが良いです。私は鞄にバネのついたキーホルダーを固定して携帯や電子機器を持ち歩いています。一度、バスの中で盗まれそうになりましたが、キーホルダーが邪魔して相手が諦めてくれました。
マダガスカル人はスリが得意ですが、真っ向から襲って来るほどの強引さはありません。なので、ポケットなど見える所に貴重品を入れたりしないことと大きな鞄を持たないことなどに気をつけていれば、大丈夫です。
そして、基本的に日暮れからの外出は避けた方が良いです。特に観光で訪れる方が夜に食事などでホテルからほんの数分の所を歩いていて強盗に襲われる事件が発生しています。夜の外出はとても危険です。大抵ホテル内にレストランがあるので、夜はそこで食事をとるのが賢明です。
Q. 現地の住居や住環境の様子どうですか?
外国人が住む住宅はとても綺麗で豪華な印象があります。フランス人の基準で建築されたコンクリートの建物はお洒落でセキュリティーもしっかりしているので安心です。アンタナナリボの中心から5キロ程離れれば2LDKから3LDK家具無しが日本円で45,000円前後、家具付きは55,000円~です。現地の人の住んでいるようなレンガ調の家で(水道、電気がある)1DK家具付きなら35,000円~探せます。
Q. 現地の生活インフラ(水道・電気・ガス・インターネット)はどの程度整っていますか?
基本的に外国人が住む家では、水道・電気・ガス・インターネットはすべて問題なく使えます。水道・光熱費代は夫婦使用で1ヶ月平均2,500~3,500円程度です。インターネットは光が一番安定していて無制限/1ヶ月8,000円位で結構高めです。他にもルーターで接続するマダガスカル系、フランス系などいくつかのネット会社があり、私達は夫婦で50G/1ヶ月4,900円位で不自由なく使っています。Zoomも可能です。
Q. 現地のレストランやファーストフード店、露店など食品を扱う店の衛生状態はどうですか?
首都のアンタナナリボは人口200万人以上の大都市ですが、ゴミの回収、下水道などのインフラ整備が進んでいないので、非衛生的な面が多く見られます。あちこちにあるゴミ置き場はいつも山積みで悪臭がします。
ですから、衛生面から言いますと、露天などでの外食はあまりお勧めできません。フランス人や中国人が経営するレストランも多く、そうしたレストランでの食事は問題なく楽しめます。(1人10,000アリアリ~)
もちろん、日本人の衛生基準と比べると差はあるものの、マダガスカル人は綺麗好きな人が多いように感じます。小さなお店の人達も洗った器を大抵は消毒液につけてから片付けていますので、大きな食中毒などの経験ありません。
Q. 生活に必要な安全な飲用水はどのように調達しますか?
都市部は上水道が塩素消毒されていますが、配管の老朽化などの為、水は大抵薄い茶色です。数分勢いよく出し続けると見た目は透明になりますが、そのまま飲用するのに適していません。
現地で簡易式フィルター浄水器が7~10万アリアリ(2,100円~3,000円)くらいで手軽に購入できます。その浄水した水を必ず一度沸騰させて飲みます。
外国人の中には毎回スーパーでペットボトル水をまとめ買いされる方もおられます。(1.5L 45円位~)
Q. 現地の交通事情や交通機関の様子はどうですか?
マダガスカル人にとって車やオートバイなどは比較的高級な為、富裕層のマダガスカル人か外国人のみ購入可能です。
公共のバスは『タクシベ』と呼ばれています。これは「タクシー」の後に、現地語で大きいという意味の「ベ」を付けた単語で、「大きいタクシー」という意味です。一回500アリアリ(15円)です。
アンタナナリボにはこのタクシベが至る所を沢山走っています。そのほとんどはフロントガラスが割れていたりヒビがあったりするようなバスです。2人席が両側にあり、混雑すると真ん中の補助席を使います。大抵30~40人乗りの大きさです。法律上立って乗る事は違法の為、席がいっぱいになると乗せてもらえません。夕方の通勤ラッシュはバスも混雑しますので、次々とバスが来ても乗ることが難しく1時間以上待つこともしばしばあります。
また、道路のほとんどが石畳道や整備されていない道の為、通勤ラッシュの時間帯は渋滞がひどくて通常30分の距離を2〜3時間かけて移動する事になります。それで、最終的に5キロ程の道のりなら歩く方が早いこともあるので、徒歩を選択することもあります。
他には海外から輸入した車やオートバイがありますが、街で見かけるタクシーやタクシベの車両は40~50年前のものが多いです。その排気ガスのせいで、アンタナナリボの大気汚染が深刻な問題となっています。実際、慢性の咳や呼吸器系の疾患に悩む人が少なくありません。その反面、それら古い車を繰り返し修理して乗っているので、私達にはとても懐かしい車に出会えることもあります。
先に少し触れましたが、道路事情はとても悪くて、狭い道路を人が行き交い、物乞いがお金を求めてきたり、車が行き交う場所でも物売りが近づいて来たりするので、運転するのはとても危険です。初めてマダガスカルを訪れる外国人がレンタカーを借りて車に乗るのはお勧めしません。車を購入しても慣れるまでは、マダガスカル人の運転手付きで使用するのが賢明でしょう。
Q. 現地の医療水準はどうですか? 医療費は高額ですか?
マダガスカルは1970年代からの社会主義政策の名残で、公立病院は非常に低額な料金で受診可能です。しかし、薬・注射器などの道具まで患者側で用意する必要があります。食事も各自で準備する必要があります。公立病院は大学病院でさえも老朽化しており、医療器具は古い上に十分ではなく、治安の問題もあり、日本人が利用できる環境ではありません。
アンタナナリボ市内には比較的設備の整った私立病院があり、X線撮影・内視鏡検査・エコー検査・血液検査が可能です。しかし、CTやMRIは数ヶ所の医療機関にしかありません。さらに、たとえあっても故障中だったり、雨季には落雷・停電による機器損傷防止のために停止にしていたりする場合もあり、常に検査可能とは限りません。日本のような行き届いた診療やこまやかな看護は期待できません。
一般的に言葉はマダガスカル語とフランス語以外は通じませんが、キリスト教系の一つの施設には日本人のシスターがおられるようです。また、中国系の市立病院も小さいですがあります。
重症の場合は、国外への医療搬送を検討するしかありません。日本人は保険会社の判断により、南アフリカやパリ等への緊急搬送になる可能性があります。私立病院では入院前に高額なデポジットを要求されます。
執筆者:門田 規加
執筆年月:2020年8月