海外社会貢献者からのメッセージ
Q. 世界を活動の場とする社会貢献者にとって、この国はどのような場所ですか?
日本人には認知度が低いニカラグアですが、まだ多くの自然が残り多様性に富む人々が住む魅力的な国です。
在住する日本人は少ないですが、これまで橋の建設や医療機器、ゴミ収集車の寄贈など多くの日本人がニカラグアの発展のために働いてきました。そのため、ニカラグアの多くの方が日本人に感謝していると口にしています。
日本製品や日本のアニメが人気で、日本の文化に興味を持っている人も多く居ます。ニカラグアには日本大使館もあり、渡航の際には様々なサポートを受けることも出来ます。
文化
Q. 現地の人々の気質や考え方にはどんな傾向がありますか?
小さなことは気にしないおおらかな人、親切な人が多いです。
個人差や地域性はありますが、外国人と接することに慣れていない人が多く、あまり自主的に近づかないシャイな部分もありますが、こちらが笑顔で声を掛けるなら、すぐに打ち解け仲良くなることが出来ます。
ラテン気質も合わせ持っていて、情熱的、感情的な面もあります。友達や家族と集まってパーティーをし、ダンスをすることが大好きです。
年齢に関わらず、自分の意見をはっきりと発言出来る人が多い印象です。
Q. 現地の食文化はどのようなものですか?
主食は、米、赤豆、トルティーヤ(とうもろこしの粉を水で溶いて薄く焼いた円状のもの)です。この主食全てを一度に食べることが多いです。大抵の場合、主食、メイン、副菜がワンプレートで出てきます。
ニカラグアでは主に、昼食が一日のうちのメインだと考えられていて、昼に肉や魚を食べます。大きく切った肉や野菜がたっぷり入ったスープもメイン料理として好まれています。よく食されるのは安価な鶏肉です。朝食と夕食は、ガジョピントと呼ばれる煮た赤豆とご飯を油で炒めた日本の赤飯によく似た料理と、トルティーヤやチーズ、卵等です。
旬の時期には、南国のフルーツを安く手に入れることが出来ますが、商店街や道端で買う際は外国人という理由で値を上げられることがありますので、注意が必要です。
数少ないですが、都市部にはファーストフード店もあり、現地の人にも人気です。ニカラグアでは、外食の際にチップを払う必要はありません。
Q. 現地の人々はどのような生活習慣や宗教観を持っていますか? 現地特有のマナーなどはありますか?
朝早く起きて活動している印象があります。朝にシャワーを浴びる習慣や、朝7時から学校が始まることが大きな要因だと思います。午前3時頃から朝食用のトルティーヤを作って売るために働いている人もいます。
洗濯機がない家庭も多く洗濯は手洗いですので、朝は忙しくして過ごしています。洗濯機だけでなく炊飯器やガスコンロがない家庭もありますので、家事をするのに多くの時間が掛かります。
主な宗教はキリスト教です。宗教心のある人が多く、一家に一冊は聖書を持っていて、教会に通っている人も多くいます。挨拶の際には、「元気ですか」と尋ねられると、「元気です。神に感謝です」と答えることも信心深い人が多いことを表していると思います。
現地の独特のマナーは特になく、反対に日本ではマナーとされていること、例えば、列に並んで順番を待つということが殆ど見られませんので、初めは驚くことも多いかもしれません。
気候
Q. 現地はどのような気候ですか? 健康維持のために気を付けるべきことはありますか?
地域によって異なりますが、首都マナグアやその近くだと、乾季と雨季の2つに分かれます。一年のうち、5月から12月までが雨季で、残りの期間が乾季です。
一年中、夏のような気候で、特に乾季は日差しが強く気温が35度以上になることもありますので、熱中症にならないようにこまめな水分補給や日焼け対策が大切です。
ニカラグアでは舗装がされていない道路も多く、乾季には雨が全く降らなり、強風が吹いて砂ぼこりが立ちますので、呼吸器官に入らないように注意する必要もあります。特に、太平洋側の地域ではマナグア湖とニカラグア湖の影響により強風が吹くことが多いです。
雨季には、夜になると肌寒くなることもありますので、薄いブランケット等があると便利です。
Q. 現地特有の風土病はありますか? 健康維持のために役立つ対処方法はありますか?
蚊に刺されることによって感染するデング熱、ジカ熱、チクングニア熱があります。ニカラグアでは網戸がないお家がほとんどですので、自分で網を窓に付ける、ベッドに蚊帳を貼る等の対策が必要です。
外出する時には、蚊に刺されないように虫除けスプレーなどを使用するなど心掛けることが大切です。現地では、虫除けのクリームや蚊取り線香は手に入りますが、刺されたあとに使用する塗り薬などはあまり見かけないので、日本から持っていくことをおすすめします。
また、猛毒は持たない種類のサソリが生息していて、刺されても大事に至ることはありませんが、刺されないためにベッドを壁から離して置いたり(壁を這っていることが多いため)靴を履くときは中を確認する等の工夫も大切です。
言語
Q. 現地の人々はどのような言語を用いていますか? 外国人にとって、現地の言語を学ぶ際に、どんなハードルがありますか?
公用語はスペイン語で、カリブ海側ではクレオール英語とミスキート語も話されます。クレオール英語とミスキート語を母語とする人でも、ほとんどがスペイン語も話せます。
スペイン語は一部例外がありますが、ローマ字読みですので学びやすい言語かもしれませんが、男性名詞、女性名詞、RとLの発音、巻き舌など日本人にとって難しい面も多々あります。
世界にはスペイン語を公用語とする国が沢山ありますが、国によってイントネーションや使う単語が違うことがあります。ニカラグアのスペイン語は、sを発音しないこと、同じスペイン語を話すメキシコ人が聞き取りにくいと言っていた程ハッキリとは発音しないなどの特徴があり、耳が慣れるまで時間が掛かるかもしれません。ですが、片言のスペイン語でも、優しく一生懸命聞こうとしてくれる人が多いです。
生活
Q. 現地の人々の生活水準はどうですか?
土地や牧場を所有している人に富裕層が多い傾向がありますが、中南米最貧国の一つと言われているニカラグア、経済的に苦しい状況の人が多くいます。中には、道端やバスターミナル、露店等で物乞いを余儀なくされている人達もいるのが現状です。
ニカラグアは収入の割に物価が高いと言えます。食料品は大体、日本の三分の一から二分の一、生活用品は日本とほぼ変わりませんが、収入はフルタイムの仕事をして月約1万円程度のこともあるようです。そのため拡大家族が多く、家族で助け合って生活しています。
Q. 現地の人々の教育水準はどうですか?
小学校に当たる初等教育が6年間、中学・高校に当たる中等教育が5年間です。その後、大学・専門学校などの高等教育を受けることも出来ます。
ニカラグアの義務教育は初等教育の6年間ですが、現状としては家庭の経済状況ゆえに学校に通えない子ども達や小学校を中退する子ども達も居ます。そのため、若い世代でも識字率は100%ではありません。
学齢期の人数が多いため、大半の学校では7時〜12時の学年と、12時〜17時の学年に分かれて学校を使用しています。土曜、日曜は休みです。僻地に住んでいる生徒のために土曜日学校や、大人や様々な事情で学校に通えなかった人のために、平日の夜間も授業が行われている所もあります。
公立の初等教育、中等教育の学費は無料です。
Q. 現地の治安水準はどうですか? 外国人が特に気を付けるべきことはありますか?
2018年に反政府のデモがあり一時的に治安が悪くなりましたが、現在は落ち着いています。
ニカラグアは中南米の中でも治安は良い方だと言われていますが、首都マナグアのバスターミナルの近くや一部の市場等では昼間でも盗難事件が起きていますので、事前に情報を得てそういう場所には行かないことで身を守れます。
気を付けるべき点としては、特に首都では路上駐車をしないこと、車から離れる時は車内に貴重品を置かない、見える場所に何も置かないことがあります。家の窓際に物を置いていると盗られる可能性がありますので、注意が必要です。安全のため、家の窓や扉に格子が付いている物件を探すことをおすすめします。
Q. 現地の住居や住環境の様子どうですか?
ニカラグア全体では、一戸建てがほとんどです。
都市部ではアパートやマンションもあり、インターネット等で住居情報を入手できるかもしれませんが、その他の地域では不動産会社はなく、家主との直接契約になりますので、伝(つて)を頼りに住居を探す形が主流です。そのため、契約方法や家賃等は家主次第になります。外国人だけで物件を見に行くと値を上げられることも多々ありますので、現地の信頼出来る人と下見に行くことをおすすめします。
家賃が安いところですと、バス・トイレが室外、キッチンなし、天井がトタン屋根丸見えといった物件も多いですが、約一万円から外国人が安心して暮らせる家(格子付き、トイレ・シャワー室が室内にある等)を探すことができます。
ニカラグアのほとんどの地域が常夏ですが、クーラーの設備が整っている家はほとんどありません。ですが、家主との交渉次第では取付けも可能です。
多くの物件では修繕が必要なことが多いですが、家賃の数カ月分を前払いすることで整えてもらえることもあります。その場合はきちんと書面に記すことで、事前にトラブルを防ぐことが出来ます。
Q. 現地の生活インフラ(水道・電気・ガス・インターネット)はどの程度整っていますか?
都市部では整っていますが、その他では整っていない地域も沢山あるのが現状です。
水道が通っていない地域では、生活水に井戸水を使用したり、定期的に給水車が来て給水したりしています。水道が通っていても、2日に一度数時間だけ水道から水が出るといった地域もあります。そのような現状ですので、貯水用にタンクを所有している家庭が多くあります。特に、乾季に水不足が問題になることもあります。
電気は、僻地以外の場所ではほとんどの場所で使用出来ますが、電圧は不安定で度々停電があります。
インターネットも不安定な場所が多いですが、ニカラグアにある主な携帯電話会社2つのうちのどちらかのネットワークが大抵の場所で繋がります。
電話の通話は、契約などの手続き不要で、売店等でSIMカードを購入してお金をチャージするとすぐに使用できますので便利です。
Wi-Fiは携帯電話会社で契約が可能で、月5千円前後と割と高額ですが、クーテルという会社は利用できる地域が少ないのがネックですが、月2千円前後で使用できますので、滞在場所に合わせて検討出来るかもしれません。都市部のマクドナルドや一部のカフェでは無料Wi-Fiを提供しています。
Q. 現地のレストランやファーストフード店、露店など食品を扱う店の衛生状態はどうですか?
ファーストフード店はきちんと清掃がされていますが、店内にはハエが飛んでいることも多く、衛生状態は日本のように良いとは言い難いです。
ニカラグア人の衛生面の意識はあまり高くはなく、個人経営の食堂や露店などは割と簡単に開業出来ますので少々不安もあります。
実際に5年程住んで外食が理由で体調を崩したことはありませんが、特に付け合せの生のキャベツには注意しています。キャベツに付いている寄生虫によって食中毒になることもありますので、外食の際には生の野菜には要注意と言えます。
Q. 生活に必要な安全な飲用水はどのように調達しますか?
現地の人の多くは、経済的な事情のゆえに井戸水や水道水をそのまま飲んでいます。
水道水が定期的に来ている場所では、浄水器を取り付けている人もいます。浄水器はニカラグアのホームセンター等で購入可能です。
ニカラグアでは至るところに小さな売店があり、どこでもミネラルウォーターを購入することができます。
Q. 現地の交通事情や交通機関の様子はどうですか?
首都以外では、渋滞はほとんどありません。
日本人でも日本の免許証があれば、ニカラグア在日本大使館で一年間有効の運転許可証を発行してもらえます。運転の際には、許可証に加えて自動車保険証と車の登録書を携帯している必要があります。
ほとんどの道にガードレールは付いてなく、歩行者を巻き込んだ飲酒運転による事故が多く発生していますので、道を歩く時も十分な注意が必要です。
交通機関としては、バス・相乗りのタクシー・三輪自動車タクシー・自転車タクシーがあります。
普段はおおらかなニカラグア人ですが、バスの乗り降りの時は例外です。目的地到着前から席を立ち、すぐに降りるよう急かされますので、ボーッとしていると車内に残されてしまいます。
Q. 現地の医療水準はどうですか? 医療費は高額ですか?
外国人でもパスポートがあれば、公立病院での診査や入院は無料で受けることができますが、医療水準は低いのが現状です。
経験のある医師不足、十分な医療機器が備わっていない病院がほとんどです。
首都には私立の病院もあり治療を受けることも出来ますが、受診が高額ですので前もって海外でも適用可能な保険に入るように勧められています。
街の至るところに、ある程度の知識を持った薬剤師が居る薬局があり、処方箋がなくても薬を買うことが可能です。
執筆者:R.T
執筆年月:2020年8月