海外社会貢献者からのメッセージ
Q. 世界を活動の場とする社会貢献者にとって、この国はどのような場所ですか?
インドはまだまだ助けを必要としている人が大勢います。未だに格差が大きく厳しい生活をしている方がたくさんいます。
日本からだけでなく西洋の国からのボランティア団体も多く活動しています。インドでのボランティアと聞くと、特に有名なのはマザーテレサが始めたマザーハウスで、病気の人、身寄りのない子供、高齢者などを助ける施設などを持っています。世界の各地からの旅行の途中でたった1日だけ参加するという人も多くいます。
他にも農場で家畜のお世話や、林業の手伝い、言語講師のボランティアもあります。
私が今までインドで出会ったボランティアの方だけでも、北米・南米・ヨーロッパ諸国からの方がおられ、アジアは日本や韓国など様々な国から来られていて、その方々と共に活動することによって異文化、異言語に触れる楽しさを感じることができます。
とにかく広いインドですので、よく知られている茶畑や人で賑わうバザールだけでなく、青いビーチ、砂漠、ジャングルやヒマラヤなどインドっぽくない所を見られるのも1つの楽しさです。
何より現地にとどまって現地の人と接していく中で、日本では得られることのなかったやりがいやいろんな意味での衝撃、もちろん楽しさも味わうことができ、自分が大きく強くなれる国です。
文化
Q. 現地の人々の気質や考え方にはどんな傾向がありますか?
インド人はとってもおおらかでマイペースでフレンドリーな気質を持っています。
自宅にご飯に友達を誘う時にものすごい人数を誘ったり、何人か把握せずに適当な量、だけど大量にご飯を作ってくれたりします。友達を呼んでいるにもかかわらず、その時間に行っても家主がいないとか、何も用意されていない時もあり、今日呼ばれてたっけ?と不安になることもあります。でもいつもリラックスしていて、人にも緊張させないこのインド人の気質みならいたいものです。
あまりにもおおらかすぎて無計画に物事を進めてしまう時にはハラハラしてしまいますが、それでもなんとかなるものなのです。当然無計画ゆえのパプニングもありますが、それでも楽観的な彼らはパプニングに強いです。
フレンドリーという事に関しては、よく道端でも知らない人に声をかけますし、初対面でもいろいろ質問してくれます。言語を勉強している事など伝えるとお店の中でさえ、そして会うたびに喜んで練習相手になってくれます。友達同士はさらに距離が近く、女性同士だけでなく男性同士、おじさん同士も手を繋いだり肩を組んだりして歩くので、はじめはびっくりしますが、慣れるとそれがかわいく見えて微笑ましいです。
Q. 現地の食文化はどのようなものですか?
今や日本でも簡単に食べられるインド料理ですが、現地で食べるインド料理はスパイシーで、コクに加えてなぜだか甘みもあり、とても美味しいです。現地の人は、暑い日も寒い日も病気になった時もスパイシーなものを食べていて最初は驚きましたが、私自身もものすごい暑い日にあの味でスタミナをつけたい!と思い、地元のレストランに向かったのを覚えています。そして彼らに心から納得しました。やはり強いスパイスはこの土地で生きていくために必要なもののようです。
スーパーなどに行くとミックススパイスもたくさん売られていて、チキン料理用、魚料理用、豆カレー用…だけでなく、頭が痛いときはこれ、胃の調子が悪いときはこれ、などといろんな用途に合わせてスパイスを使い分けています。
もちろんインド人が食べているものはカレーだけではないです。様々な人種や民族が暮らしているので、実はいろんなものが食べられます。私の家の周りは特にチベット系の方が多いので、フライドライスや焼きそばみたいなもの、肉まんや餃子みたいなものまであり、外で食べるとしてもすごく美味しいです。時々スパイスの効いていないこれらの食べ物で心を安心させることができますよ。
ベンガル人のお店では魚が食べられる、というイメージが強いです。スイーツのお店もベンガル人が経営してることが多いですが、乳製品やナッツから作られた彼らのスイーツは歯が溶けそうな甘さで、ストレートに食べられる日本人はいるのかと疑ってしまいます。そんなスイーツは、嬉しいことがあった時や家に訪ねた時に、もれなくみんなに配ってくださるので、どうしようと思いながら、感謝して毎回水で流し込んでいます。(ごめんなさい。)
民族に加えて、インドは様々な宗教の人々も混ざって生活しているため、ベジタリアンのお店もよく見かけます。ただ肉を食べないだけでなく、動物由来のもの(卵や乳製品)も一切食べないという人もいるので、ベジタリアン文化はインドではかなり発達しています。
手で食べるというのもよく知られていますが、左手が「不浄」という意識があるために、右手のみで食べます。米だけでなくナンやチャパティ(薄焼きパン)も地元の方は右手だけで、5本の指を器用に使いながらちぎって食べています。外国人も一緒に手で食べると皆さん喜んでくれます。
Q. 現地の人々はどのような生活習慣や宗教観を持っていますか? 現地特有のマナーなどはありますか?
まず慣れなければいけないのは、インド人は「イエス」も「ノー」も首を横に振るという習慣があります。人の話を聞いていてうなずく時も首を横に振ります。日本人が「うんうん」とうなずくのと同じなので、話を聞いているときは首振りがしばらく長いこともあります。何を表しているのかはそのうち見分けがつくようになります。
宗教はどの地域でもヒンドゥー教、イスラム教、キリスト教が一緒に存在しています。最も多いヒンドゥー教はカースト制をもっていて、それは身分や職業など生活が深く関係しています。それ以外の宗教は少数派ではありますが多数の宗教が存在しているので、お互い尊重しあっています。
毎日早朝にモスクからのお祈りの合図がスピーカーで大音量で流され、そしてご近所さん達がヒンドゥー教のお祈りの時に使う鈴の音や歌なども聞こえてきます。それが1日の間に数回あります。普通の会話の中でも宗教の話題が出たり、初めて会った人にも宗教が何か聞いたりするのは割と普通のことで、宗教離れの日本とは違って、インドでは宗教が人々の生活に深く根差しています。
気候
Q. 現地はどのような気候ですか? 健康維持のために気を付けるべきことはありますか?
インドは広い国で、ヒマラヤ山脈やインド洋もあるので、地域によって気候はかなり違います。
私が住む西ベンガルの平地は、夏は35度前後と暑いですが、デリーほどは暑くなく、冬(乾季)は最低でも10度くらいなので過ごしやすいところだと思います。乾季は山地の方は凍えるほど寒くなると聞いています。なので毎年12月頃から数ヶ月間寒さを逃れてやってくる人達も多いです。そのための短期間住めるアパートなども多数あるほどです。
暑季と雨季は湿気が多いのと、乾季は特に窓や壁の結露で、どの時期もカビがすぐに発生します。それが原因で喘息やアレルギーを引き起こすこともありますので除湿機を少なくとも1台持っておくと良いでしょう。
Q. 現地特有の風土病はありますか? 健康維持のために役立つ対処方法はありますか?
夏はデング熱や熱中症に気をつけなければいけません。デング熱に関しては蚊に刺されないようにしなければいけないので、虫除けスプレーを携帯したり、草原や森に行く時には肌を出さないようにしたりできます。熱中症対策は水を持ち歩いてこまめに水分補給することが大事です。
季節に関係なくよく起こっているのは腹痛、下痢、嘔吐などの消化器系の病気です。現地の人には肉はよく火を通してから食べるようにと注意をいただきます。あと、レストランや露店などに置いてあるみんなで回し飲みするような水を飲まないことや、自分の健康状態を考えて辛いものや油っぽいものをセーブすることも大事だと思います。
言語
Q. 現地の人々はどのような言語を用いていますか? 外国人にとって、現地の言語を学ぶ際に、どんなハードルがありますか?
インドと聞くと「ヒンディー語」と思う方が多いと思いますが、実はヒンディー語は首都のデリーを含め北インドでしか通用しない言葉です。
インドは多言語、多民族国家ですので州ごとにそれぞれの公用語さらにいくつかの民族語があり、現地の人々は器用にそれぞれの言語を使いこなすマルチリンガルです。ただ同じ言語だとしても州によって、また特に田舎の地域では、文法が違っていたり、別の言語とミックスして話していたりするので、正しく言語を学びたい方は大きな都市で、その言語にどっぷりと浸かって学ぶことをお勧めします。
どの言語を話すインド人も大体の方は英語が話せますし、若い人の英語力はかなり高いです。ただアクセントがとても強いです。英語の番組などでは、インド人が英語を話している時に英語字幕が付くくらいアクセントは独特です。いわゆる「ヒングリッシュ」(インド英語)に慣れるのも少し時間がかかるかもしれませんが、ヒンディー語と英語さえできれば困ることは無いと思います。
生活
Q. 現地の人々の生活水準はどうですか?
近年IT産業が急速に伸びていてそれとともに経済も発展してはいますが、今でも格差は大きいです。都市の方では先進国と変わらないような生活が見えますが、同じ都市内にスラムがあるというもの現実です。
ここでは私が住む町の話をしたいと思います。田舎での生活は、物価は安いです。ベジタリアン生活ができるなら1日の食材は100円くらいですみます。お肉を買うとしても例えばチキンなら1キロ300円ちょっとです。お米も種類によりますが、1キロ60〜100円程度です。外の露店で何かを食べるとしても100円以上を払うことは滅多にありません。それでも少し街の方に行けばショッピングモールなどもあり、そこに入っているレストランや海外から来たチェーン店などは日本から比べれば安いですが、インドで暮らしている身としては頻繁に行けるようなところではありません。
インターネットは大抵の人は自分の携帯電話を使ってデータ通信していて、自宅Wi-Fiは全然普及していません。我が家は仕事のために必要ということでWi-Fiルーターをインストールしましたが、通信量無制限でも月々1,000円くらいです。
地元の人の仕事は、農家や露店の自営、学校の先生、自衛官、お茶摘み、ハウスキーパー、ドライバーなど幅広いです。
Q. 現地の人々の教育水準はどうですか?
年配の方達は学校に行けなかった人も多いようですが、最近の若い人達は教育に熱心という印象です。特にテストが全ての結果なので、テスト前は学校以外で勉強会に通ったり休みの日は十何時間も夜中まで勉強をするそうです。そんなに熱心なのは、いい学校に行っていい仕事を得るためです。子供だけを都市に住んでいる親戚のところに預けたり、ホステルみたいなところに預けて学校に通わせることも珍しくありません。ヒンズー教徒なら階級によって得られる仕事も変わってきますが、今発展しているIT産業はグローバルで立場を問わないので、農村の子達も都会に出て学校に通っています。
ほとんどの学校では英語で授業がされており、地元の言語に加えもう一つの言語を選択するので、言語に関してはレベルがものすごく高いです。
良い仕事に就くために、週末にコンピュータースクールや言語学校に通う子も多くいます。
Q. 現地の治安水準はどうですか? 外国人が特に気を付けるべきことはありますか?
住む場所にもよりますが、どんな田舎であっても治安は「良い」とは言えません。私が住むところは比較的田舎ですが、外にかけてある洗濯物や窓の近くに置いてあるものが外から盗まれることが近所で多発しています。
乗り物ではよくスリや痴漢にあうので、友達といるなら一緒に座ったり近くにいたりするのがいいと思います。iPhoneを持ち歩きながら買い物したりするのも盗まれる原因になりますので避けてください。
狭い道路にたくさんの車、バイク、自転車が走っているため小さな衝突事故はたくさん起きます。少し擦るくらいなら何事もなかったように行き交うのですが、時々それは殴り合いなどの喧嘩にも発展します。一度私が乗っていたリキシャもそんな目に合い、ドライバーが相手と喧嘩を始めてしまったと思ったら、中の乗客まで口を挟んでしまい喧嘩が大きくなりました。もしできるなら、喧嘩が起こっているところから離れるか、近づかないのが身のためです。
他に巻き込まれることといえば、外国人ならわからないだろうと思うのか、偽札でおつりを渡したり、今は廃止になった紙幣を渡してきたりするお店などもあるので気をつけてください。瞬時にはわからないと思いますが、大きいお店でお金をくずしたり、小さいお店ではおつりが少なくなるように会計したりすることで防げると思います。
もしホテルに泊まる場合は、1人では泊まらないか、もし1人ならセキュリティー管理がしっかりされたホテルに泊まることをお勧めします。寝てる間にホテルのスタッフが部屋に入ってきて金品を盗む、2人で泊まっててもドアの外で「何か必要なことはありませんか?」などと親切心をよそおって部屋に入ってこようとするのはよく聞く話です。実際、私の友達でも被害にあった人がいました。断る時にはきっぱりと断るのも危ない目に合わないコツかもしれません。
Q. 現地の住居や住環境の様子どうですか?
多くの人は家を建てる時に家賃収入が得られるように、また後々家族が一緒に住めるように、玄関などを別にした二階か三階建てを作ります。フラットごと借りるというのが一般的で、3LDKほどの広さがあっても16,000円ほどです。
セキュリティー管理があるプール付きの5階建マンションとかであっても、管理費込みで25,000円以内で借りられます。
都市にいくほど金額は高くなると思いますが、日本に比べればどの家を借りたとしても家賃はかなり安いです。
Q. 現地の生活インフラ(水道・電気・ガス・インターネット)はどの程度整っていますか?
水道は住宅街のある所ならどこでも通っていて、道端にも誰でも汲むことができる水道があり、自宅にキッチンがない人などは朝夕そこに大きなバケツやボトルを持って汲みに行っているのを見ます。水がなくなるなどの問題にあったことはありません。
電気もどこでも通っていますが、雨が降るとよく停電になります。蓄電器があれば停電になっても冷凍庫のものが溶けるとかインターネットが切れるという問題を防げるかもしれません。
ガスはプロパンガスを使っています。インドではガスの管理は政府がしているため、シリンダーを買うには非常にややこしい手続きに加え時間が相当かかるため、外国人では無理だと言われました。大体の人は自宅に予備としていくつかシリンダーを持っているので我が家は大家さんのものをお借りしています。地元の人でもガスシリンダーを持っていない人は少なくなく、そのような人は誰でも買うことができる小さなシリンダー、しかし1週間で切れると言われているものを使うか、薪で火を焚いています。
多くの人は自分の電話でインターネットをしていますが、契約して自宅Wi-Fiを取り付けることも可能です。我が家は安めの契約ですが、それでも速さは20Mbpsでスピードに困ることはなく、動画などもサクサク見ることができています。
Q. 現地のレストランやファーストフード店、露店など食品を扱う店の衛生状態はどうですか?
衛生状態ははっきり言って良いとは言えません。都市部の大きなレストランでしか衛生状態の整った環境は得られないと思っておいた方がよいです。
地元のレストランやカフェのような所はそもそもドアみたいなものがないので、カバーもされず置いてある野菜や作り置きしたものなどの周りにはハエが飛んでいますし、ネズミやゴキブリを見ることもあります。そして、もちろん手掴みで料理をしています。客が帰った後には、テーブルの上に散らかった食べかすを雑巾のようなもので床に落とすか、何もしないか。という感じです。
地元の人のアドバイスは、生野菜は食べるな、です。野菜を洗っていないお店も多く、洗っていたとしても飲料水で洗っているかは怪しいとの事で、火を通してなければ食べない方がよいです。
Q. 生活に必要な安全な飲用水はどのように調達しますか?
基本的にどのお店やレストランでもペットボトルに入ったミネラルウォーターを買うことができます。1L 20ルピー(約35円)が相場です。
長めに滞在する人は家で水道水を浄水器(フィルター)にかけて飲んでいます。値段は様々ですが、2,000ルピーくらいの安い浄水器でもちゃんとした水を飲むことができます。我が家もこの安いのを使っていますが、お腹を壊したことは一度もありません。
あと、ウォーターサーバーというものあります。飲料水が20L入ったボトルをサーバーの上にセットして使います。連絡すればお店側が届けてくれるので便利です。レベルの高いサーバーなら瞬時にお湯まで出て来るタイプもあるので、もしあれば大活躍だと思います。
Q. 現地の交通事情や交通機関の様子はどうですか?
少し離れたところに行くにはバスが便利です。隣町に行くために2、30分乗ったとしても30円ほどです。安いですが狭く、汚いのが難点です。
近距離移動ならリキシャという3輪タクシーに乗るのが便利です。ガソリンや電気などで走るオートリクシャと自転車の荷台に人を乗せるサイクルリクシャがあります。どちらともどこでも見つけられるのですが、ドライバーによっては値段交渉が面倒臭くなることもあります。
長距離移動のために電車もあるのですが、時間通りに来ないのと速度が遅いというのは有名な話です。どこに行くかにもよりますが、バスで3時間で行けるような所も電車だと9時間かかる所もあります。景色を楽しみたい時には電車を選択するのもありです。
ほとんどの家庭は車かバイクを持っていて通勤に使っています。
Q. 現地の医療水準はどうですか? 医療費は高額ですか?
都市部の医療水準は高く、外国から治療のためにインドに来た友人もいました。私立病院では先進国レベルの医療が受けられ、日本と比べると治療費も安いです。
さらに安いのは公立の医療機関ですが、とにかく人で混雑しているので診察してもらうのを諦めたことがあります。
重症でなければ薬局で薬をもらうだけで十分です。なぜなら日本では処方箋を必要とするような薬も、ここでは処方箋なしでしかも安く手に入れることができるからです。小さな薬局は至るところにあって、薬剤師に症状を伝えれば薬と飲み方の説明をしてくれます。週に1日程度、お医者さんが診察しにきてくれるようなところもあります。また、好きなだけ買うこともできます。私は時々起こるものに備えてアレルギーの薬、胃腸薬、痛み止めは常備しています。
執筆者:MH
執筆年月:2020年7月