海外社会貢献者からのメッセージ
Q. 世界を活動の場とする社会貢献者にとって、この国はどのような場所ですか?
ベトナムは近年めざましく経済が成長しているとはいえ、まだまだ発展途上の国です。貧富の差が激しく、多くの人が貧しい生活を送っています。
ベトナムで無償で医療を提供する日本人医師の話が、日本でドラマ化されました。ベトナムでは様々な分野で社会貢献している人が少なくないと思います。特に医療面や建設面、言語ボランティアなどが活躍しているようです。
ベトナム人でボランティア活動をしている人も少なくありません。ショッピングモールや公園で、大学生くらいの若者たちに、貧しい子どもや学生を助けるために物を買ってくれないかと声をかけられたことが何度かあります。
私の知り合いのベトナム人の中にも、昔貧困を経験しているゆえに、助けを必要としている人がいたら何とか力になりたいと、寄付する人もいます。助け合いの精神を持っているベトナム人は少なくないと思います。でも、まだまだ生活に余裕がない人が多いので、他の国の支援が必要な分野は多数あると言えるでしょう。
ベトナムは親日国としても知られていますし、日本人にとって活動しやすい国の1つかと思います。
文化
Q. 現地の人々の気質や考え方にはどんな傾向がありますか?
ベトナム人と一言でいっても、地方によって気質も違うのですが、全体的に友好的で、まじめなイメージがあります。ベトナムの民族衣装アオザイの刺繍を見ると分かるように、手先が器用で細かい作業が得意です。
人と人との距離が近く、外で見知らぬ人に話しかけられることがよくあります。近所の子供たちが自由に他人の家で遊んでいたりします。
知り合ったばかりの人に対しては、若干警戒心があり、本当に心を開いてくれる関係になるまで少し時間がかかります。しかし、一旦信頼関係ができると、家族のような付き合いになり、遠慮がなくなります。
カラオケが好きな人が多く、休日などはマンションや住宅街のいたるところから大音量の歌声が聞こえてきます。
国民的スポーツであるサッカーを愛している人が多く、サッカーの国際試合がある時などは、屋外に特設スクリーンが用意され、熱狂的に応援している様子が見られます。
Q. 現地の食文化はどのようなものですか?
お米が主食です。麺類も種類が豊富で、フォーなど米を原料にした麺が多いです。さっぱりとした味付けのものが多く、脂っこくないのが特徴です。
どの料理にもたいていヌックマム(魚醤・ナンプラー)が使われ、独特の香りがあります。春巻きなどをヌックマムにニンニク、玉ねぎなどを刻んで入れ、砂糖、レモン汁などで甘酸っぱく仕上げたソースにつけて食べることが多いです。
お店でフォーなどの麺類を注文すると、山盛りの生の香草が別の皿で出てきます。香草というのはミント、バジル、パクチー、ドクダミなどです。麺の量と同じくらい香草をたくさん入れて食べるのがベトナム流です。
太っている人が少ないように思うのは、野菜をたくさん食べるためでしょうか。
Q. 現地の人々はどのような生活習慣や宗教観を持っていますか? 現地特有のマナーなどはありますか?
宗教的背景は日本と似ていて、大多数の方は先祖代々の仏教徒です。毎月旧暦の1日と15日に先祖を供養するためにお寺に行ったり、家で食べ物などを供えたりします。たいていの家には日本の神棚や仏壇に似たものが設置されていて、そこに供え物を置いています。
先祖代々カトリックという方もいます。教会はいたるところにあり、礼拝の時など、大勢の人が集まって話を聞いている様子がみられます。
仏教やカトリックとは別に地元のカオダイ教という宗教を信仰している人もいます。特に、ベトナム南西部ではこの宗教を信奉している人が多いです。神を表した人間の目のような絵が描かれているのが特徴で、創造主を信じています。
年功序列の社会で、年上の人を敬います。自分より1歳でも年上であれば、ベトナム語での呼び方が変わってくるので、初対面でも年齢を聞くことが多いです。バスなどでお年寄りが乗ってくると、必ず席を譲ります。
気候
Q. 現地はどのような気候ですか? 健康維持のために気を付けるべきことはありますか?
ベトナム北部は四季があり、冬は気温が20℃を下回るため長袖が必要となります。夏は気温も湿度も高く、蒸し暑い天気となります。
ベトナム南部は雨季と乾季のみで、30℃前後の暑い日が1年中続きます。ホーチミンは11月~4月が乾季で、雨が少なく、湿度も低いので過ごしやすいです。5月~10月は雨季となり、午後に激しい雨が降るため、夕方から夜は涼しくなります。激しい雨が降ると、道路が水没するところも多く、バイクや車での移動に時間がかかることがあるので注意が必要です。
日本に比べると、かなり蒸し暑いため熱中症対策が必要となります。正午過ぎの最も暑い時間はなるべく外出しないようにし、水分補給に努めます。
現地の女性は日焼け対策にぬかりがなく、頭から足先までカバーできる全身スーツのようなものを着てバイクに乗っている人もいます。そこまでしないにしても、帽子をかぶったり、サングラスをつけたりするなど、ある程度の紫外線対策は必須でしょう。
Q. 現地特有の風土病はありますか? 健康維持のために役立つ対処方法はありますか?
デング熱など蚊が媒介する病気があります。私の知り合いにベトナムでデング熱にかかったことがあるという人が何人もおり、入院した人もいます。まれにですがデング熱は重症化することがあり、輸血が必要と言われた人もいますので、デング熱が疑われるときは早めに受診することをおすすめします。
蚊よけ対策が必要となりますが、ベトナムには身体にかけられる蚊よけスプレーがあまり売られておらず、日本などで購入して持参することをおすすめします。現地の人たちは蚊帳などを使って蚊よけ対策をしているようです。
A型肝炎や狂犬病などの予防接種をする人もいます。ベトナム現地でも日系のクリニックなどでワクチンを接種することができます。
言語
Q. 現地の人々はどのような言語を用いていますか? 外国人にとって、現地の言語を学ぶ際に、どんなハードルがありますか?
ベトナムではベトナム語が話されています。モン族など少数民族も多数あり、それぞれの言語がありますが、ベトナム語を共通語として使っています。
ベトナム語には漢越語という中国語からの語彙が多くあり、中国語習得者は比較的ベトナム語を習得しやすいと思います。漢字を使う日本人にもとっても覚えやすい単語は多数あり、例えば「注意」という言葉のベトナム語は「chú ý(チューイー)」といい、発音が日本語ととても似ています。
ベトナム語の文字はアルファベットで、声調記号などもすべて表記されています。ちょうど、中国語のピンインを文字にしたようなものとイメージしてもらえたらと思います。
声調は6声あり、声調を間違えると意味が変わってしまうことがあるため、声調言語に慣れていない人たちからすると少し難しい言語となります。
ベトナム語は発音のストライクゾーンが特に狭く、ちょっとでもずれると理解してもらえないため、正確な発音の習得が必須となります。
また、ベトナム語には北部、南部で発音の違いがあり、使う語彙も違う場合があります。ベトナム人同士でも慣れるまでお互い何を言っているか分かりにくいようです。
生活
Q. 現地の人々の生活水準はどうですか?
貧富の差が激しく、平均というのが出しにくいのですが、都市部には日本の高島屋やイオンモールなどもあり、年々めざましい経済発展をとげています。
高級住宅地に住んで高級車に乗っているベトナム人もいる一方、長屋のような小さな家に家族で住んでいる人も多くいます。そのような安い家の家賃で1カ月150万ベトナムドン(約7500円)くらいです。工場勤務の場合、1カ月の賃金は600万ベトナムドン(約3万円)くらいなので、子供が数人いる場合、夫婦共働きでないと生活していけないというのが現状のようです。
ホーチミンに関していえば、10数年前には路上で物を売る子供たちがたくさんいたのですが、今ではほとんど見かけません。全体的な生活水準が上がってきているという印象です。
Q. 現地の人々の教育水準はどうですか?
数十年前までは小学校も卒業せず、家計を支えるために働かざるを得なかったという人がたくさんいたようですが、今は多くの人が高校まで行っています。近年、大学に進学する人も増え、海外の大学に留学する若者も多くなっているようです。
カオダン(高等学校)という日本の高等専門学校のような職業訓練学校で、技術や言語を学ぶ人もいます。
小学校から英語教育もあるようで、英語を流ちょうに話せるベトナム人も多いです。最近では、子どもを塾や私立の小学校、インターナショナルスクールに通わせる親も増えてきているようです。
Q. 現地の治安水準はどうですか? 外国人が特に気を付けるべきことはありますか?
日本に比べると治安が悪く、スリやひったくりが多いと聞くのですが、実際住んでみるとそこまで治安は悪くないというのが現時点での印象です。ただ、外国人がたくさん来る市場やスーパーなどではスリが多いそうなので、気をつける必要があります。
麻薬の問題もあるようですが、警察が密売グループを摘発したというニュースをよく見かけます。ベトナムでは麻薬の使用、販売は厳罰となります。
ベトナムは共産主義の国です。公安がしっかり治安を守っています。観光客を含めて外国人は地元の法律に精通しておく必要があります。例えば、警察署などの建物は撮影不可ですので気をつけましょう。
Q. 現地の住居や住環境の様子どうですか?
外国人向けのアパートなどはきれいで住みやすく、セキュリティもしっかりしており、日本と変わらないクオリティです。私の住んでいるホーチミンでは日本円で約3~4万円以上出せば、築年数が新しいエレベーター付きのマンションに住むことができます。日本人が多く住む高級エリアなどでは家賃が10万円以上することもありますが、日本の東京などに比べるとまだまだ安いと言えます。
ただ、施工が甘いためか、ちょくちょく小さなトラブルが出ることがありますが、細かいことを気にしなければ快適に過ごせます。
外国人を含めすべての人は、住んでいる家を地元の公安に登録する必要があります。これをしていないと、時々家を訪ねてくる公安に多額の罰金を請求されることになりますので、引っ越したらすぐにこの手続きをしましょう。たいてい不動産業者や大家さんが手続きをしてくれます。
Q. 現地の生活インフラ(水道・電気・ガス・インターネット)はどの程度整っていますか?
都市部では上下水道、電気は完備しており、特に不自由なく暮らせます。電気も時々工事などの影響で停電がありますが、事前に知らされます。電力不足で停電になるということは今のところ経験したことがありません。
電気代はネット上で確認でき、スーパーや家電ショップなどの店舗で支払います。
ガスはプロパンガスが主なようです。マンションでも台所などにガスボンベを置き、無くなれば業者に連絡して新しいものと交換してもらいます。
インターネット環境は整っており、携帯のモバイルネットワークも安定しています。私の家はWi-Fiの契約をしているのですが、半年間で約150万ベトナムドン(約7,500円)ほどです。
無料Wi-Fiが利用できるスポットも多く、多くの飲食店、特にカフェでは無料Wi-Fiのサービスがあります。Wi-Fiのパスワードが壁に貼られていたり、レシートに書かれているので利用しやすいです。
Q. 現地のレストランやファーストフード店、露店など食品を扱う店の衛生状態はどうですか?
マクドナルドやケンタッキーなどのファーストフード店は日本と同じような衛生状態だと思います。若干ゴミ箱の周囲にゴミが散乱していたり、机の上が汚かったりしますが、店舗内は定期的に掃除されており、比較的きれいです。
レストランは、高級なレストランならたいていとても清潔です。庶民的な食堂などではあまり清潔ではないところもあります。また、手をふくための包装されたウエットティッシュはお金を別にとられるところが多いので注意が必要です。
露店は衛生状態が良いとは言えません。ただ、10数年前に比べると全体的に衛生状態が改善されてきたと感じています。私自身ここ数年間、露店で買ったもので食中毒になった経験がありません。でも、暑い国なので生ものや火が十分に通っていないようなものは避けた方がよいでしょう。
Q. 生活に必要な安全な飲用水はどのように調達しますか?
基本的に水道水は飲むことができないので、飲料水は購入しています。
私の住むマンションには、ウォーターサーバーに設置するような大きなウォーターボトルを扱う店があり、そこに電話すると水が入ったプラスチック製のボトルを家まで配達してくれます。空になったボトルは回収してくれます。
だいたいこのような水を販売する店が各所に点在しているので、マンションに住んでいなくても、近所の店に連絡すればこのようなサービスを利用することができます。
私の家では1本のボトル(20リットル)を4万5千ベトナムドン(約220円)で購入し、1週間に1回ペースで新しいボトルを購入しています。
Q. 現地の交通事情や交通機関の様子はどうですか?
ハノイとホーチミンでは現在地下鉄の建設が進められていますが、まだ完成していません。今のところ、主な交通手段は、バイクかバス、タクシーになります。
現地の多くの人はバイクを愛用しており、人口が密集している都市部では渋滞が頻繁にみられます。道路を逆走する人や信号無視する人が多く、交通事故が日常茶飯事なので、バイクを運転する場合は注意が必要です。
バスは都市部では路線も本数も豊富なのですが、最終便が夕方に終わる便もあり、夜は利用しにくいです。冷房完備できれいな車体もありますが、冷房がなく、車体もボロボロで汚いバスもあります。バスの値段は路線によって違うのですが、ホーチミンの場合、6千ベトナムドン(約30円)からというのが相場のようです。バスに乗車すると運転手と別に車掌さんがいるので、その人にお金を支払います。
タクシーは流しのタクシーも多く便利なのですが、外国人の場合値段交渉が厄介になります。それで、今はGRABという配車サービスを利用する人が増えています。GRABとは、日本にもあるUBARと同様、アプリを使って車やバイクを呼び、目的地まで乗せてもらうというものです。値段が先に分かるので、ぼったくられる心配がなく安心です。夜に女性が1人で乗る場合も特に問題はないようです。
Q. 現地の医療水準はどうですか? 医療費は高額ですか?
現地のローカルの病院なら医療費は高くないのですが、医療水準はあまり高くなく、現地の人でごった返している病院が多いようです。入院環境もあまり良くなく、ベッドが足りない場合は他の人と一緒にベッドを利用することもあるようです。
近所のベトナム人の女性は、近くの公立の総合病院に受診する際、早朝5時に受付番号を取りに行くのだとか。その方いわく、地方から来ている患者さんが多く、病院は常に人でいっぱいで、待ち時間も長いらしいです。
ローカル病院でも医療水準が高い病院もあるそうなので、事前に調べてみることをおすすめします。
ローカル病院とは別に、インターナショナルホスピタルがあります。医療設備が整っており、医療水準も高いのが特徴です。私も少し入ったことがありますが、とてもきれいで清潔感があり、日本の病院と同じような印象を受けました。日本人医師やスタッフがいる日系のクリニックもあります。
インターナショナルホスピタルや日系の病院はローカルの病院に比べると医療費がとても高いです。病院にもよるかと思いますが、風邪程度の受診で1万円以上とられることもあるそうです。
色々な保険会社と提携しているインターナショナルホスピタルが多いです。海外旅行保険やベトナムの地元の医療保険に加入しているなら、提携先の病院をチェックしておきましょう。キャッシュレス対応可能ならお金の心配がないので安心です。
執筆者:N.K
執筆年月:2020年7月