海外社会貢献者からのメッセージ
Q. 世界を活動の場とする社会貢献者にとって、この国はどのような場所ですか?
ミャンマーは他の東南アジア諸国と比べてまだまだ発展途上の国です。言い換えればそれだけ成長の見込みがある国なのかもしれません。
以前の首都であり、ミャンマー最大の都市であるヤンゴンには日本企業、中国企業が数多くあり、積極的に海外からの労働者を受け入れています。反対にミャンマーから日本へ派遣される労働者も多く、日本語を学習中の方によくお会いします。
ミャンマーでは特に、工業および農業技術面での向上や医療面でのサポート、また日本語教育などにおいてボランティアの活躍の場があるのではないかと思います。
文化
Q. 現地の人々の気質や考え方にはどんな傾向がありますか?
日本人と良く似た気質を持っています。
基本的にミャンマー人は控えめで、シャイで、何かと主張するような方は少なく、忍耐強い方が多いです。しかしフレンドリーな一面もあり、見知らぬ人でもこちらが微笑むと、必ず笑顔で答えてくれます。
とても親切な方が多く、言語が通じなくても丁寧に辛抱強く応対してくれます。
親日国でもあるため、日本人にとっては特に住みやすい国といえるかもしれません。
Q. 現地の食文化はどのようなものですか?
ミャンマーは多民族国家で、インドやタイ、中国といった国に囲まれているため、それぞれの民族料理やインド料理、タイ料理、中華料理など、それぞれの地域の食文化を楽しむことができます。
また果物が豊富で、マンゴー、パパイヤ、ライチなど馴染み深い果物の他に、ドリアン、ドラゴンフルーツ、マンゴスチンなども味わうことができます。
都市部ではコーヒーショップもたくさんあり、現地の豆を使った濃い目のコーヒーを安価で楽しむことができます。ケーキなどのいわゆる洋菓子も日本人の口に合うものが多く、色々な「食」を楽しめる国です。
Q. 現地の人々はどのような生活習慣や宗教観を持っていますか? 現地特有のマナーなどはありますか?
ミャンマーは仏教国なので至るところにお寺があり、仏教僧の方をよく見かけます。特にビルマ族は仏教僧を大変重んじており、公共の乗り物では必ずと言っていいほど席を譲ります。また、多くの方がお金や食べ物などを僧侶に寄付しています。
この仏教の教えが根底にあるため、人だけでなく動物に対してもとても寛容で、野良犬や猫、スズメやハトを可愛がり、エサを上げている様子をよく目にします。
民族によってはキリスト教の方もいて教会もありますが、排他的な感じはなく、現地の人はそれぞれの宗教を尊重しているように思われます。
気候
Q. 現地はどのような気候ですか? 健康維持のために気を付けるべきことはありますか?
ミャンマーの国土面積は日本の約1.8倍ですが、住む都市によってかなり気候が変わってきます。
私の住むヤンゴンでは基本的に乾季(10月から4月頃)と雨季(5月から9月頃)の二季に分けることができます。乾季では11月から2月くらいが一番過ごしやすい時期で雨もほとんど降らず、一番の観光シーズンといえます(それでも気温は30度くらいあります)。その後どんどん気温が上がり、4月には毎日40度近くになるため熱中症には十分気を付ける必要があります。雨季が始まるとほとんど毎日雨となります。日本のようにしとしと雨が降るのではなく、短時間の土砂降りが日に何回かやってくる感じです。
ミャンマーの標高の高い地域や北部の国境近くの気候はヤンゴンとはかなり違い、夏は涼しく、冬はダウンを着る必要があるほど寒くなるそうです。
Q. 現地特有の風土病はありますか? 健康維持のために役立つ対処方法はありますか?
特に気を付けなければいけないのがデング熱です。ミャンマーではこのデング熱で亡くなっている方が少なくないようです。ヤンゴンでは年中気温が高いため蚊が多く、長袖を着用したり、防虫スプレーなどでしっかりと蚊対策をしたりしておく事が大切です。
他に腸チフスにかかることもありますので、飲用水や外食には特に注意が必要です。
また野良犬がたくさんいるので、事前に、又は到着後現地で狂犬病のワクチンを打つ事ができるかもしれません。
言語
Q. 現地の人々はどのような言語を用いていますか? 外国人にとって、現地の言語を学ぶ際に、どんなハードルがありますか?
公用語としてミャンマー語(ビルマ語)が使われています。多民族国家のため、他にもカレン語、カチン語、そして中国語を話す方もいます。ミャンマーは以前イギリス統治下にあった事もあり英語を話せる方も少なくないです。
ミャンマー語はアルファベットを組み合わせた文字ではなく、独特の文字を学ぶ必要があります。数字ですら1.2.3…ではなくミャンマー文字で書かれていることがあり、外国人にとってこの新しい文字を学ぶことが一番のハードルといえます。発音も声調があるために日本人にとっては一つの挑戦ですが、文法は日本語とほぼ同じため、この点に関しては学習しやすい言語と言えるかもしれません。
生活
Q. 現地の人々の生活水準はどうですか?
貧富の差がかなり大きい国だと感じます。庭付きプール付きの豪邸に住んでいる方もいれば、いわゆるバラックのような家で生活している方もおられます。都市部では近代的なショッピングモールや大きなスーパーマーケットがありますが、地方ではそういったものは全くみられません。
物価に関しては、大都市のスーパーでは品揃えが良い分コストもかかりますが、地元の市場などを利用すれば費用を抑えることができます。
Q. 現地の人々の教育水準はどうですか?
これも生活水準と同じく人によって大きな差があります。経済的に恵まれていて大学まで進学し、海外で留学、就職されている方もいれば、小学生くらいの年で学校にいけず、路上で物を売ったり、裕福な家庭のお手伝いさんとして働いたりしている子供たちを見かけることもあります。
発展途上国の中では識字率の高い国のようです。
Q. 現地の治安水準はどうですか? 外国人が特に気を付けるべきことはありますか?
以前軍事政権下にあったためか治安は良い方だと思いますが、人ごみの中や公共バスなどにおいてはスリに気を付ける必要があります。多額の現金を持ち歩いたり、貴金属など目立つような装身具を身に着けたりしない方が良いかもしれません。
身の危険を感じたことは今のところありませんが、同じ都市でも特定の地域・場所、そして時間帯によってはかなり危険なところがあるので、不用意にそうした場所に行かないことが賢明です。
Q. 現地の住居や住環境の様子どうですか?
外国人が住む場合、都市部では6-7階建てのアパート、また警備員付きのコンドミニアムを選ぶことができます。家の設備や立地条件、築年数にもよりますが、エレベータなしのアパートの場合、二部屋80平米の家で30000円、コンドミニアムになると40000-50000円ほどかかります。
外国人に対して排他的な態度を取られる事はほとんどなく、同じアパートに住むミャンマー人と階段などですれ違ったときにも笑顔で挨拶してくれます。しかし、警備員がいないアパートでは玄関の前に置かれている物(特に靴)を盗まれることもありますので注意が必要です。
Q. 現地の生活インフラ(水道・電気・ガス・インターネット)はどの程度整っていますか?
まず水道に関してですが、各家庭に貯水タンクのようなものがあって、一旦水をそこに貯めてそこから生活用として使用するというのが一般的な形です。断水が起こることはほとんどなく、このタンクに水さえ溜まっていれば使用することができます。
タンクに水を貯める方法は、水道の蛇口をひねってお風呂の水を貯めるようなタイプ、電動ポンプでくみ上げるタイプ、そして程度の良いコンドミニアムなどでは日本と同じく貯水の必要なくいつでも水道水が使えるタイプ、と様々です。
電気に関してですが、度々停電が起きます。ヤンゴンの状況ですが、乾季(10月-4月頃)は比較的安定していますが、雨季が始まる五月頃から頻繁に停電するようになります。短い時には数分で復旧しますが、2時間ほどの停電が日に何度か起きる場合もあります。暑さ対策や冷蔵庫の食物管理をしっかりとしておくことが大切です。
ガスはプロパンガスを使っています。電話をするとガス会社の人が来てくれて使い切ったプロパンを持って帰り、ガスの充填をしたあとまた持って来てくれるという感じになります。
インターネットはミャンマーでここ数年で急激に普及し始めました。以前は一枚のSIMカードが一万円以上する時代もあったそうですが、現在は日本よりも安価でネットを楽しめますし、一般市民でもスマホを持てるようになり、Wi-Fiを設置する家庭も多くなっています。通信速度や安定性の面では日本と比べるとまだまだですが、都市部ではポケットWi-Fiも使えてネット環境が整いつつある、という状況です。
Q. 現地のレストランやファーストフード店、露店など食品を扱う店の衛生状態はどうですか?
きちんとした店舗のあるお店だと比較的安心して食事を取ることができると思います。ロッテリアやケンタッキーもあり、お洒落なタイ料理やインド料理、日本での某有名ラーメン店もありますが、そうしたお店での衛生状態は特に問題ないように思います。
しかし、露店や道路沿いにあって空調設備が整っていないようなお店は極力避ける方がよいかもしれません。知り合いの方が現地で二度腸チフスにかかってしまいましたが、原因は壁がない吹きさらしのお店で食事を取ったからだそうです。
Q. 生活に必要な安全な飲用水はどのように調達しますか?
水屋さんに頼むのが一般的です。電話をすれば一本約18リットルのお水を全身に汗を流しながら階段を上って持って来てくれます(2-3本頼むときもあります)。値段は比較的安価で、住む階によって若干の割り増し料金が生じますが、それでも一本あたり約70-80円ほどです。
もう一つは自宅に浄水器を設置する方法です。これは蛇口に取り付けるコンパクトなタイプではなく、基本的にフィルターを4つ5つ通すようなビルトインタイプの物になります。住む地域や家によって水の透明度が違ってくるので、場合によっては頻繁にカートリッジを交換しなければなりません。コストを計算した上で浄水器を設置するか、それともお水を買ったほうがよいかを見極めなければいけません。
Q. 現地の交通事情や交通機関の様子はどうですか?
ヤンゴンでは(特にヤンゴンの中心部では)バイクや自転車などの二輪車が使えないため基本的にバスやタクシーを使います。たくさんの路線バスがあるのでヤンゴン市内であればどこに行くのにも困ることはありませんし、最初に料金(約15円)を払ってしまえば終点までのどのバス停でも降りる事ができます。しかし朝晩は乗客が多く、渋滞も激しいので、ある程度時間の余裕をみて利用する必要があります。
ヤンゴン市内はタクシーもよく走っています。流しのタクシーを捕まえてドライバーと直接交渉することもできますが、GrabというAppを使えば指定の場所まで迎えに来てくれます。行き先をあらかじめ設定すると料金も同時に提示されるので、現地語が話せなくても安心してタクシーを利用することができます。
都市間での移動は主に長距離バスを使います。ミャンマーは鉄道に関してはまだまだ発展途上で、日本の新幹線や特急列車などのような高速鉄道はなく、長距離バスよりもさらに時間がかかってしまいます。飛行機での移動も可能ですが、国内航空路線は本数が少なく、さらに外国人に対してはかなり高い料金が設定されているため、長距離バスに頼らざるをえないのが現状です。しかし正規の信頼できるバス会社であれば車内の設備もしっかり整っていて、値段も安価なので、快適なバスの旅を楽しむ事ができます。
ヤンゴン以外での都市や町での交通手段は主にバイクを使っての移動になります。場所によっては交通量が多く、排気ガスや土ぼこりで空気も悪くなっているので、マスク着用や安全対策などを心がける必要があります。
Q. 現地の医療水準はどうですか? 医療費は高額ですか?
ミャンマーの医療水準は高くありません。大病にかかってしまったり、大きな手術が必要だったりする場合はタイの病院に移される事がよくあるそうです。医療環境や衛生状態もあまりよくないため現地の病院で診てもらうことはおすすめできません。
ヤンゴンなどの都市部では外国人対応の病院もあり、日本語の話せるクリニックもありますが、現地の病院と比べると高額ですので事前に海外医療保険やクレジット付帯保険に加入しておくなどの備えをしておくことが大切です。
執筆者:Shinsuke
執筆年月:2020年7月