海外社会貢献者からのメッセージ
Q. 世界を活動の場とする社会貢献者にとって、この国はどのような場所ですか?
私は現在、ザンビアのコッパーベルト州に住んでいるのですが、名前の通り銅の採掘場があちらこちらにあります。銅、建設、医療、農業、教育などの分野で外国から多くの人がザンビアに来ています。
ザンビアには広大な土地がありますが、上手く活用されていません。エイズなどの感染症、職の不足、過度のアルコール摂取、精神病、家庭の崩壊などなど問題は沢山あります。
私は教育方面のボランティアに参加していますが、ザンビアは海外社会貢献者がやりがいを感じられる国の一つだと思います。外国から支援に来ているボランティアの方達と時々話しをする機会がありますが、多くの方がもう少し長く滞在して活動したいと言っています。もちろん、比較的安全で、気候も良く、住みやすいというのも理由に含まれていると思います。
文化
Q. 現地の人々の気質や考え方にはどんな傾向がありますか?
これは私の主観ですが、ザンビア人の気質はある面で日本人に近いと感じます。比較的勤勉な人が多く、他のアフリカの国の気質と比べると、少しシャイな印象を受けます。そして、はっきりNOと言うのを嫌がります。そして、働き者の人が多いためか、それだけストレスも感じているように見受けられます。ですから、アフリカはのんびりしているというイメージでザンビアに来ると、ちょっと違和感を持つかもしれません。お隣のタンザニアに行ったことがあるのですが、気質が全く違っていて興味深く感じました。
ザンビア人は家族をとても大切にしていて、かなり遠い親戚とも繋がりを持っています。一つ屋根の下に何人もの親戚と住んでいるというのも普通です。長期休暇となれば親族の家で過ごし、隣の家からもとても賑やかな声が聞こえてくるのが通常です。急なお客さんでも、快く迎えるというのがマナーのようです。
Q. 現地の食文化はどのようなものですか?
一言でいうなら、とにかくシンプル。毎日大体同じような物を食べています。主食はシマ(トウモロコシの粉を茹でて練ったもの)で、メインディッシュは肉(ビレッジチキンと呼ばれる地鶏が人気)や魚、ビーンズ、キャタピラ(イモムシ!)などです。そして付け合わせに地元の緑野菜をトマトと玉ねぎで炒めた物というのが定番です。ほとんどのザンビア料理の味付けは、塩とトマトと玉ねぎです。
お米も売っていて、ナコンデライスという種類は、日本米に近く、美味しく頂けます。
昔イギリスの植民地だったこともあってか、コーヒーを飲む習慣はなく、紅茶が主流です。みんな砂糖を沢山入れて飲みます。現地の人にとって、“ティー”は食べ物のカテゴリーに入っているのか、「何食べた?」と聞くと、“ティー”と答える人も。
1日3食きっちり食べる人もいますが、貧しくてもなくても、お昼ご飯(大体午後2時頃)に腹持ちの良いシマ、夜は“ティー”を“食べて”、1日の食事は終わりという人が多いです。ちなみに、ザンビアには地元レストランを含め外食できるところが少なく、価格も若干高めです。みんなお家が好きなのかもしれません。
地元で手に入る物を挙げておきます。中国人、インド人も多く住んでいるので、醤油やスパイスなどは入手可能です。日本食はまず手に入らないので、出汁や乾物を持ってくるといいかもしれません。
Q. 現地の人々はどのような生活習慣や宗教観を持っていますか? 現地特有のマナーなどはありますか?
電話をかける時は、すぐ要件を言うのではなく、まずはしっかり挨拶して、元気か確認します。そして、家族のことや最近の様子も尋ねて… それからようやく本題に入ります。せっかちな私はこの習慣を身につけるのに時間がかかりました。ザンビア人はコミュニケーションをとても大切にしているのだと思います。
あとは、マナーというほどではありませんが、ザンビアはまだ舗装されてない道路が多く、歩くと靴が砂埃でひどく汚れますので、靴磨き用ブラシか拭き取る布を持参しておき、人に会う前に靴を綺麗にしています。外見、特に靴によく気を遣っているようです。
ザンビアの主な宗教はキリスト教で、様々な宗派があります。またイスラム教の寺院もよく見かけます。ほとんどの人が信仰心を持っていて、宗教的な会話もよく耳にします。
気候
Q. 現地はどのような気候ですか? 健康維持のために気を付けるべきことはありますか?
ザンビアは、比較的温暖で湿度は低く、過ごしやすいです。エアコンがなくても扇風機があれば年中快適です。
一般的に、10月〜4月初旬が雨季、4月下旬〜9月が乾季になります(乾季は例外を除き雨は降りません)。雨季は、朝は快晴だったのに午後から急に風が強くなり、突然黒い雨雲が空を覆ってスコールのような激しい雨が降り出すことがあります。多くの地元の人たちは雨季でも傘を持たず、雨が降りそうになったら走って屋根のある場所に駆け込み、止むまで待機という様子をよく見かけます。数分〜2時間ほどで止むことが多いですが、日本の様にしとしと雨が一日中続くこともたまにあります。気温は雨が降る前特に高くなり、雨が降り始めると暑さが少し和らぎます。
乾季は非常に肌が乾燥しやすいので、保湿が大切です。お気に入りの保湿剤などがあれば持参すると良いですが、地元でも色々な種類のボディークリームやヴァセリンなどを入手することができます。グリセリンもスーパーで簡単に買えるので、手作り化粧水を作ることもできます。乾季は“コールドシーズン”とも呼ばれ気温は朝晩冷え込みます(7℃くらいまで下がる日も)。ただ、日差しが強い日の昼間は暑いので、温度差に注意が必要です。帰りが遅くなりそうな日は厚手の羽織るものを持参します。家の中も寒くなるので、厚手の衣類が必要です。
Q. 現地特有の風土病はありますか? 健康維持のために役立つ対処方法はありますか?
非常に多いのがマラリアです。私は一度だけかかったことがあるのですが、マラリアの症状は人によって全然違います。私の場合は、頭痛、全身の痛み、熱っぽさなどが主な症状でしたが、人によっては嘔吐、食欲不振、発熱、悪寒、めまい等があり、本当に様々です。ですから、少しでも体がだるくて、いつもと調子が違うと思ったら、マラリアチェックを受けることをお勧めします。
マラリアにかかってしまった場合、通常は、3日間薬を飲んだ後、再検査を受けて異常なければ治療は終了です。その後も数日しんどいですので、無理せず1週間程はしっかり休んだ方が良いです。
マラリア予防としては、夕方5時以降は窓を閉める、外に出る場合は手足の露出を出来るだけなくす、虫除けスプレーをする、年中蚊帳を使う、などの方法があります。
言語
Q. 現地の人々はどのような言語を用いていますか? 外国人にとって、現地の言語を学ぶ際に、どんなハードルがありますか?
公用語は英語で、民族語が72あると言われています。ある程度教育を受けている人は、英語と民族語(1、2言語)を話すことができます。最近は、学校で主に英語を話すので、民族語を話せない子供たちが増えているようです。
民族語の中で主な言語はベンバ語(主にコッパーベルト州やルアプラ州)とニャンジャ語(主に首都ルサカ、東部州)です。地元言語を学ぶための教材が非常に少なく、インターネットの情報は正確でないものが多いため、実際に現地の人から学ぶのが1番良い方法です。民族語で挨拶すると、とても喜んでくれます。
英語がある程度話せれば、生活にほぼ問題はありませんが、ザンビア特有の発音があるので、初めは聞き取りにくいかもしれません。また、イギリスの植民地だったため、イギリス英語の表現を使う人が多いです。
生活
Q. 現地の人々の生活水準はどうですか?
貧富の差が大きく、富裕層は高級車に立派な一戸建てというリッチな生活をしているのに対し、貧困層は電気・水道もない家でその日暮らしをしています。
ザンビア人はたとえ貧しくても、あらゆる知恵を使って明るく生きています。ある物で満足することを彼らから学ばされます。日本のように便利な道具がなくても、色々な代用品で賢く生活しているので、地元の方々と時間を過ごすと発見が多いです。
娯楽施設は少なく、人々の生活はシンプルです。ただ、週末にお酒を飲みに行くことが楽しみの人が多いようで、町からはよく爆音で曲が流れています。お酒によって引き起こされる問題が多いので、こういった面でもサポートが必要に感じます。
Q. 現地の人々の教育水準はどうですか?
識字率は85%以上で、多くの人が大学または専門学校に進学します。そうでないと安定した仕事に就くのが大変だからです。一般には12年間の基本教育を受けますが、貧困層は学費を払うことが難しいため、ストリートチルドレンが町中に溢れています。学校には通えず物乞いをする、物を売る、親戚の家で家政婦となる子供たちも多いです。
また、現地の人から聞いた話では、成績重視の教育で、多くの子供たちはテストに合格することだけに力を注ぎ、結局将来役立つ知識や技術を身につけることなく卒業していくとのことです。こうした点を考えると、生活していくのに役立つ技術を教える教育関係のボランティアの需要が多いのではないかと感じます。
Q. 現地の治安水準はどうですか? 外国人が特に気を付けるべきことはありますか?
ザンビアではイギリスから独立後、一度も戦争、内戦が起きておらず、比較的平和な国です。地域によりますが、治安もそれほど悪くありません。
ただ、外国人はどうしても目立ちますし、お金を持っていると思われ、犯罪のターゲットにされることがあります。ですから、普段から金目の物が人の目につかないように、服装や持ち物に気を付けています。
ザンビア人は少しシャイと書きましたが、それでも町を歩いていると色々声をかけられます。ただの挨拶であればフレンドリーに挨拶を返しますが、中にはお金を求めて来る人もいるので、ユーモアのセンスをもって上手にかわす必要があるかもしれません。
夜間は1人では歩けません。帰りが遅くなりそうな場合は、必ず現地の友人などと一緒に行動しましょう。私は以前不注意でリュックのポケットにスマホを入れていたら、お店のレジカウンターに並んでいる間に盗まれてしまいました。そのような経験があるので、持ち物管理にも気をつけます。洗濯物やちょっとした日用品なども、外に出しっぱなしにしていると盗まれやすいので、要注意です。
Q. 現地の住居や住環境の様子どうですか?
富裕層は頑丈なゲート、ガードマン付きの大きな一軒家に住み、高級車を持っているのに対し、貧困層はレンガを積んだ藁の屋根の小さな家に住んでいます。
コンパウンドと呼ばれる密集住宅地は貧困層エリアですので、外国人が住むのは危険だと思います。家を探す場合、窓や玄関ドアに鉄格子が付いているか確認しています。
1人暮らしであれば、ガードマン付きの綺麗なフラット(アパートのような建物)に住むか、信頼できる大家さんと同じ敷地の家を借りて住むのが安全かもしれません。周りに常に誰かがいる場所の方が空き巣にも入られにくいです。特に外国人は目立ちます。空き巣は、わたしたちがどこに住んでいるかを調べるために、行動パターンも観察している時があるので、徒歩であれ車であれ、いつも同じ道を使わないようにします。
家のつくりは色々あるのですが、比較的安い物件には湯沸かし器がついていないことが多いので、シャワーを使いたい場合は、確認してください。
Q. 現地の生活インフラ(水道・電気・ガス・インターネット)はどの程度整っていますか?
地域によってばらつきがあります。私の住んでいる場所は、毎日4〜6時間くらい断水するで、あらかじめ大きなバケツに水をストックしています。
電気は、2018年から2020年まで長時間の計画停電があったのですが、最近は選挙が近いこともあってか、ほぼ停電はありません。料理する際は普段電気ストーブを使いますが、ガソリンスタンドでガスボンベを購入することもできます。予期せぬ停電の時などに備え、常時ガスを用意しておくと便利です。
私の地域のインターネット接続は良好なので、オンラインで仕事も可能です。料金は決して安くありませんが、利用状況に合わせてプランを選べます。
Q. 現地のレストランやファーストフード店、露店など食品を扱う店の衛生状態はどうですか?
チェーンのファーストフード店は割と綺麗で、手を洗う場所もあります。たまに地元のレストランでも食事しますが、これまでお腹を壊した経験はないです。地元メニューには生モノがないからかもしれません。
ただ露店の食品は見るからに衛生的でない物が多いので、避けた方が良いと思います。その場で揚げたてを買えるようなフリッターの店などは比較的安全なのでよく利用していました。
砂埃がひどく、手がすぐに汚れるので、水がなくても殺菌できるよう常時サニタイザーを携帯しています。テーブルが汚れている時もティッシュでさっと殺菌できるので便利です。
Q. 生活に必要な安全な飲用水はどのように調達しますか?
基本、水道水を直接飲むことはできません(現地の人の中には直接飲む人もいますが…)。私は日本から持参した浄水石をバケツに入れ、そこに煮沸した水を入れて飲んでいますが、水道水を沸かすだけでも飲めます。
今まで水でお腹を壊した経験はないのですが、心配であればウォーターサーバーを購入すると良いかもしれません。歯磨きくらいであれば水道水を使っても大丈夫です(個人的な意見ですが)。地元の人の話によると、井戸の水は綺麗で直接飲めるそうです。一度飲んでみましたが、問題ありませんでした。
Q. 現地の交通事情や交通機関の様子はどうですか?
交通手段としては、車、公共ミニバス、タクシー、長距離バス、汽車があります。外国人が1人で利用しても比較的安全なのは、公共ミニバスと長距離バスです。タクシーは現地の友人と一緒の時だけ利用します。行動範囲が広くなければ、歩くことも多いです。中古車の購入は日本円で20万円くらいから可能だと思います。日本の免許を持ってくれば、こちらで簡単な運転テストを受けて、ザンビアの免許を取得できるようですが、必ず取得できるかは不確かなので、確認が必要です。現地の友人がいれば一緒に手続きに行ってもらうと良いでしょう。
Q. 現地の医療水準はどうですか? 医療費は高額ですか?
私は、ザンビア政府の運営するクリニック、地元の総合病院、個人経営のクリニック、外国人経営のクリニックにかかったことがあります。
マラリアや風邪などであれば、政府のクリニックにて無料で診てもらえます。ただやはり無料ですので、診断の正確さに疑問がある場合は、個人病院でマラリアチェックしてもらいましょう。
一般的な病気であれば、地元の総合病院(中国人、韓国人のお医者さんが働いていることもあります)で対応してもらえますが、衛生的とは言い難いです。ですから、心配な場合は、お金は高くつきますが、個人または外国人経営の綺麗な病院を探して行くと良いと思います。
現地で生活している仲間などがそばにいると情報交換ができて安心です。大きな病気にかかってしまったら、やはり現地で治療を受けるのは技術的にも心配な面が多いです。日本に帰国できるなら、それが最善だと思います。
執筆者:KAM
執筆年月:2021年5月