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わたしの活動エリア「プエルトリコ」へようこそ!

海外社会貢献者からのメッセージ

エメラルドグリーンが美しいカリブ海のビーチ

Q. 世界を活動の場とする社会貢献者にとって、この国はどのような場所ですか?

プエルトリコは、「カリブ海の真珠」ともよばれる美しい島です。面積は四国の約半分、東西に長い長方形で、東から西まで車で2時間、短い南北は1時間かかりません。美しい砂浜、カラフルな壁のアンティークな街並みが残る首都、夜光虫の光るビーチに魅せられて、毎年多くの観光客がクルーズ船でこの島にやってきます。一見、南国の楽園とも思える場所ですが、暗い影を落としている問題が幾つもあります。

島での生活に大きな影響を与えている問題の一つは経済の悪化です。プエルトリコは独立した国ではなく、アメリカ合衆国に属する自治領ですが、その政府は2015年に債務不履行に陥り財政破産を申請しました。

それ以前からも、より良い仕事、手厚い公的福祉を求めて合衆国本土への人口流出があったのですが、経済の悪化、また2017年のハリケーン・マリアの被害がそれに追い打ちをかけ、2013年には370万近かった人口は2019年には290万にまで減っています。

アメリカ本土に住むプエルトリコ人はプエルトリコに住むプエルトリコ人よりも多く、500万人とも言われ、多くはニューヨークやフロリダに集中しています。人口の流出は商業に目に見える影響を与えていて、アメリカの大きなチェーン店が撤退したり、店舗数を削減したりしています。

また、医療関係者が同じ職でもより高い給料を得られるアメリカ本土に行ってしまうため、医療従事者の不足、質の低下も心配されています。

もう一つ、実際に住んでみて、多くの人の生活の質に影響を与えていると思う問題は、麻薬です。麻薬は、まずは使用している本人に中毒という問題を起こします。様々な教会、団体により麻薬やアルコール中毒者のためのリハビリセンターが組織されていますが、完全な社会復帰を遂げるのは非常に難しいのが現実です。

自立支援の組織の活動の一環として様々な物を訪問販売、または路上販売しているリハビリ中の人たちをよく見かけます。しかし、中には麻薬を買うお金を得るために物を売っている“自称”リハビリ患者もおり、見分けるのは困難です。また、本当にセンターに所属してリハビリ中の患者が、販売の最中に「ついでに」車上荒らしをする、ということもあるようで、本当に立ち直りたい人が人々からの信頼や支援を得にくくなっています。

麻薬の売買の多くは、貧しい人が多く住む公営団地の中で行われています。売人が住んでいる部屋の周辺は仲間が常に人々の出入りを見張っており、敵対するグループの人物か警察関係と思われたら釈明の猶予なく銃で撃たれることさえあります。

彼らの存在は麻薬とは無縁の生活を送っている同じ団地内に住む人々の日常生活に大きな影響を与えています。そこに住むということは、銃撃の音を聞くこと、銃で撃たれた人を見ることが日常の風景になるということであり、ときには警察から逃げる彼らがベランダから家に入ってきてしばらくトイレに隠れるというようなことを黙認せざるを得ないということでもあります。

また、公営団地に住む人の多くは、食料購入のためにだけ使える政府が支給するカードを持っていますが、麻薬中毒者はよく麻薬を買う現金を得るためにそのカードで食料品を買い、それを団地内にて市価の半額ほどの値段で売ることがあります。そうしたからくりをよくわかってはいても、貧しさゆえに彼らから食料を買う人たちは常におり、悲しいかな麻薬の常用を支えてしまうという仕組みができあがっています。

麻薬使用者の家族も大きな影響を受けます。親が麻薬依存で親権を取り上げられて、養護施設に送られる子供たちがいます。養護施設で性的、身体的虐待を受ける子供もいます。そうなることを恐れて、祖父母が孫を引き取ったものの、お互いうまくなじめず、しばらくすると子供が結局麻薬中毒の親の元に戻っているということもあります。お父さんが麻薬中毒で警察とリハビリセンターを行ったり来たりしていて、なかなか家にいないという3,4歳の子供たちとその若いお母さんを見たこともあります。

中毒者には、回復の道のりが厳しくてもそれを耐える価値があると思える動機が、親たちには子供に教えるべき価値観が、子供たちには信頼できる大人が必要です。そういう方面で、この地にはボランティアにできることがたくさんあると思います。

また、全く分野は違いますが、プエルトリコはハリケーンの通り道でもあるため、毎年破壊された家の再建、ビーチの清掃などのボランティアをいろいろな団体が必要に応じて募集しています。

文化

世界遺産のサンフアン旧市街 — スペイン植民地時代の街並みが残る

Q. 現地の人々の気質や考え方にはどんな傾向がありますか?

基本的に、ラテンについてよく言われる、人懐こくておおらかという言葉が当てはまると思います。病院やスーパーなどで見知らぬ人に話しかけられることや、見知らぬ人同士の会話が始まることは珍しいことではありません。

ただ、ボリビア、ペルー、パラグアイなどと比べるとその頻度はやや少ないと思います。プエルトリコ人自身が言うように、ややシャイなのかもしれません。日本人から見ればそれほどシャイには見えないのですが。

他のラテン諸国と比べて、人懐こさが少し影を潜めているように見えるのは、アメリカのやや他人行儀なスタイルの影響もあると思います。アメリカに住んだことがある、またはアメリカに家族、親戚がいる人は非常に多いので、アメリカ文化の影響は非常に大きいといえます。

そのことと関連して、多くのプエルトリコ人は、アメリカ本土に対する憧れと劣等感を持っています。アメリカは人々が礼儀正しく、道路は非常に整備されており、法律がきちんと守られている、それと比べてプエルトリコは、人々は列に割り込み、道路は穴だらけで、信号無視も多い、と。

確かに補修されていない道路の多さは気になりますが、個人的にはプエルトリコ人がアメリカ人と比べて礼儀にかけると感じたことはありません。やや高級なレストランでのテーブルマナーなどには慣れていない人が多いでしょうし、そういう場で大声で話が盛り上がってしまうということも起こり得るので、そういうことで「プエルトリコ人はマナーが悪い」とアメリカで言われてしまい、その言葉を彼ら自身が真に受けてしまうのかもしれません。外国文化や外国人に対する憧れがあり、自分の国を卑下してしまう日本人の傾向にもやや似たところがある気がします。

一つ私が意外に思ったのは、人々の世界観が非常に狭いということです。プエルトリコ以外のことにあまり興味がない。アメリカを知ればもう世界を知った気になってしまう。ニュースを見ても、プエルトリコ関連がほとんどで、ほんの少しアメリカ関連がある程度です。外国のニュースはほとんど報道しないか、本当に大きなことがあったときにほんの数十秒時間を割く、といった感じです。これは、日本と同じく「島」であるということが影響しているのかもしれません。

Q. 現地の食文化はどのようなものですか?

代表的な料理は、米に豆の煮ものをかけたものです。

米が塩で味付けしただけの白米であったり、オリーブや肉、ソーセージなどを炊き込んだ黄色いものであったり、豆と一緒に煮込む物もかぼちゃだったり、鶏肉だったり、様々なバリエーションがありますが、全てアロス・コン・アビチュエラ(直訳すると米と豆)と呼ばれています。

これは非常に家庭的な料理で、パン屋や小さな売店の中にあるランチだけを提供するような食堂では、ほぼ必ずある基本の料理です。日本人にとってのご飯と味噌汁のようなものなのでしょう。これに肉類のおかずがついてくることが多いです。余りに庶民的すぎるのか、いわゆるレストラン(きちんとメニューがあって、食事を出すことがメインの店)では見たことがありません。

ハンバーガーやピザといった「若者」の食事(実際にはお年寄りもそういったものをよく食べているのですが)と対照的なおばあちゃんの味の代表としてラップなどの歌詞に出てくることさえあるほど典型的なプエルトリコ料理です。スーパーに行くといつも様々な種類の豆の缶詰がずらりと並んでいます。

熱帯でバナナの種類がとても多く、それを使った料理も多くあります。青いバナナをすりおろしたものに肉などの具を入れ、バナナの葉で包んでゆでるパステーレス。青い料理用バナナを3センチぐらいの輪切りにし、軽く揚げた後、押しつぶして2度揚げするトストン。このトストンはパンの実(ブレッドフルーツ)で作ることもあります。揚げたバナナを潰してまとめ、肉やシーフードを添えることの多いモフォンゴ。バナナ料理は挙げていけばきりがありません。

島国なのでシーフードも手に入るのですが、スーパーには鮮魚コーナーはなく、魚市場に行かなければ買えないので、地元の人が日常的に食べているわけではありません。しかし海沿いにはシーフードを売りにしたレストランが多くあり、特に祭日や日曜日はにぎわっています。地元の人にとってシーフードは、日本人にとってのお寿司に似た感覚なのかもしれません。家で作るというより外に食べに行くもので、特にちょっと贅沢をしたいときに食べるという感じなのだと思います。

プエルトリコは一時期、中南米有数のコーヒーの産地でした。近隣諸国に追い抜かれて国際的な競争には負けたものの、今でも島中央部の山地ではコーヒーが生産されています。そのせいもあってか、ほとんどの人がコーヒー好きです。「コーヒーにする、それとも紅茶?」と聞かれることはまずありません。「コーヒー、飲む?」とだけ聞くのが普通です。紅茶を飲む人はかなり少数派のようで、スーパーに行ってもハーブティーはいろいろあるけど紅茶はほとんどないか、全くないことが多いです。またコーヒーは万引きが多いらしく、商品棚においていなくて、レジで注文するとお店の人がカギのかかった棚から出してきてくれる方式のところもあります。

バナナをおろした生地に具を入れ、バナナの葉で包んで茹でるパステーレス

Q. 現地の人々はどのような生活習慣や宗教観を持っていますか? 現地特有のマナーなどはありますか?

多くのラテン諸国同様、女性同士なら挨拶でハグと頬にキスをします。男性同士、またはそれほど親しくない異性ならハグと握手のほうが多いと思います。

また、家族、親戚の数が多く、その絆が強い傾向があります。クリスマス、誕生日、結婚記念日などは多くの親戚が集まって祝うことが多く、そうした祝いをみんなが来られるように週末にずらして行うこともよくあります。親戚が多く、それぞれの誕生日、結婚記念日などにお互いに行くわけですから、毎週のようにパーティーに行っている、という家族もあります。

ほとんどの人はカトリック教徒で、2,30年前までは、例えば復活祭の3日間は商店が全て閉まり、ほとんどの人が教会に行くほど熱心な信者が多かったそうです。今では復活祭の祝日はプチバケーションといった趣で、ビーチやショッピングに出かける人のほうが多いようです。それでも敬虔なカトリック教徒やその他のキリスト教徒は今でもかなり存在しており、日曜日にはあちこちの教会に人々が集う姿が見られます。

プエルトリコでは、クリスマスの後、1月6日にディア・デ・レイエス(王様の日)というものを祝います。イエスの誕生後3人のマギが訪問したことにちなんだ祭日です。その日にも贈り物をする習慣があるので、家庭によっては子供たちが12月25日と2週間後の1月6日に立て続けにプレゼントをもらいます。また、1月6日には多くの教会が明け方に何台もの車でパレードのようなことをしたり、そのパレードの途中で人々の家にお菓子をばらまいたりします。クリスマスが12月24日から1月6日まで続くという感じです。

面白いなと思った習慣は、飛行機がプエルトリコに着陸した時に、乗客が一斉に拍手をすることです。愛するホームランドに無事に到着した喜びと、パイロットへの感謝の拍手です。アメリカなどと比べていろいろと劣等感を持つことはあっても、それでもみんなこの島が大好きなんだな、と思う瞬間です。

気候

沿岸部は晴れでも、遠くの山には黒い雨雲がかかっている

Q. 現地はどのような気候ですか? 健康維持のために気を付けるべきことはありますか?

熱帯性海洋気候で、湿度が高く、降水量も多いです。年間を通じて最高気温は27~32度、最低気温は18度から23度ぐらいです。(日本人になじみ深い摂氏で書いていますが、基本的に華氏が用いられています。)

北半球ですので大まかに言うと、6月~9月が夏でやや熱く、11月~2月頃までは少し涼しく過ごしやすくなります。島の東側では午前に、西側では午後に雨が降ることが多く、特に4月から11月にかけてはほぼ毎日、夕立のようなやや強めの雨が降ります。日本人にとっては1年中夏の気候と言っていいと思います。また、島の中央の山間部は天気が変わりやすく、沿岸部が晴れていても山の方は雨が降っているということがよくあります。

水分補給に気を付ける必要がありますが、プエルトリコでは水であれジュースであれ、冷たい飲み物はほとんど凍りかけの状態で、さらに氷が一杯入って(氷の隙間を液体が埋めている状態)で出てくることが多いので、のどの弱い方、体を冷やしすぎないように気を付けたい方は、自分で適温の水や飲み物を持ち歩くことをお勧めします。

また、外は30度を超える暑さでも、一旦スーパーや銀行、病院などに入ると、クーラーが非常に効いています。常に何か羽織れる物を持ち歩くといいと思います。特に病院などで何時間もかかる可能性がある時は、私はズボンと靴下をはき、冬物のジャンパーを必ず持っていきます。看護婦さんたちも大抵フリースなど防寒着を羽織っています。

7月から10月はハリケーンシーズンなので、こまめに天気予報をチェックする必要があります。ハリケーンが来るかもしれないというニュースが流れると必ず、スーパーは非常に込み合い、トイレットペーパーやペットボトルの水などが品切れになりがちになります。毎年ハリケーンがいくつか必ず近くを通るわけですから、ハリケーンシーズンが始まる前に、飲料水、トイレットペーパー、保存食などを2週間分ほど確保しておくことが賢明です。

Q. 現地特有の風土病はありますか? 健康維持のために役立つ対処方法はありますか?

熱帯なので、蚊が媒介するデング熱、チクングニア熱、ジカウイルス感染症には気を付ける必要があります。(ジカウイルス感染症は輸血感染も報告されています。)

予防のためにできることは、なるべく肌を露出しない服装をすることと、虫よけなどを使うことです。また、蚊の発生を防ぐため家の周りに水溜りができないように気を付けます。できれば、住む家を選ぶときに網戸があるところを選ぶとより安全です。網戸がないなら、付けることができないか聞いてみましょう。それも無理なら蚊帳を使うなどしたほうがいいかもしれません。

ここに挙げた3つの病気はどれもワクチンや治療薬がありません。もしもかかってしまったら、休息をよくとり、鎮痛解熱剤を飲みます。ひどい場合には、入院、点滴などの対症療法がとられます。

デング熱とチクングニア熱の場合、解熱剤の中には出血を助長するものがあるのでアセトアミノフェンを飲むのが安全とされています。デング熱は以前にかかったことのある人が2度目にかかると重症化する率が高いので、早めに医者に診てもらったほうがいいでしょう。

言語

スペイン語と英語併記の商品

Q. 現地の人々はどのような言語を用いていますか? 外国人にとって、現地の言語を学ぶ際に、どんなハードルがありますか?

公用語は英語とスペイン語ですが、英語を母語とする人は5%と言われています。

銀行、病院、役所などでは、両方話せる人が誰かはいます。役所や政府からの様々なサービスの通知や請求書はスペイン語と英語の併記です。電話で問い合わせるような時は、英語かスペイン語かを選べるようになっていることが多いです。レストランのメニュー、商品のラベルなどは、英語とスペイン語が併記されているものが多いです。

簡単な英語ができる人の割合は南米諸国の中では高いと思います。普段スペイン語でしゃべっていても英単語が混ざることはよくあります。話をまとめて終わらせるときに「とにかく」という意味でそこだけ「anyway」と英語になるのをよく聞きます。インターネット関連の用語「site」「link」などはスペイン語も存在するのですが、英語で言われることも多いです。スペイン語で何というのか知らなくても英語で言って通じることもあるので、英語の基礎がある人にはとても便利です。

スペイン語は広く話されている言語で、教材も手に入りやすい言語です。また、日本語と同じあいうえおの5つしか母音がないので、発音がマスターしやすいと思います。更に、それぞれの文字の発音を覚えれば、意味が分からなくても見たとおりに発音すればよいので、とっつきやすい言語だといえます。動詞の活用形の多さが挫折しやすい点かもしれませんが、長く生活するうちにそれほど考えなくてもできるようになるので、焦らずに人々のフレンドリーさに甘えれば、乗り切れるのではないでしょうか。

あと、言語ではなく単位の話ですが、長さはインチ(スペイン語でプルガーダ。以下カッコ内スペイン語)、フィート(ピエス)、マイル(ミーリャ)が、重さはオンス(オンサ)、ポンド(リブラ)が、容量はガロン(ガロン)が使われています。

生活

どんなに小さな村にも必ず教会がある

Q. 現地の人々の生活水準はどうですか?

物価は中南米の中では高いほうだと思います。

アメリカ領なのでドルが使用されます。アメリカのチェーンのスーパー、ドラッグストア、レストランもたくさんあります。沿岸部の幹線道路をドライブすると、2,30分毎にショッピングセンターを見かけます。

物価は基本的にアメリカと同じ、物によっては輸送費がかかる関係で、アメリカより高いものもあります。新鮮な野菜は、日本と比べても高いことが多いです。缶詰の野菜や煮豆が安いので、そちらを使っているのをよく見ます。肉類は非常に安いものから高級なものまであります。500グラム100円しない鶏、豚、牛肉がたくさんあり、特に冷凍物は信じられないほど安売りをしています。

アメリカ政府の福祉政策の恩恵を受けているので、ぼろぼろの服を着た食べるものにも困っている貧しい人がたくさんいるということはありません。低所得の年配者は、申し込めば国がスマートフォンと電話番号を与えてくれるので、月々使用状況に応じたわずかな金額で携帯電話を維持できます。一定の条件を満たせば、公営団地に入ることができ、食料を買うためのカードも支給されます。何度かそういう団地に住んでいる方のお家を訪ねましたが、小さすぎず大きすぎず、機能的で、おうちの方の趣味の人形や写真がきれいに飾ってあり、テレビや冷蔵庫などもあって、南米で土レンガや板の壁、土の床を見慣れていた私にはおしゃれなアパートのように感じました。南米の貧しい国から見ると、貧困がそれほど目立たないと思います。

それでも、交差点で信号待ちの車に対して物乞いをする人や、ペットボトルの水、マンゴーやパンの実、アボガドなどを売っている貧しい人たちを見ることがあります。不法移民であるなどの理由で福祉の恩恵を受けられなかったり(プエルトリコはスペイン語が通じることや地理的に近いことが理由で、ドミニカ共和国などカリブ海周辺からの不法移民が多くいます)、麻薬中毒であったりすることが貧困の主な原因になっています。

また、食べるものに困るほど貧しい人は少ないとはいえ、富んでいる人の裕福さは桁違いなので、貧富の差は大きいと感じます。広い敷地にお城のような大きな家、プール付きの大きな庭に、高級車が何台もある、そういう家がいくつもある富裕層の地区があるかと思えば、そう離れていない所に長屋のような造りの、庭のない小さな家が細い路地沿いに連なっている地区があります。またクルーズ船で裕福な観光客も多く訪れます。島が小さいせいもあって、そうした全く違う経済レベルの人たちの生活圏が近く、お互いにそれが見えてしまうことは、貧しい人たちが欲求不満を感じやすい状況をつくっていると思います。

Q. 現地の人々の教育水準はどうですか?

識字率は90%ですが、若い世代ではさらに高くなっていると思われます。

学校教育のレベルは学校によって差があると思います。公立の学校で学び、今40代の大卒の人に聞くと、代数は高校に入るまで一切出てこなかった、三角関数は高校でも一度も出てこなかったので、大学に入ってからついていくのが大変だったと言っていました。

また、音楽や美術の授業は全くなかったそうです。これはほとんどの学校がそうなのだと思います。というのは、大卒の人でも、日本人なら誰もが知っている音楽家のベートーベンやショパン、画家のピカソやモネを知らないことが多いのです。また、ナポレオンやエジソンなども知らない人が多いです。世界史は一応学ぶそうですが、コロンブスのアメリカ発見前後にまつわる、自国とラテンアメリカの歴史に重点が置かれているのだと思います。

クリスマスツリーの飾られたショッピングセンターは日本と変わらない雰囲気

Q. 現地の治安水準はどうですか? 外国人が特に気を付けるべきことはありますか?

比較的安全なほうだと思いますが、スリや置き引きなどは常に注意が必要です。

また、信号待ちの時に交差点で、物乞いや物売りが近づいてくるので、用がなければ車の窓を閉めておいたほうが安全です。

観光地、リゾート地、市街地などで凶悪な犯罪が聞かれることはあまりありません。ただ、地元の人さえ近づかない治安の悪い公営団地などでは麻薬の売買がされていて、敵対するグループとの銃撃や警察との衝突が起こることがあります。そういうところにはできれば近づかないのが一番です。もしもボランティアという仕事上、行かざるを得ないなら次のことを心がけてください。

1. 自分が警察でも敵のグループのものでもないことがはっきりわかるようなもの(例えば所属しているボランティア団体のマークなどが書かれたもの)をフロントガラスなどの目に付くところに置く。

2. そういう地区には見張りをしている人がいるので、停められたら従い、名前、訪問目的などの質問にはっきり答える。

3. できれば、訪問する対象となっている、その地区に住んでいる人に、ベランダやドアの外に出てきてもらい、遠くから自分に向けて挨拶してもらう。その地区の住民を訪ねてきたことがはっきりすれば、大抵問題にされません。

4. その地区を出るまで、車のハンドルの上側に手を置いて運転し、外から常に両手がはっきり見えるようにしておく。こうすることで、武器を持っていないこと、銃撃をする意図がないことをわかってもらえ、勘違いして狙撃される危険を減らすことができます。

5. 見張りや、そこの誰かから立ち退くように言われたら、すぐに従う。彼らも無関係な人を犠牲にしたくはないので、危険な時、衝突が起きそうな時に知らせてくれたりします。何をしていても、ぐずぐずせずにすぐにその場を離れ、その地区から出ましょう。好奇心で残っては絶対にいけません。

Q. 現地の住居や住環境の様子どうですか?

首都サンフアン以外では、日本のアパートのような物件はあまりありません。

貸家は寝室が3つ、トイレが2つあるような大きな造りの一軒家が多いです。また、たいていの家がダイニングキッチンや応接間が広くとってあって、プライバシーの保てる個室は少なかったり小さかったりします。もともと、大家族が1日の大半を共有スペースで共に過ごし、個室に入るのは寝るときだけ、というスタイルなのだと思います。

その造りで600ドル前後からあるので、日本と比べれば安いですが、友達とシェアルームとして使うなら、共同スペースの割合が大きいだけに、掃除や飾りつけをどうするのかよく話し合う必要があるでしょう。

海辺の地域には別荘用のとても素敵な小さな造りの家もありますが、リゾート地なので寝室、トイレがそれぞれ1つと、小さい割には上に挙げた家と同じぐらいかそれ以上の値段になって、かなり高めです。

ただ、プエルトリコには1階と2階が独立していて、結婚した子供と、親夫婦が上下で住むという造りの家もたくさんあり、子供たちが出ていって1階か2階が開いているというところがかなりあります。そういうところは、家の持ち主である親がまだ住んでいるので、信頼できる人になら貸したいが、貸家の看板を掛けたり不動産屋に登録したりはしていないことが多いです。知っている人を通じて口コミで探せば、かなり安く貸してくれることがあります。

その場合、電気や水道のメーターが別々についているのか、そうでないなら電気代、水道代をどのように払うのかをきちんと確認しましょう。こういうケースの場合、法的な書面にする大家さんは少ないと思いますが、手書きでもいいので合意した内容を書面にし、一緒に読んで確認するなら誤解を防ぎやすいと思います。

アパートなどの場合、細かな決まりが書かれた契約書があることもあります。電球の取り換えは住人がするが、蛇口の修理は大家がする、など細かい決まりがあることもあります。雨漏りも一般的な問題なので修理されているか質問しましょう。住人以外の人が家に入るのを嫌がる大家さんもいるので、友達を家に入れていいか、日本から来た友達を泊めていいかなど、聞いておいたほうが安心です。

法律上、貸家、貸部屋であっても、契約し家賃を払っている間は、大家は無断で入る権利はありません。それでも自分の持ち物だという意識が強く、住人がいない時に合鍵を使って貸家の門を開け、「点検」に来る大家もたまにいるようです。できれば契約する前に、近所の人に前の住人がなぜ出ていったのかをさりげなく聞いてみるといいと思います。時々聞いてみると、そういう問題が発覚することがあります。頻繁に住人が入れ替わっているところは要注意です。

スーパーの商品棚を一列占領するほど種類が多い缶詰めの豆

Q. 現地の生活インフラ(水道・電気・ガス・インターネット)はどの程度整っていますか?

発電設備が古く、財政問題もあってメンテナンスが十分でないため、頻繁に停電が起こります。多くの停電は数分から数時間で戻りますが、ハリケーンなどであちこち電線が切れたりすると、何日も停電が続きます。家庭用自家発電機を持っている家がかなりあります。冷蔵庫と、夜の明かりを確保するといった感じです。もし、発電機を持っていないなら、ハリケーンに備えて保存食を買う時には、冷凍、冷蔵しなくてよいものを選びましょう。また、冷凍庫に水のペットボトルを常にたくさん凍らせておけば、しばらく低温を保つことができます。

水道についても同様で、よく水道管が壊れて、道から水が出ていて、修理のたびに断水します。大抵は半日から1日で終わりますが、2,3日断水することもあります。なので、料理やシャワー用に大きな蓋つきバケツやペットボトルなどに常に水を溜めています。

ガスは、ボンベを購入し、空になったら交換に行く方式です。スーパーや小さめのパン屋などでも購入できるので便利ですが、扱っているボンベが微妙に違っていることもあるので、いつも同じところに持っていくのが一番確実です。

私は中ぐらいのサイズ(直径30㎝弱、高さ50㎝)で7.7キロ入りのガスを使っています。初回のガスが入った状態のボンベが5,000円ぐらいで、その後交換に行くときは2000円弱です。ほぼ毎日使っても2ヶ月ぐらい持ちます。もっと小さなサイズや2倍以上の大きさのボンベもあります。大きいのはやや割安ですが、高さが1mを超え、重くて交換のときに自分で持っていくのが大変なのと、扱っている場所が少ないこと、また家の外に設置する形になるので盗難の危険があるのが難点です。もっと小さいサイズは、普段は電気コンロで調理する人が停電の時用に持っていたりします。個人的には停電が頻繁にあることを考えるとガスコンロのほうがお勧めです。

インターネットのサービスは普及していますが、光ファイバーはまだないところも多いです。私はモバイルWIFIを使っていますが、1万円ぐらいでルーターを買い取り、10Mbpsで月々4,000円程です。平地の住宅街などは比較的安定しているようですが、山間部や、我が家のように家が木に囲まれているとやや不安定で、非常にスピードが落ちることが時々あり、そういうときはビデオ通話が切れてしまいます。

Q. 現地のレストランやファーストフード店、露店など食品を扱う店の衛生状態はどうですか?

レストランなどの衛生状態は良いほうだと思います。基本的にアメリカ合衆国と同じ法律が適用されるので、その基準を満たして、食品の取り扱いに関する講義を受けることが義務付けられています。

道端でワゴン車でハンバーガーやスナックを売っていても、大抵はこの基準を満たし、許可を受けて商売をしています。許可を受けていれば、許可証が客から見えるところに掲示されています。それが安全の一つの目安になるでしょう。

但し、許可を持っていて食品の取り扱いの講義を受けたということは、必ずしもそれを常に実行しているということの保証にはならないので、地元の人の評判が悪かったり、見るからに不衛生だったりするなら避けたほうがよいでしょう。しかし、外国人やアメリカ本土から来た人が不衛生な食べ物が原因で体調を壊すというのは一般的ではないので、ラテン諸国の中ではその点でかなり信頼できるところだと思います。

ウェンディーズ、ケンタッキー等、アメリカのチェーン店はあちこちにある

Q. 生活に必要な安全な飲用水はどのように調達しますか?

水道水は基本的にそのまま飲むことができるように処理されています。しかし、先ほど書いたように、水道管の破損が頻繁に起こり、修理のための断水が終わった後には濁った水が出ますから、水道水は沸すかフィルターを使ったほうが安心だと思います。

地元の人でもペットボトルの水を常に買っている人がかなり多いと思います。500ml、24本が400円ぐらいでスーパーやドラッグストアなどで売っています。ハリケーンシーズンにはよく品切れするので、多めに買っておいたほうがいいと思います。

Q. 現地の交通事情や交通機関の様子はどうですか?

町によってはトローリーと呼ばれている路線バスがあります。ルート、バス停が決まっていて、だいたい時刻表通りに来ます。トローリーは運賃がただなのはうれしいのですが、あまり本数がありません。1時間に1本未満です。あらかじめ時刻表を確認し、よく予定を立てた上で利用する必要があります。

乗り合いタクシーもあります。これはカロ・プブリコと呼ばれています。市に許可を得た運転手が、それとわかる看板を自家用車の上につけているだけなので、車種は様々です。決められたルートはなく、見かけたら手を挙げて停めて乗ることができます。自分の行き先を告げるとそこに行ってくれますが、途中で同じ方向に行きたい別の人が停めて乗ってくることがあります。目的地によっては、必ずしも1番に乗った人の目的地に最初に行くわけではなく、やや迂回して到着することもあります。

カロ・プブリコは田舎の方には行ってくれません。市の中心部や、大きなショッピングセンターに行きたい時など、市街地を移動するのに使います。住宅地からショッピングセンターまで10分ほど乗って200円ぐらいなので、タイミングよく通ってくれれば便利です。道を歩いていると、流しで走っているカロ・プブリコに「乗らない?」と聞かれることもよくあります。

自転車はスポーツとして乗っている人は見ますが、日常の移動手段に使っている人は少ないようです。カーブのきつい山道が多く、道の整備があまりされていないので、道路の穴を避けるため車が車線をはみ出してくることもよくあり、またカーブミラーがないために見通しも悪くて、自転車での移動は危険と隣り合わせです。

ほとんどの道路はアスファルト舗装されていますが、予算がないためか、道路の状態はかなり悪く、あちこちに穴があります。それもかなり大きな穴です。車を持つとすれば、ジープなどやや車高の高い車がよいでしょう。

町の中心部以外では馬もよく見かけます。しかし交通手段として使っているというよりは、ペットとして飼っていて、趣味で馬に乗っていることがほとんどです。日本では乗馬というとリッチな人のレジャーのイメージがありますが、プエルトリコでは逆に貧しい地域、麻薬の売買がなされているようなところで馬に乗っているのをよく見ます。仲間たちで集まって、10から20頭の馬で道をほとんどふさいでしまいながら駆け足しているのをときどき見かけます。運転中にうっかり出くわしたなら、彼らが脇道に入るか回り道を見つけるまでおとなしくついていくのが無難です。

無料で乗れる路線バス、トローリー

Q. 現地の医療水準はどうですか? 医療費は高額ですか?

ラテン諸国の中では医療水準が高いほうなのだと思います。

首都サンフアンにはカリブ地域で1番と言われている心臓専門病院があります。アメリカでは治療費が高いからと、アメリカ本土に住んでいるプエルトリコ人が、休暇でプエルトリコにいる期間を利用して病院に行くことがあるので、医療水準はアメリカ本土とほぼ同程度と信頼されているのだと思います。しかし、よりよい給料のためにアメリカ本土に行ってしまう医療関係者が多く、医者の不足が心配されています。

治療費はアメリカより安いとはいえ、簡単な虫歯の1回の治療で5,000円ぐらいかかります。さらに、コロナ禍が始まってから多くの歯医者ではコロナ対策費として1,600円ほどを治療費の他に徴収しています。その他の病院の診察代は7,000円~15,000円前後。乳がん検診のマンモグラフィーが9,000円。24時間のホルター心電図などでは8万円ほどかかってしまいます。できれば何らかの保険に入っておいたほうが安心だと思います。

執筆者:Miho F.R
執筆年月:2020年12月

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