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各国情報提供

わたしの活動エリア「メキシコ」へようこそ!

海外社会貢献者からのメッセージ

観光客の殺到する世界遺産グアナファト

Q. 世界を活動の場とする社会貢献者にとって、この国はどのような場所ですか?

私が住んでいるメキシコ合衆国は、北アメリカ南部に位置しています。航空券を予約する際には、メキシコは中南米のカテゴリーに入るため、北アメリカと聞くと驚かれる方もいるかもしれません。

主な産業は石油と製造業で、メキシコの北部にはアメリカ合衆国への輸出を行うために白物家電と自動車産業の日系の工場が長年稼働していました。

現在私が住んでいるグアナファト州には、日本の自動車産業の拠点があるため、300社近い日系の会社があります。私がメキシコで行っているボランティアは、通訳や日本文化を伝えていくことです。その際お会いするメキシコの方々は、日本への敬意や尊敬の念がとても強く、日本語で挨拶ができたり、工業用語を日本語で表現できたりする方もおられます。メキシコの方の多くはコミュニュケーション能力がとても高いため、私自身が日本文化をよく知らない部分があることにも気づかされることもあります。

そのため、メキシコ国内において、日本文化や日本食、日本車に関する関心が高く、日本と良好な関係が築けているため、生活もしやすいと感じます。

文化

メキシコ文化が色濃く残るオアハカの絶景

Q. 現地の人々の気質や考え方にはどんな傾向がありますか?

メキシコに来て驚いたことの一つに挙げられるのですが、規則や決まり事を守ろうとする強い気持ちがあることです。ボランティア活動を行っている際に、決まりが悪いため、改正して働き易いようにしようとしたことがありましたが、改正すると都合が悪くなった場合に頻繁に改正するようになってしまうということで却下されました。

すべての法律を遵守している訳ではないですが、他の人の気持ちを考えて行動している人が多いように感じます。公共の場でも挨拶をする方が多いですし、困っている様子を見ると声をかけてくれて手伝ってくれることもあります。

その瞬間を生きているので、約束事や時間に関しては日本人に感覚に合わないと思えることもありますが、とても人間的な良い面がたくさんあるので、いつも色んなことを学んでいます。

Q. 現地の食文化はどのようなものですか?

メキシコを代表する料理といえば、タコスを思い浮かべる方も多いでしょう。メキシコ料理は日本の和食より前の2010年に無形文化遺産に指定されていて、多種多様な料理が存在しています。牛、豚、魚介類の様々な部位を使ったタコス、野菜を焦がして作るサルサ、幼虫やバッタなどの昆虫を使った料理もあります。特に、メキシコ南部はその地方独特の食材を使った料理は絶品です。

“テキーラ”という青アガベの球根にあたる部分を炉に入れて、絞り発酵させて蒸留して作るお酒も有名です。強いお酒の代名詞になってしまっていますが、技術も上がっており豊潤な香りと味わいを楽しむことができます。日本酒のような特性もあり、テキーラを手のひらでアルコール分が飛ぶまでのばしてから、顔に付けると発酵させている酵母の効能で化粧水としての効果があります。

個人的に好きなのはメキシコワインで、バジェデグアダルーペ北部のカリフォルニア半島の付け根に位置する場所で生産されています。ワイナリーも多く、メキシコ国内の90%のワインがここで生産されています。

テキーラの原料アガベ(竜舌蘭)

Q. 現地の人々はどのような生活習慣や宗教観を持っていますか? 現地特有のマナーなどはありますか?

メキシコ特有のマナーは、笑顔で挨拶して他の人と意思の疎通を行うことが必要です。日本と同じような感覚でデスクワークをしていた時に、メキシコの同僚が近づいてきて、何かあった?怒っているの?と聞かれたことがありました。その後、同僚の様子を観察していると、密に意思の疎通を図り、週末したことや家族にどんなことがあったか、感じたことをよく話していました。

業務とは関係ない会話ですが、それぞれの人となりをよく知って一緒にチームとして働く努力をしている様子を見て、マナーとしてそうした会話を行う必要があると感じました。ビジネスで初めて会う方に、食事に招かれて家族を連れて一緒に食事を楽しみ、信頼感を高めていくこともあります。

日本ではどちらかというと、仕事と私生活は分ける傾向にあると思いますが、ビジネスにおいても共に私生活を楽しみ、個人に関心を払う点は見習うことができると感じています。

宗教観を形作っているのは、カトリックの概念で、大多数の方がカトリックの背景を持っておられます。会社、施設や建物の入り口に、グアダルーペの聖母マリアの像が置いてあり、出入りする際に十字を切って、安全や健康を祈っています。

以前は、家族みんなで日曜日のミサに参加する習慣を持っていたようですが、最近は宗教観が変わってきているのかカトリックのミサへの出席者数は減少傾向です。その反面、小さいキリスト教の団体が増えており、聖書を学ぶための団体も多くあります。

気候

住宅街にあるエル・セリート遺跡 — 雨季以外はからりとした晴れが続く

Q. 現地はどのような気候ですか? 健康維持のために気を付けるべきことはありますか?

私が住んでいるグアナファト州は、中央高原地帯といわれる高地に位置しており、標高が1800-2000メートルほどです。晴れた日は雲一つなく、青い空が広がります。乾季の一番暑い時期の3-5月は気温が35℃を超える日もあります。標高が高いため紫外線が強く、湿度は低いため、紫外線対策を行うこと、頻繁に水分を補給することと皮膚の乾燥が進むため肌のケアを行うと良いでしょう。

6-9月は雨季に入り、土砂降りで雨が降ると道路が冠水することもあります。この時期は、急に気温が下がり朝晩は冷え込むため防寒着を携帯して出かけます。冬場の10-2月頃までは、零下になることはあまりないですが、日本の冬並みに冷え込みます。

外食する際には、食中毒の危険もあるため、自分自身の体調と屋台やお店の混み具合や衛生状態を確認する必要があります。現地の方が良く行っているお店は、上記の点を満たしていることが多いため、地元の方によく聞いて試してみるのがおすすめです。

Q. 現地特有の風土病はありますか? 健康維持のために役立つ対処方法はありますか?

私が住んでいる地域では、5-8月頃はサソリが出てくる時期です。刺されるサソリの種類にもよりますが、毒性が強い種類に刺されると呼吸困難になってしまう場合もあるため、どの病院に血清があるのか確認する必要があります。赤十字病院には、通常在庫があるので場所を確認しておきましょう。

6-9月は雨季には、蚊を媒介とする病気が蔓延する時期です。デング熱やチクングンヤ熱にかかる恐れがあるため、なるべく蚊に刺されないように虫除けスプレーや蚊取り線香などを使用すると良いでしょう。現地のスーパーに取り扱いがあるので、蚊が多いなと感じたら使用してみるといいかもしれません。

言語

スペイン語動詞活用の習得には反復練習あるのみ

Q. 現地の人々はどのような言語を用いていますか? 外国人にとって、現地の言語を学ぶ際に、どんなハードルがありますか?

メキシコ国内の公用語はスペイン語です。地域によっては部族語を話しているところもあり、60以上の部族語があると言われています。

スペイン語は日本人にとっても発音が容易で、習得するのが難しい言語ではありません。しかし、話し方や発音、使う単語は、地域によって、国によって変わるため、その地域で話されているスペイン語を理解して、伝えるには少し時間が必要かもしれません。メキシコ国内のスペイン語も、”Modismo”(モディスモ)と言われる慣用語が多くあり、毎年多くの表現が増えているため語彙を増やすのは容易ではありません。

自分の気持ちを表現することが得意で、早口になることが多いため、聞き取るのが難しいこともありますが、意思疎通を図りたいことを表せば円滑に行えます。気持ちを表すのが苦手な方はハードルが上がってしまうかもしれません。

また、長くだらだらと話しているように感じられるかもしれません。伝えたいのはたった一つの事でも会話量はかなりのボリュームになります。こちらが彼らに話す時も同じように、要点のみではなく噛み砕いて長めに理由を話さないと通じない場合があり、それを楽しむかイライラするかは自分次第です。

生活

メキシコの住宅はレンガやコンクリートが使われている

Q. 現地の人々の生活水準はどうですか?

都市部と郊外の田舎でかなりの差があります。都市部では日本と同じような生活をすることができ、外資系のスーパーもあるため困ることはないでしょう。都市部から30分くらい車を郊外に走らせると、小さな町が多数あり、道路は舗装されておらず、毎日手作りのトルティージャを作って暮らしています。自給自足までは行きませんが、家畜を飼い、畑にとうもろこしを育てていて、搾りたての牛乳を販売していることもあります。

貧富の差が激しいものの、貧富の差が幸福度に影響しない様子も見ることができます。例えば高級なレストランで食事をする時に、周りのメキシコの富裕層の方たちの顔色が暗いことが多いように感じます。しかし、タコスの屋台で食事をしている人たちは、家族との時間を楽しんでいたり、知らない人にも話しかけたりして、人生を楽しんでいる様子が見られます。

Q. 現地の人々の教育水準はどうですか?

教育にも貧富の差が大きく影響します。裕福な家庭に生まれた子供は私立の学校へ入学し、しっかりと英語教育を受け大学進学へと進みます。一方、貧しい家庭に生まれれば、最終学歴が小学校だという子も珍しくありません。田舎の方では、驚いたことに、中学校へ進学することにはリスクが伴うとみなされることもあります。若くして望まない妊娠をする子や薬物を知るきっかけとなってしまうこともあるからです。しかし貧しくても、努力して国公立の大学へと進む若者もわずかながらいるようです。

新鮮で安い食材が揃う市場


Q. 現地の治安水準はどうですか? 外国人が特に気を付けるべきことはありますか?

現在住んでいるグアナファト州は、日系企業の進出もあって外資で経済的に上向いている状況です。そのため、若い人たちが麻薬を購入するようになり、麻薬の売人がやって来て、マフィアの抗争が激化しています。

また、ガソリンの送油ダクトを都市部に伸ばしており、そのダクトからガソリンを盗んでマフィアが資金源にしていました。政府は送油ダクトからガソリンを盗むのを抑制するオペレーションをしており、マフィアが資金源に困り、高級車を狙った車上荒らしや自動車の盗難、誘拐といった犯罪が増えています。

特に、新しい日本車に乗っている邦人の被害が増えており、コンビニ、スーパーやガソリンスタンドに寄った時に、ガラスを割られて車上荒らしや自動車の盗難に遭うことがあります。対策は、車内に物を残さないこと、人気のないコンビニ、スーパーやガソリンスタンドに暗くなってから行かないこと、サングラスをかける、素早い行動をとって目立たないようにする、周りの人たちに挨拶をすることです。

Q. 現地の住居や住環境の様子どうですか?

比較的最近建てられた家は、建材が良くないため新築でも電気系や水の排水トラブルがあります。新しく開発された地区に住む際には上記の点を良く見る必要があります。築年数がある程度たった家は、既に不具合箇所を補修していることが多いためお勧めです。大家さんが住んでいた物件は、不具合箇所をほぼ全て直してあるため、当たり物件と考えています。

メキシコでは、犬を多頭飼いしている方もいるため騒音がひどいことがあります、住居を決める際には、近所の人が犬を飼っているか確かめましょう。金曜日や週末は、親族を呼んでフィエスタ(パーティー)を行います。夜中まで音楽を大音量でかけて行う人たちもいるので、頻繁に行わないか近所の人に確認するといいと思います。

郊外では多くの家畜が飼育されている

Q. 現地の生活インフラ(水道・電気・ガス・インターネット)はどの程度整っていますか?

住宅次第で、日本と同じ環境を求めることが可能です。場所によっては都市ガスも引かれており、毎月請求書が家に届いて、支払いを行います。その他の公共料金の支払いは、現地のデビットカードを所有していれば、携帯のアプリケーションやオンラインで決済可能です。所有していない場合でもスーパーマーケットのレジやコンビニで支払うことができます。

私が住む街の水道は、公式発表では、飲める水が家まで来ているそうですが、断水することも多く、ほぼ全ての家に駐車場の下に貯水プールか、屋根の上にタンクが付いており、断水対策をしています。しかし、貯水プールまたは天井タンクの衛生状態が悪いため、飲料には適さないでしょう。

電気は、コンセントは日本と同じAタイプが使用されていますが、メキシコで販売されている家電製品はプラス側が少し大きくなっているため、日本の延長コードに挿せない場合があります。電圧は110-120Vで、最近の日本のPCや携帯の充電アダプターに対応しています。電圧変動が起きて、家電製品が故障する場合もあり、高価な機器は変圧器等を付けるのがいいと思います。

ガスは、都市ガスでなくてもシリンダータイプで販売が行われており、無くなったら電話で届けてもらえます。メキシコの家庭では、ガスがなくなった時に備えて数本シリンダーを持っている方もいます。

インターネットの速度は、家の場所が都市部に近ければ近いだけ早くなり、光ファイバーケーブルのインターネットの契約も行えます。ADSLであれば、郊外でも使用できます。

Q. 現地のレストランやファーストフード店、露店など食品を扱う店の衛生状態はどうですか?

一概には言えませんが、メキシコ人女性は多くが綺麗好きで、頻繁に掃除を行っているお店が多いため、店内のテーブルや椅子は綺麗な場合が多いです。しかし、あまりお客が来ない店舗になればなるほど汚れや食品の痛みが気になります。どこで食べるか決める場合には、流行っているかどうかを目安にすることがおすすめです。

観光地のレストラン

Q. 生活に必要な安全な飲用水はどのように調達しますか?

2つ方法があります。

一つは、Garrafón(ガラフォン)と呼ばれている20ℓタンクの水を購入する。最初に買う時に、タンク代と水代を支払います。それ以降、空になったタンクをスーパーなどに持ち込み、タンク代は割引かれて水代のみを支払うシステムになっています。色々なメーカーが取り扱っており、大手はやはりコカコーラ社のCIEL(シエル)とペプシ社のEPURA(イープラ)です。どちらも、ろ過した水のためミネラルウォーターがお好きな方は、bonafont(ボナフォン)の購入をお勧めします。

もう一つは、自宅の水道配管にろ過フィルターを付ける方法です。初期投資はかかりますし、一定の水圧がないと取り付けが出来ないという制約はありますが、ランニングコストは良いようです。高層のビルやアパートなどの都市部は20ℓのタンクを持って上がるのは大変なため、フィルターが使われています。

Q. 現地の交通事情や交通機関の様子はどうですか?

メキシコ現地の方の一般的な移動手段は、”バス”、”タクシー”、”Uber”です。

”バス”は市内に幾つかバスターミナルがあり、ターミナルから市内のあちこちへ行くことができます。GoogleMapでどの番号に乗ればいいか検索ができ、おおよその所要時間が出ます。価格は安いため、時間に余裕があれば良い交通手段と言えます。難点は、時間通りに運行されておらず、近場であっても時間がかかってしまうことです。

”タクシー”は、グアナファト州では基本的に緑色に塗られており、簡単に識別可能です。横に手を出すと、乗りたいという意思を示すことができます。比較的安価で、30分ほど乗っても600円ほどです。難点は、行きたい場所を伝えても場所が分からないという運転手が多いため、自分で道案内できることがほぼ必須になってきます。

”Uber”は、アカウントを作って、アプリケーションを携帯電話に入れます。クレジットカード情報を入れておけば、自動で決済されるため金銭のトラブルになりにくい利点があります。また、GoogleMapの機能を使って、どこから乗りたいのか、どこに行くのか入力しておくことで、おおよその価格が算出されるので、海外の生活をしたことがない方でも安心です。上記の交通手段よりも高額になってしまうのが難点ですが、安心をお金で買うことができるツールだと思います。

どこまでも直線のハイウェイ

Q. 現地の医療水準はどうですか? 医療費は高額ですか?

居住権をお持ちであれば、IMSSという社会保険に入れます。病院を割り当てられ、基本的に無料です。オンラインで予約が行えるのですが、いつも予約が一杯で、2,3ヶ月待ちになっています。病院に行って並べば診療を受けられるので、いつも行列になっています。サービスが悪く、希望する治療がなかなか受けられないこともあり、私立病院に行かれる方もいます。歯科治療はIMSSの保険は適用されません。

私立病院の医療水準は高く、設備も新しいですが、費用は高額になっており、高額医療保険等の保険に加入していなければ費用を賄うのは難しいです。保険の種類によっては歯科治療も受診可能で、メキシコで就職する際の福利厚生の一環として、高額医療保険を加入させてくれる会社もあるそうです。

執筆者:野崎耕司
執筆年月:2020年7月

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